琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

タラちゃんが危ない

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政府の税制調査会が9月から所得税改革の議論を始める。最大の目玉は配偶者控除。専業主婦や年収が一定額以下の配偶者がいる世帯を抱える大黒柱の税金を軽くする制度で、安倍政権はこれを見直す方針。専業主婦がいる世帯だけを税制面で優遇する制度をやめ、主婦が働く世帯と平等に課税するという。一見、正論。しかし、サザエさんはタラちゃんを家に残し、働きにでなければならなくなる。

 

●狙われた配偶者控除


8日に開かれた政府の経済財政諮問会議では第3次安倍再改造内閣の重点課題について、議論がなされた。議題は「高額医薬品の価格算定手法の見直し」や「労働力人口の減少など経済構造の変化を見据えた成長力強化」などもっともらしいものが並んだが、このなかに混ぜ込まれたのが、配偶者控除の見直しだ。
経済財政諮問会議という、厳めしい名前の会議の目的は煎じ詰めれば国の歳出のカット。この会議で配偶者控除の「見直し」を議論するということは、国の支出を減らす方向で検討を進めることを意味する。すなわち配偶者控除の事実上の撤廃だ。実現すれば、専業主婦を抱えるサラリーンマン世帯への支援を打ち切るわけだから、そのままでは家計は苦しくなる。主婦は家事に専業していることは許されず、労働市場に追い立てられてしまう。

サザエさんは怠け者?


安倍政権ではこれを「女性活用」という。このまま専業主婦がいる世帯を税制面で優遇し続けることは社会の女性活用に反し、「女性の働く意欲を損なうことにつながる」と主張する。
しかしだ。サザエさんは「働く意欲がない」から家庭にいるのだろうか。マスオさんが国に支払う税額を圧縮するためにあえて家にいるのだろうか。それはけしからん、「1億総活躍社会なんだから、サザエさんも外に出て働け」というのか。ならば、タラちゃんはどうなる、タマのごはんは……。


●子供は2年は自分で育てろ 


こう考えると増税を盾に専業主婦を労働の場に駆り立てるのには無理がある。「いや、託児所がある。幼稚園がある」という見方もあるだろう。確かに今はゼロ歳から子供を預かる施設が都心にもある。しかし、簡単に考えてはいけない。子供はやはり少なくとも2年は母親が育てなければいけない。成人してからの人間性に欠損が生じる。人間性が固まる前に安易に外に放り出してはならない。たかだか1時間800円~900円を得るために、主婦が家や子供を犠牲にしてはならないのだ。
大切なのは庶民が一家の大黒柱をきちんと立てられることだ。中流階級であっても暖かい家庭生活を享受できる社会をつくるべきだ。もちろん高額所得者なら税制面の支援は不要だ。しかし、そうでない中流階級には、きちんと政府が税制面で生活を支援し、家を立てられるように応援してやらねばならない。

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●家が壊れる、国が壊れる


DODAのデータをみると20歳代の平均年収は349万円、30歳代で456万円。40歳代になってようやく572万円だ。どの世代も東京なら食べていくのがやっとだろう。妻が専業主婦で配偶者控除を撤廃されたなら、とても生活は成り立たず、子供をおいてパートに出るしかない。それを「1億総活躍」というなら、何とも浅薄な「活躍」だ。
安倍政権はいったい何を目指しているのか。このままだと家が壊れ、国が壊れる。(了)

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散るぞ悲しき 


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東京都知事選が大詰めに差し掛かっている。核武装もやむなしと公言する小池百合子氏が頭一つ抜けだし、これを元建設省官僚で岩手県知事時代は借金を2倍にした増田寛也氏が追う展開。つくづくこの国は「人がいない」と思うのだが、それにしても残念なのはジャーナリストの鳥越俊太郎氏。最大の「売り」が聞く耳を持っていることとは……。都民は話を聞いて欲しいのではない。聞かせて欲しいのだ。あなたの見識を。

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[※平成28年7月27日 産経新聞より]


●鳥越さん、あなたはジャーナリストですか?
 今、世はジャーナリス流行りである。とりあえず「ジャーナリスト」と言っておけばなんとか格好がつく。「こういう条件がジャーナリストには必要」といった確たるものがないせいかもしれないが、猫も杓子も自称、ジャーナリストである。ただ、この人は本物だと確信していた。都知事選が始まる前までは……。
 鳥越氏は1940年、福岡県に生まれる。1965年、京大文卒後は毎日新聞社に入社、週刊誌「サンデー毎日」の編集長も務めた。宇野宗佑首相の愛人問題を追及、退陣に追い込んだ敏腕ぶりは当時、確かに異彩を放っていた。権力と決然と対峙、間違いなくジャーナリストとして生きてきた人物であったはずだ。
 ところがだ。権力と戦う立場から一転、権力を追う立場に変わったとたん、口をつぐんでしまった。自分のポリシーを隠してしまった。驚くべき、そして悲しき変節である。
小池氏も増田氏もある意味、この程度の人物である。もともと差しある見識も持ち合わせていないのは分かっているし、その分期待もない。しかし、鳥越氏は違う。参院選で大勝、改憲を手中におさめた与党に対して、きちんとものを言い、牽制する役割を担っている。だから、民進、共産、社民、生活が団結しおした。その役割を果たさなければならない。口をつくんではならないのだ。


●ポリシーをなぜ隠す
本来、鳥越氏は反原発であったし、護憲、そして反アベノミクスであったはずだ。なぜ、それを声高に主張しない。野党の微妙な政策の違いを気にして、自分の主張を引っ込めたのか。神輿は軽いほうがいいと割り切ったのか。
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●散り際の美学を知れ
ジャーナリストなら主張して欲しい。なぜ原発なのか。護憲なのか、アベノミクスのどこに欠陥があるのか、論陣を張って欲しい。それで負けたっていいでないか。権力と正々堂々戦って敗れたならそれはそれでジャーナリストらしい。権力を牽制し、都民を啓蒙し、そして散るならよいではないか。
 勝つことに汲々として、言うべきことも言わない。それは鳥越氏の役割ではない。鳥越氏に対する都民の期待は「勝つ」ことではなく「有意義に負ける」ことである。状況に応じて自分に何が託されているのか、その役回りをきちんと察し、全力を尽くす。それが大人というものだ。鳥越さん、今のあなたは子供です。(了)

 

バングラデシュ事件が暴いたJICAの闇


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 バングラデシュの首都ダッカでのテロ事件から1カ月がたとうとしている。外務省は国際協力機構(JICA)などと共同で、政府開発援助(ODA)事業に関する安全対策会議を開き、日本の海外援助を行う上での安全強化策を検討していくという。だが、どうもこの動き、腑に落ちない。表層的な動きのように思えてならない。まるでバングラデシュ事件を手じまう口実づくりのようだ。そう、JICAは外務省が隠してしまいたい巨大な闇を抱えていたのだ。
 

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●JICAの裏で金が動く


バングラデシュの飲食店襲撃事件で犠牲になった日本人は7人。すべて国際協力機構(JICA)が支援する交通インフラ事業に従事していた。バングラデシュの発展にために尽くそうとしていたにもかかわらず問答無用で惨殺するテロの非道さには改めて憤りを感じるが、ここで我々が学ばなければならないのは、「なぜ、犠牲者が国際協力機構(JICA)の関係者だったか」ということだ。よくよく突き詰めると、これは偶然ではない。日本の誤ったODAが引き起こした必然的な結末だったのだ。どういうことか見ていこう。
 テロ事件が勃発したのは7月1日。実はこの直前の6月29日に国際協力機構(JICA)はバングラデシュ政府との間である契約を結んでいる。それは日本の国際協力機構(JICA)がバングラデシュに対しての巨額の円借款を貸し付けるというものだ。金額にして1735億3800万円。円借款の規模としては過去最大で、この巨額の資金を借り受けたバングラデシュ政府は、自国の都市の交通網の整備などインフラ投資に振り向ける計画だという。
 確かにバングラデシュは南アジアと東南アジアの結節点に位置する地政学的には極めて重要な国であることは間違いない。「世界の繊維工場」とも呼ばれ、繊維産業を中心に経済活動も活発になりつつあり、都市部の交通渋滞は激しさを増している。それを解消するために巨額の資金が必要で経済大国である日本が支援するということは自然なことのように思える。にもかかわらず「発展しつつある国を支援していた人を犠牲にするなんてテロはなんて卑劣なんだ」と言えば、片は付く。「テロに負けずに安全に気をつけ世界を助けよう」と言えば聞こえもいい。

●7人の奇妙な共通点


 しかし、それで終わってしまえば本質を見逃してしまう。さらに検証を重ねてみよう。
まず、精査しなければならないのが、今回、テロ事件に巻き込まれた7人がどういう人たちだったかということだ。いずれも交通インフラ事業の支援に従事していたことは先に述べた通りだが、実はこの7人には共通点がある。全員が建設会社の社員であるということだ。オリエンタルコンサルタンツグローバル(東京・渋谷=3人)、アルメックVPI(東京・新宿=3人)、そして片平エンジニアリング・インターナショナル(東京・中央=1人)で、3社はJV(共同事業体)を組み、共同で「ダッカの交通渋滞を解消する」という名目で、交通システム改善事業の実現可能性調査をしていたのだ。
 日本人の美徳として死者にむち打つことはしない。このため今回の事件でも「途上国の発展のためにだダッカに入った。なのに……」という美談仕立ての報道ばかりだった。その影響で一般国民はあたかも7人が無償で、途上国発展のために尽力していたかのような印象を受けたかもしれないが、実はそうではない。全員が社員として現地に入り、それぞれの会社のビジネスを担ったところで事件に巻き込まれたのだ。

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●ODAは誰のため


 さらに重要なのはこれからだ。そのビジネスの正体とは何なのかということだ。結局は日本のODA絡みの仕事なのである。6月末に日本がバングラデシュ政府に対し巨額の円借款契約を結んだがこれも狙いの一つ。こうしたODA絡みの契約が形になりバングラデシュ政府を経由し、交通インフラ整備事業として落ちてきたところをすくう仕事だったのだ。要はODAに群がる建設会社の先兵としてバングラデシュに派遣され、そこで犠牲になったというわけだ。
例えば3人の犠牲者を出したオリエンタルコンサルタンツグローバル(東京・渋谷)という会社を見てみよう。
このオリエンタルコンサルタンツグローバルという舌を噛みそうな長い名前の会社はいったいどういった会社なのか。実はこの会社、2014年10月1日に創業したばかりの建設コンサルタント会社に過ぎない。ただ、もともとは同じく東京・渋谷に本社を置くオリエンタルコンサルタンツという建設コンサルタント会社の海外部門で、こちらは歴史のある会社だ。これを切り離し、別動隊の会社の形態としたのが、異常なのはこの2年間の成長ぶりである。決算公告を拾ってみると2014年9月末時点での資産合計は4億8285万円。これが1年後には85億6818万円にまで急拡大している。この急成長の原動力が、国際協力機構(JICA)を軸としたODA案件だということは想像に難くない。これを見逃してはならない。

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バングラデシュはお腹いっぱい


ODAは経済大国、日本の責務として続けられ、武力を持たない日本の外交の要を担ってきた。しかし、そのお金の使われ方は極めてグレーで、行き先も合理性を欠く。
バングラデシュなども日本の国土の4割程度のところに、1億6000万人もの人が住む。わざわざ、日本がでていかなくても人的資源は事欠かない。それでも日本はこれまで1168人もの人を派遣し、経済協力を進めてきた。その数はフィリピン、マレーシアに次ぐ第3位の規模で、いったいなぜ、人的資源が潤沢なバングラデシュにこれほど日本人を派遣しなければならないのか、説明はつきにくい。
さらにそこにお金を注ぎ込み、バングラデシュ政府を経由する形で、無名の企業が甘い汁を吸ってきていたとするなら、どうだろう。美名に隠れた悪事はたちが悪い。今回のバングラデシュ事件が意味するところを日本人はもう一度、考え直すことが必要だ。(了)

あなたはコーランを唱えられますか

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       バングラデシュの首都ダッカで日本人7人が犠牲になった人質テロ事件。事件が起きて1週間以上が経過、伝えられる凄惨さには耳を覆いたくなる。亡くなった方には心から哀悼の意を表したいが、その死を無駄にしないためにもここで指摘しておきたい。日本人は狙われた。そして狙わせた。

 

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●日本人犠牲、シナリオ通り


イスラム教徒か。バングラデシュ人か」。実行犯はこう問いかけ、イスラム教徒の聖典コーランの一節について公用語であるベンガル語で尋ねたという。イスラム教徒だと分かれば、見逃し一部は開放したが、その逆であるとわかれば刃物や銃で殺害していった。そのやり口の卑劣さは狂気の沙汰としか思えないが、実はそうではない。計画は練りに練られ、外国人たちは計画通り殺されていった。実行犯たちは終始、クールだった。
ここで押さえておきたいのは、事件を実行したイスラム過激派のメンバーたちが、かなりの知識層だった点だ。有名大学な私立大学で学んでいた若者たちで、家庭も比較的、裕福なものたちだった。つまり、人質が日本人であることをきちんと理解し、日本人であるがために殺した。
 実際、現場にいた人の証言から亡くなった日本人の1人は「私は日本人だ」と叫んだことがわかっているが、その言葉に実行犯たちは耳も貸さずに刃物を振り下ろした。この現実をどう見るかだ。少なくとも10年前なら結果は違った。日本人だと言えば、命までとられることはなかった。ましてやバングラデシュの社会的インフラを整備するために、やってきた日本人たちである。救われたはずだ

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●日本は敵国


いったい何が変わったのか。日本は敵国になったのだ。IS(イスラム国)の敵として明確にリスト入りを果たしたのだ。その転機となったのが昨年の安保安全保障関連法案(安保法案)の可決。集団的自衛権を認め、世界のどこへでも自衛隊が出かけて戦争ができる体制を整えてしまったのだ。日本はISを脅かす国になった。だから狙われた。
安倍政権は日本をそういう国にした。テロと戦う国、テロに狙われる国にしたのだ。今回の選挙で与党が勝てばさらに日本の右傾化が進む。それを国民は望むのか。選択を見守りたい。(了)

5兆円がまた消えた

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    また5兆円が消えた。国民年金などの積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が今年4月からたった3カ月間で、5兆円もの運用損を出したのである。英国の欧州連合(EU)離脱で株価が急落したのが原因だ。GPIFは昨年度も5兆円の運用損を出したばかり。国内や国外の株式での運用比率を高めた安倍政権の政策が完全に裏目に出ている。

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●年金をジェットコースター運用


お金には二種類ある。損してなくなってもいいお金と、決して無くしてはならないお金である。お年寄りの老後を保障する年金は、我々庶民にとってはいわば命綱。決して、なくしてはいけないお金に属する。安倍政権はそれを知らない。
確かに安倍政権が主張するようにGPIFは損ばかりしているわけではない。おととしまでは利益の方が大きく、総額では38兆円のプラスである。ただ、だからといって問題がないとは言えない。ジェットコースターのように儲けたり、損したりするようなお金の運用は、年金のように決して損してはならない性格のお金にはそぐわないのだ。
なのにアベノミクスの効果を水増ししてみせたいがために、ルールを変更してまで年金をリスク市場に投入する。その無謀さ、思慮の浅さが問題なのである。

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●運用損、公表は選挙の後


不可思議なのは自民党が15年度の運用損の正式な公表を7月29日まで先延ばしにしていることだ。例年ならGPIFの運用結果は7月の上旬に公表している。「こんなに得をした」と吹聴して回っている。今回はわざわざ1カ月近くもずらし、参議院選挙の後に振り替えている。
おかしいではないか。仮に15年度もプラスがでていたら、公表は選挙の後だっただろうか。作為的に選挙の後にずらしたと考えるのが自然だ。
憲法改正にしても安保法案にしても、この政権、かなりおかしい。これほどまでに赤裸々に国民を愚弄した政権はかつてなかった。この政権を勝たしてしまったら、庶民はおろかだと認めることになる。 (了)f:id:mitsu369:20160706080824g:image

 

200円カレーと5兆円

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      新潟市に本社を置く「原価率研究所」。この会社の売りは税込み1皿200円のカレーライスだ。年初にオープンした東京1号店には行列ができるという。漠然とした将来への不安を拭いきれないビジネスマンは生活防衛にやっきだ。そんな庶民を尻目に「株で5兆円もスッてしまった人がいる」というから驚きだ。いったい誰?

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●年金5兆円が消失


 答えを明かしてしまおう。その人とはGPIF、すなわち年金積立金管理運用独立行政法人だ。6月30日の運用委員会で2015年度の公的年金積立金の運用成績を厚生労働省に報告したところ、5兆円を超える運用損が発生したという。
 「5兆円なんて随分、景気のいい話だ」と笑ってはいられない。なぜなら、このお金、国民年金と厚生年金の積立金だからだ。国民が老後に必要な、どうしてもなくてはならないお金が、5兆円も消失してしまったのだ。見過ごしていいはずはない。どうしてこうなった。
まず、抑えておかなければならないのがGPIFが運用する積立金の規模だ。ざっと140兆円。日本の一般会計税収(2016年度=57兆6000億円)の2倍強にあたる。これだけのお金をGPIFは株式のほか、国債、外国株などで運用しているが、運用しているお金が年金であることから、これまで政府は運用益よりも安定性を重視してきた。変動幅の大きい日本株や外国株ではなく、利回りは低くても安定している国債などに比重を置いてきたのだ。
ところがだ。安倍政権がこれを一気に切り替えた。利回りが低い代わりにリスクも低い国内債券の比率を60%から35%にまで引き下げ、その一方で、株式での運用の比率をこれまでの2倍の50%にまで引き上げたのだ。大量の年金マネーが株式市場になだれ込んだのである。
年金マネーは株式市場で「クジラ」と呼ばれ、その流入は大いに歓迎された。株価上昇を下支えどころかけん引役となり、それがアベノミクスの成果としてもてはやされた。しかし、それもつかの間。昨年8月の、人民元の切り下げを受けた世界同時株安「チャイナ・ショック」の影響で、巨額の損失を出してしまった。ここに今後、英国の欧州連合(EU)離脱問題が追い打ちをかけ、損失はさらに拡大していくことだろう。

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アベノミクスのウソを暴け


アベノミクスの正体とは、とどのつまりが「円安と株髙」。結局それは国民のお金を使って演出されたに過ぎない。日本の経済が世界と無縁であるはずもなく、お金を無理に注入して底上げされたニセモノ相場は、中国や英国、欧州連合(EU)などが揺らぐたびに、震え上がる。皮肉にもそれはアベノミクスが標榜するグローバル化が、進めば進むほど直接的になる。
この5兆円の巨額損失は、アベノミクスのウソを見破る入り口となる。人様のお金を拝借し、それを使って自分の成果を演出するなど、なんと姑息なことか。国民はこの事実を見逃してはならない。櫛名田姫がまたアベノミクスという大蛇(オロチ)に食われたのである。5兆円も。さあ、どうする。アベノミクスはこれを反省することはない。株式市場に刺激を与えるため、さらにニューマネーを投入する政策をとるだろう。それを許すのか。見逃せば、すべてを食わせてしまうことになる。(了)

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最後のサミット

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「日本はケチなソロバンをはじき、小細工をした」。5月27日、閉幕した伊勢志摩サミットに対する中国外務省の公式評論である。威信をかけたサミットで日本が「小細工」をしたとは「なんたる非礼」と言いたいところ。しかし、さにあらず。確かに小細工なのである。 
 
●首脳宣言で中国非難
 
中国が問題にしているのはサミットで首脳宣言だ。今回のサミットの首脳宣言の骨子は6つあったが、その骨子の1つに「中国の東シナ海南シナ海での行動を懸念する」との文言が盛り込まれたのだ。この「懸念」を盛り込むよう強力に働きかけたのが実は議長国である日本。これを中国は「小細工」と非難しているというわけだ。
 G7のような国際的なトップ会議で正式に批判されたとなれば中国とて面白くない。G7を「本来、経済政策を議論する場」としたうえで、それを日本が利用して中国を避難したのは「ケチなソロバン」であり「小細工」であると断じたのだ。
中国がいう通り、そもそもサミットの発端は世界経済への対応だった。1973年の第1次石油危機による世界経済の落ち込みを議論したのが始まりで当時、経常黒字国だった日本とドイツが、危機脱出のけん引役として期待され、その是非が議論された。
 
G7の場を私的流用
 
しかし、そのG7の場を今回、日本は私的な目的で利用した。中国にプレッシャーをかける場に流用したのだ。
それだけではない。今の世界経済が「リーマン・ショックの前に状況に似ている」と言う認識をG7共通のものにする場にも利用しようとした。これは消費税導入の延長の理由を探していたためだ。自民党が秘密裏に進めた調査によると、このまま消費税導入を強行すると夏の参院選挙での敗北は避けられず、そうなれば安倍政権の悲願である憲法改正も遠のく。正々堂々、消費税導入を先送りできる理由が必要で、その理由探しの場として国際的に権威のあるサミットを選び、米国もそれを黙認した。
こうなればサミットの価値は下がる。実のある議論がなくなってきた分だけ、価値はない。少なくとも中国が参加しないG7の意味は薄らぎつつある。
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G7のGDPは世界の5割未満に
 
実際、日米、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダのG7国内総生産(GDP)の合計は1980年代には世界全体の7割を占めていたが、今は5割を切る。影響力は日増しに弱まるばかり。一方、G7と異なり中国が加わったG20のGDPは世界全体の実に8割を占め、中国が主張する通り「G20はG7に代わるプライマリー(第1)のフォーラム」になりつつある。
 このG7からG20への軸の移動をG7各国の首脳は敏感に感じ取っている。だから影響力の弱まったG7は、その場を日本が私的に利用することを許したのだ。「あくまでも本番は中国が参加するG20。中国抜きで何をしても茶番」というわけだ。
 つまり結局は中国なのである。G7の首脳も中国しか見ていない。中国抜きのG7で何をやろうと、何を決めようと現実味は薄い。G7などあてにはならないのだ。
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東シナ海、自分で掘れ
 
日本も東シナ海の問題を解決したいなら、G7の権威にすがるのはやめ、自ら動くことだ。東シナ海のガス田を自ら掘るしか、解決策はないのだ。
 実際。中国は東シナ海でのガス田開発を中断するどころか、開発のスピードを日増しにあげている。日本は中国に対し排他的経済水域EEZ)でのガス田開発を一方的に進めないよう警告しているが、中国がこれに耳を傾ける気配はない。日本政府は2015年7月に東シナ海における中国によるガス田開発の現状を示す写真を公表したが、それから1年弱の間に、把握できた16基の構造物のうち7基で開発が進んでしまっている。
 これを避難している暇があったら、自分でさっさと掘ることだ。中国からすれば「何もしないから悪いのはそっちだ」ということになる。誰も助けてはくれない。その現実を日本は『最後のサミット』から学ばなければならない。(了)f:id:mitsu369:20160607094008j:image
※関連記事…
▼『中国の舌は米国の舌』
 
 
▼『日中ガス田、日本はこうやって掘れ』
 
▼『 日中共同ガス田開発ーー夢は獏に食わせてしまえーー』
 

北北北に進路をとれ

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    安倍晋三首相が1日から7日まで欧州とロシアを訪問する。狙いは今月26~27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の地ならしだ。議長国として日本がどのように主要7カ国(G7)をさばくか、世界経済が不安定な時期だけに安倍首相の采配が注目される。とりわけ大切なのはロシア。米国、欧州と一緒になってウクライナ危機を題材にロシアを非難する側にたってはならない。その意味でも今回のトップ会談は重要な意味を持つのだが……。

●殴らないロシア人

「ロシア人はまず相手をなぐってから交渉する」――。ロシアとの外交の難しさは昔からよく言われるところ。交渉の初期段階でまずグッと詰め寄り、相手の様子を見ながら少しずつ、譲歩を重ねる。落としどころが見いだしにくくなかなか結論まで到達しにくいのがロシアとの交渉なのだ。
ところが、最近は様子が違う。特にこと日本との関係においてはこの「まず殴る」の前段がない。最初から譲ってきているのだ。
その最たるものが北方領土問題だ。プーチン大統領は今年4月に北方領土の返還問題に関して「妥協はいつか見いだされる可能性があり、見いだされると思う」と述べている。外交交渉においてまず有利にものごとを進めたいなら「問題など存在しない」と突っぱねるのが常道。北方領土においても実質的に4島ともロシアが支配しているわけだから「日本との間に領土問題など存在しない」と言えばロシアは北方4島を現状のまま維持できる。
にもかかわらず、ロシア側は領土問題の存在を認めるばかりか、「妥協が見いだされると思う」という。つまり「一定のラインまで譲る」と明言しているのだ。実はこれは外交交渉のイロハからすれば、驚くべき譲歩だ。
ところが日本はこのロシアが差し伸べた手を振り払い続けている。プーチン大統領も「日本がある段階で我々との接触を制限するのを決定した」という。ウクライナ問題で日本が欧米とともに制裁を決定したことを示唆しているわけだが、ロシアが日本に熱心にラブコールを送り続けているのに日本はそれを袖にしてばかりだ。
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●米国の圧力に屈する日本

北方領土が返還されるなら日本にとっては願ってもない吉事。資源問題に悩まされることもなくなる。にもかからわず、日本がこの問題に取り組めずにいるのは背景に米国のプレッシャーがあるからだ。日本がロシアと接近することに対して米国は一貫して否定的であり、そのために日本もロシアとの領土問題に本腰を入れずにいる。
ロシアもここは見抜いていてプーチン大統領が「米国などパートナーの圧力にもかかわらず、日本の友人は(ロシアとの)関係の維持に努めている」と発言、日本の弱腰をやんわりと牽制している。
さて、※「前門の虎、後門の狼」。ここで日本はどう動くべきなのか。断然、北に進路をとることだ。米国との関係悪化を必要以上に恐れていてはならない。「御稜威(みいつ)は北から降りる」。ここはその法則に従い、北に御稜威をとりに行くことだ。ロシアには天然ガスや石油などの資源はもちろん日本がもたない広い領土と潤沢なマーケット(市場)を持つ。日本が敵対する中国への牽制力もロシアとの提携で強化することが可能になる。
安倍首相は欧州各国を回った後、ロシア南部の保養地ソチでプーチン大統領と非公式に会談する予定。このチャンスを無駄にすることがあってはならない。間違っても「米国の同盟国として」などと虚勢をはってウクライナ問題などで啖呵を切らないことを切望する。せっかくプーチン大統領と会ったのに「成果なし」では困る。「ゴールデンウイーク(GW)だったから成果もお休みでした」では笑えないブラックジョークだ。(了)  f:id:mitsu369:20160502190045j:image 
※【 前門の虎、後門の狼 (ぜんもんのとら、こうもんのおおかみ)】…一つの災難を逃れてほっとする間もなく、またすぐに他の災難に見舞われることのたとえ。

鳴かぬなら殺してしまえ、原子力規制委

   権勢を誇った秦の始皇帝が最後に求めたのが不老不死の妙薬だった。その薬を探すよう命を受けた徐福(じょふく)は「薬を探す」と偽り、命からがら日本にたどり着いたとされる。傲(おご)るものの滑稽さは本人には分からない。「時間を克服することなど人には出来ない」という当たり前の道理さえ見失う。だが、もっと怖いのはその無謀な挑戦を止める者がいない社会だ。
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原子力規制委、40年超運転を認可

4月20日。原子力規制委員会関西電力の老朽原発、高浜原発1、2号機(福井県)が新基準を満たすとの判断を示した。これにより高浜原発の運転延長が認可される可能性が高まった。実現すれば、運転から40年を超えた老朽原発に火がともり続けることになる。
原発の寿命は原則40年。これが原則だ。その原則を曲げるには原子力規制委員会の認可が必要だが、関電は今回そのお墨付きを得たことになる。稼働までに後いくつかの認可手続きを経ることになっているが「大きな課題は残っていない」とみられ、このまま何もなければ後20年の稼働が可能になる。
これまで40年原則を超えて運転した原発はない。高浜の運転期間延長が認められれば「原発寿命40年」の原則は有名無実化、周辺の住民の命が危険にさらされる。同時に「高浜モデル」が電力業界全体に広がり、老朽原発の長期運転に道が開かれてしまう。
もちろん原則には例外がつきものだ。しかし、まず例外からスタートする原則など聞いたことがない。ところが、原子力規制委員会の今回の動きはかなり不自然だった。関電の老朽化原発の長期運転を認めようという意思がありありなのだ。
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原子力規制委員会 田中委員長〉

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関西電力高浜原発を巡る経緯〉

●熊本地震のまっただ中の暴挙

それは今回の判断のタイミングを見ればよく分かるだろう。原子力規制委員会が認可を与えた4月20日はまだ九州の熊本で激しい余震が続いていた時期。川内原発鹿児島県)の周辺住民が福島第1原発の様子を思い出しながら恐怖に怯えていた時期である。
その時期にあえて老朽原発の運転期間延長を表明するなど、日本中を敵に回すようなもの。しかし、原子力規制委員会はそれをやらざるを得なかった。なぜなら、期間延長の判断の「期限」が7月に迫っていたからだ。これを過ぎれば高浜原発は「廃炉」となってしまう。この後、安全対策の認可、詳しい設計の認可、運転延長の認可を得なければならないことを考えれば、1日でも早く原子力規制委員会が認可を下ろす必要があった。
そしてその通り原子力規制委員会は認可を下ろした。期限から逆算し、高浜原発が時間切れで「廃炉」になることを避けた。
こうなれば原子力「規制委員会」とはいったい何を規制しているのかという疑問がわいてくるのも当然だろう。先の川内原発でも絶対的に必要な重要免震棟すらない原発を「安全」として再稼働を認めた。今、この時点で川内原発地震に耐えられず水蒸気爆発を起こしたならどうするつもりか。丸裸の原発でいったいどんな対応がとれるというのか。
今回の高浜の件もそうだ。原発40年というのは長期運転による原子炉の壁の摩耗の度合いからみて科学的に「限界」とされる時間である。それをこえ運転させてもよいという。しかもかなり焦ってそう判断した。本当に大丈夫か。責任はとれるのか。福島第1原発ですらメルトダウンを防ぐことはできなかった。「ありえない」とされてきたことが現実になった。にもかかわらず「原発稼働ありき」でお墨付きを振りまき、国民の命を危険にさらす原子力規制委員会。何も審査せず、ただ現状を黙認するだけの機関なら必要はない。(了)



人が犬を噛んだ

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    駆け出し記者のころ。先輩から「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛めばニュース、ニュースとはそういうもの」と教わった。もしこれがニュースの本質を言い当てているのだとしたら「川内原発が通常に稼働」がなぜニュースなのか。
 
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●「何もない」ことがニュースの狂気

14日午後9時26分ごろ、熊本県益城町震度7地震が発生、西日本の広い範囲で揺れが観測された。気象庁震源地の規模は同県中部で、地震の規模はマグニュチュード(M)6・5と発表した。家屋倒壊や死者もでているというから現地はさぞかし大変な事態になっているのだろう。
 NHKはもちろん民放各社もリアルタイムでニュースを刻々と届けてくるが、画面の下に「九電川内原発鹿児島県)に異常なし」「玄海原発、異常なし」と字幕スーパーが流れるのはかなり違和感がある。原発に異常なし?あたり前ではないか。
 ひょっとして後ろ暗いとろでもあるのだろうか。そう。ある。九州電力川内原発を再稼働する際、重大な手抜きをしているのだ。「免震重要棟(後で耐震構造に変更)」の不備だ。重大事故が発生した際、現場で混乱の収拾を図る最重要拠点である免震重要棟を建設しないまま原発を再稼働させているのだ。原子力規制委員会も「将来、この免震重要棟をつくる」ことを条件に再稼働を認めており今現在はこの免震重要棟は存在しないのだ。
 ということは、今回の熊本県の大地震により川内原発で何か事故が起こっていれば、その対応を指揮する拠点すらない。あれほどの大混乱を招いた東京電力福島原発ですら免震重要棟はあった。曲がりなりにも責任者が集結し、事態を収拾するための最前線の基地はあった。
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●走り出したブレーキのない車

 川内原発にはその免震重要棟ない。「将来つくるならそれでいい」と再稼働が認められた。その当時も「では、免震重要棟が完成する前に事故がおこったらどうなるのか」との指摘はあったにもかかわらず、静かに見過ごされ再稼働に至っている。
 ブレーキがない車が走り出しているのである。ブレーキは「将来、つけるから」という条件つきで「それなら安全」と太鼓判をおされ走り出している。今、急に目の前に人が飛び出せばとまる術はない。川内原発も同じだ。今、ここに何か事故がおこれば対応する術はない。前線で指揮をとる拠点すらない。
 今回はたまたま何も事故は起こらなかった。少なくとも現時点ではだ。しかし、明日は分からない。それでも川内原発の火は燃える。その火の危険にさらされているのは今回の熊本県地震で亡くなった人の何倍もの人の命である。今、この瞬間もだ。(了)
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〈免震重要棟の重要な役割〉

資源がない国?誰が決めた!

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2016年3月10日、安倍晋三首相は「日本は資源がない国」と言い切った。あれ?安倍さん「それって本当ですか?あなたは地面を掘ってみましたか?」


これは東京電力福島第一原子力発電所事故から5年となるのを前に安倍首相が記者会見した時の話。滋賀県大津地裁が高浜原発3、4号機の運転を差し止める仮処分を決定しているが、これについて安倍首相は資源に乏しい日本にとって原発は欠かせないと主張した。
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原発再稼働という政府の方針にこだわるのは分かります。でもね、安倍さん。日本に資源がないというのは無理がある。東シナ海で中国があれほどの投資をして石油を毎日、掘り出し、尖閣諸島で横暴に振る舞うのもあの海域にサウジアラビア級の油田が眠るからでしょう?掘ってみなさい、石油が湧いてくるから。
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2013年でしたっけ。新潟市秋葉区の空き地から石油とガスが噴出してきたこともありました。日本の大地に原油が眠っている証拠です。千葉の茂原では今、この瞬間にもガスが湧く。ガスの下に油田がある証拠ではありませんか。
これほど日本に資源が豊富な証拠が満載なのに何で「日本には資源がない」なんて言えるのですか。

少しは勉強しなさい。一国の総理なんだから…。(了)
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※関連記事…「起死回生の鉱脈は足元にあり」2015-6-3

狼は羊の皮をかぶって忍び寄る

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    人類史上初めての原爆投下という悲劇を被った日本。投下の場所が広島と長崎だったのはなぜかご存じか。答えはその地名にある。「広島」は昭和天皇である「裕仁(ひろひと)」、「長崎」はその皇后である「良子(ながこ)」を象徴する地名。だからこそ、そこに原爆が投下されたのだ。その広島をケリー米国務長官が訪問するというのだが……。

    岸田文雄外相によるとケリー国務長官が広島を訪れるのは11日。主要7カ国(G7外相会合に関連して平和祈念公園を訪れ、公園内にある原爆慰霊碑に献花をする予定だという。原爆資料館も視察する。ケリー米国務長官は米閣僚として初の訪問で、岸田外相は「世界の指導者に被爆の実相に触れてもらうことは、核兵器のない世界を目指す機運を盛り上げるうえで大変重要だ」との期待を表明している。

確かにその通りである。広島に集結する主要7カ国はドイツを除けば大半が原発大国であり、かつ大量の核兵器を持つ国々。核弾頭数は筆頭の米国が7000以上、次いでフランスが300、英国も200以上だ。そんな核まみれの国々が日本に集まり、本当に核兵器のない世界を目指し協力することで動きだすなら、世界は変わっていくだろう。岸田外相は核軍縮・核不拡散に焦点を絞った「広島宣言」を出す方針だが、実質的で現実味のある内容になることを期待したい。
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とりわけ注目したいのは米国だ。大統領のオバマ氏は2009年4月のプラハでの演説で「核兵器のない世界」を目標にかかげ、その年の12月にはノーベル平和賞を受賞した。核安全保障サミットも主導し、今年4月には50カ国以上の首脳らを米国に招き核テロ防止を「永続的な優先課題」と位置づけた声明を採択している。5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)時にはケリー国務長官の進言を受け、現職大統領として初めて広島入りする可能性もあり、世界は米国がけん引しながら核軍縮に向け動き出したように見える。

ところがだ。表のパフォーマンスとは裏腹に世界は核軍縮どころか、着々と軍拡に動いている。その証拠となるのがプルトニウムの保有量だ。プルトニウム核兵器にはなくてはならない原料だが、国際核物質専門家パネルの調査によるとこのプルトニウムの保有量が世界で増えているというのだ。例えばオバマ大統領が安全保障サミットを初開催した2010年末時点のプルトニウムの量は496トン。これが2014年には504トンにまで増えた。増加量は8トン。1トンで核兵器約200発が製造できるというから、たった4年程度で1600発もの核兵器がこの地球上で増えてしまった計算になる。表面的には軍縮を唱えながら、裏では核戦争の準備が着々と進んでいるというわけだ。

ならば日本はどうするか。ここで気をつけなければならないのは米大統領選の共和党候補指名争いで首位に立つドナルド・トランプ氏の発言。日本からの駐留米軍の撤退とともに日韓の核武装を提案しているのだ。米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで「米国第1(アメリカ・ファースト)」と名付けた外交政策を発表したが、ここで「米国の力がこのまま弱まれば(日韓は核を)を持ちたいと考えるだろう。日本が北朝鮮の核の脅威に直面するのなら核の保有は米国にとっても悪いことではない」と発言している。日本の核兵器保有を容認または推進しているわけだが、もし本当に日本が核武装するなら中国、北朝鮮に核開発の大義を与えることになる。アジアはたちまち軍拡競争に突入するだろう。何よりも自衛の範囲を超え日本国憲法9条に抵触、世界の信用を失う。トランプ氏の発言の裏にはかなりの米国の政財界人の意向があると推測されるが、まかり間違っても米国の誘導に乗ってはならない。

核戦争は穏やかに静かに忍び寄る。平和を装いながら罠をしかけてくる。その舞台に広島がなってはならない。世界で類を見ない犠牲を払い、無差別に人を殺す核兵器の酷さを白日にさらした広島である。昭和天皇の名にその音(おん)を重ねる広島が、核戦争を企てる者どものパフォーマンスの場になってはならない。
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日本よ、全身の神経を研ぎ澄まし、八岐大蛇(やまたのおろち)の策略を見抜け。狼は羊の皮をかぶって忍び寄る。(了)

ミサイル?「Et alors(それが何か?)」

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北朝鮮が動いた。日本政府は2月10日、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射に伴い独自制裁の強化を決定したが、これに対し12日、拉致問題を含む日本人の調査を全面的に中止することを決めたのだ。朝鮮中央通信が伝えた。今回の日本政府の北朝鮮に対する行動はあまり素早く、そしてあまりに軽率。そのツケが早速、回ってきた。米国に投げた北朝鮮の牽制になぜ日本はそんなに怯え憤る必要があるのか。

●世界はなぜ北朝鮮に憤る?

 30年ほど前の話である。第21代のフランス大統領ミッテランが朝食会の席上、記者から愛人との間に隠し子がいるのかと問われ「Et alors(それが何か?)※」と返し、世間を沸かせたことがある。金正恩キム・ジョンウン)もそんな心境かもしれない。「長距離弾道ミサイル?」「発射したよ、それが何か?」。
 確かに北朝鮮の外交戦略には1本筋が通っている。有事が発生する度に「米国など関係各国と緊密に連絡をとる」と繰り返す日和見ばかりの日本とは大きな差だ。今回の長距離弾道ミサイル発射も1月の水爆実験の成功の後、正々堂々と発射を予告、その通りに実施してみせた。国際上の手続きは経ており、批判される筋合いではないはずだ。それなのに世界はなぜこんな憤る?
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●米東海岸が射程に

 まず、批判される第1の理由は、この長距離弾道ミサイルの射程だ。韓国の韓民求(ハン・ミング)国防相は今回のミサイルの射程は1万2000~1万3000キロメートルと推定し「射程だけなら米本土も驚異になる」と話している。北朝鮮は米本土まで到達する大陸間弾道ミサイルICBM)の実現が最終目標としていると見られるが、今回の打ち上げで米国の東海岸まで届く性能を誇示することに成功しているのだ。
 第2にこのミサイルが搭載した「衛星」の重さだ。前回(2012年12月)の発射時に比べ、2倍に増えたというのだ。事実ならミサイルが「衛星」の代わりに「爆弾」を積んだ場合、2倍の威力を持つことになる。しかも今年1月に北朝鮮は水爆実験に成功している。核爆弾の何倍もの威力を持つ水爆が製造できるようになったということは、これまで核爆弾の何分の1からの重さのものでも、相当の威力を持ちうるということ。この「ミサイル」と「水爆」を1本の線で結べば、核を搭載した長距離弾道ミサイルを北朝鮮がほぼ手中に収めつつある事実に行き着く。世界が恐れおののくのも分からないではない。

●透ける5大国のエゴ 

ただしだ。ここでいう「世界」とはいったい何なのか。今回、北朝鮮の行動を批判している急先鋒は米国と中国。そして英国、フランス、ロシアなどだ。ここで思い出して欲しい。NPT(核拡散条約)で、核保有を認められている国々の名前だ。そう、それは米国、中国、フランス……。今回、北朝鮮の長距離弾道ミサイルを批判している国々の名前とピタリ一致する。
ここで透けてくるのは「5大国を中心とした世界のパワーバランスを北朝鮮ごときが崩すことは許さない」という大国のエゴイズムだ。NPTでは5大国は核保有を認めるが、それ以外の国には保有を認めていない。理由は「これ以上の核兵器の拡散を防ぎ、世界平和を実現するため」。そんな不平等な話はない。要するに核保有は早い者勝ちというわけだ。この5大国だけが核の威力を背景に世界で我を通し、これに刃向かう北朝鮮は徹底的に叩く。そんなバカな話があっていいはずはない。
それなのに日本はなぜか、5大国と一緒に北朝鮮を批判する。そればかりか5大国とは別に独自の制裁措置も導入するというのだ。5大国に入れてもらえもしないのに、5大国中心のヒエラルキーを侵したとして番犬のごとく吠えているのである。
そんな国を相手にしていられないという北朝鮮の主張はもっともではないか。「信頼関係を築き、拉致問題を話し合う相手とは認められない」という言い分は日本同様、北朝鮮側にもあるのだ。
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●踏みにじった北朝鮮の誠意

実は今年1月の核実験の後、北朝鮮は日本に対し経済制裁を強化するのなら「拉致問題を巡る対話をやめる」と非公式に通告していた。正式な国交のない北朝鮮として最大限の配慮を日本にはらってくれたということだ。なのに日本は5大国の主張を代弁、経済措置強化とともに「(北朝鮮は)断じて容認できず、北朝鮮に厳重に抗議し、強く非難する」という決議を衆参両院の本会議で採決してしまった。日本にとって何のメリットもない「雄叫び」を上げ、その見返りに拉致問題のパイプを寸断されてしまったのだ。いったい国会議員は何をしてくれているのだ。国会議員自らが国益を損なってどうする。
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●櫛名田姫(クシナダヒメ)はまだ泣いている

そもそも、今回のミサイルは沖縄の上空をかすめた程度で、日本とは全く関係のない南洋への飛んだ。日本を狙っていなかったことは明白だ。それなのに北朝鮮への批判を不必要に噴出させた。尖閣諸島はおろか沖縄近海すら中国に脅かされ、黙り込んでいる日本がだ。
これでは日本は「虎の威をかる狐」と下げすまれても仕方がない。グローバル化とは強いものを見極め、それについて回ることではない。国際社会で求められている役割を果たすことだ。今回、日本は毅然としてどこにも加担しない中立的な立場を維持する役回りだった。にもかかわらず必死で大国にこびる日本は実にさもしい。櫛名田姫はここでもやはり泣いている。(了)

※Et alors?(仏)…「エ・アロール?」日本語で「それがどうしたの?」の意。

クリントンメールが暴いた真実

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メール問題で苦戦を強いられているヒラリー・クリントン前米国務長官(68)。2月9日に東部ニューハンプシャー州で開いた大統領選の予備選では予想に反して民主党のサンダース上院議員(74)に敗北を期してしまった。私用メールのアドレスを公務に使うという軽率な行動が影響したことは間違いないが、このメール問題、大統領選以外のところにも思わぬ影響を与えている。日米関係だ。表では日本の同盟国として振る舞いながら、裏で中国と通ずる二枚舌外交の実態が白日の元にさらされてしまったのだ。

尖閣国有化「事前に中国と協議を」

波紋を広げているのは2012年9月の尖閣諸島沖縄県石垣市)の国有化を巡る1件。東京都知事だった石原慎太郎氏がワシントンのヘリテージ財団主催のシンポジウムで行った講演で、地権者から買い取る方向で基本合意したことを明らかにしたことを発端に中国が猛反発、結局、日本政府が20億円強で買収し国有化した事件だが、この時、キャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)が国有化の前に中国政府と協議するよう日本側に要請していたことが公開された前国務長官のメールから分かったのだ。
日本政府の公式的な立場は「中国との間に領土問題は存在しない」というもの。尖閣諸島は疑いようもなく日本の領土であるわけだから、個人の所有であろうと国の所有であろうと、それは国内問題であって中国と協議する筋合いの話ではないというのが本当だろう。石原氏の尖閣諸島買収構想に14億円もの寄付が集まったのも、日本国民がこの考え方に賛同しているからだ。ところが、この筋を曲げて日本側から中国に協議を申し入れれば、わざわざ「日本の領土ではなく中国の領土なのかもしれない」と言っているのと同じ。外交として下の下だ。それを米国は「やれ」という。日本の同盟国であり、日本の領土を守ってくれるはずの米国が逆に日本の領土を危機にさらすよう誘導しているわけだ。そのことを米国が自覚していないはずはない。
しかも、さらに不可解なのは日本側が「最終的に中国は国有化を受けいれる」との見解を伝えると、それに対して「懐疑的だ」と回答してきたことだ。日本固有の領土である尖閣諸島の国有化を中国がどう考えようが、日本にとってはどうでもいいこと。それなのに、わざわざ中国との協議に乗り出せば、尖閣諸島問題が国際問題として存在していることになってしまう。
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●中国に恩を売る米国

ここでもまた米国が決して日本の味方ではないことが浮き彫りになる。日本の味方でないばかりか、中国の味方なのだ。尖閣諸島問題で明らかに米国は中国に恩を売ろうとした。そして日本の領土を売り渡そうとした。日本国民はこの事実はまず見抜いておかなければならない。(了)
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集団的自衛権が引き寄せたもの

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 北朝鮮国際海事機関(IMO)に対し「人工衛星」を打ち上げると通告してきた。北朝鮮の場合、この「人工衛星」なるものが米国本土まで攻撃できる大陸間弾道ミサイルICBM)を意味することは衆目の一致するところ。それ自体に驚きはないにもかかわらず日本の政府関係者の間にはこれまでにない緊張感が走っている。ICBMが日本を標的にする可能性が出てきたのだ。招かれざる客を引き寄せているのはほかでもない。「集団的自衛権」だ。
 
●チャンスは1秒

通告によるとロケットは北朝鮮西部の東倉里(トンチャンリ)から南方へ発射。1段目は韓国西方の黄海に落下し、その後、フェアリングと呼ぶ衛星のカバー部品が韓国・済州島の南西沖に、ロケットの2段目はフィリピンのルソン島の東方沖に落下するとしている。
本当にそうならまだいい。しかし、仮にこれが米国を標的にしていたならどうか。核弾頭を装備している可能性もゼロとは言い切れない状況で当然、日本は同盟国である米国を守る「義務」が発生する。迎撃命令が出ることは必至だ。
問題はここからだ。果たして日本はICBMを打ち落とせるのだろうか。
ここで興味深い材料がある。韓国の東亜日報※が掲載した社説だ。「北朝鮮の弾道ミサイル、韓国領空を通過すれば迎撃できるのか」というものだが、ここで東亜日報は2014年5月に韓南(ハンナム)大学のチェ・ボンワン教授が国会で公開してシミュレーションを紹介している。北朝鮮が射程距離1000キロのノドン・ミサイルに1トンの核兵器を搭載して発射した場合、675秒(11分15秒)でソウルに落下するというのだが、この675秒のうち551秒は大気圏外にあり迎撃は不能だというのだ。しかも、大気圏内に入っている124秒のうち、PAC―3(パトリオット)打ち落としが可能な高度(12から15キロ)にあるのは、たった1秒しかない。迎撃はかなり難しいと指摘している。

●日本に定められた照準

ただ、社説では防衛技術が韓国よりも10年進んだ日本の場合は、ミサイルを打ち落とせる範囲が広くなると指摘、北朝鮮からの距離もソウルからさらに延びるため、ミサイルを迎撃できる時間はかなり増えるという。社説では、韓国もこうした事態に踏まえて装備を充実させる必要があると示唆しているのだが、それでは韓国からお手本とされる日本は安心していられるのだろうか。そうはいかない。
確かに東亜日報が言うように日本がミサイルを迎撃できる時間は韓国に比べて格段に多くなるが、秒単位の話でしかない。ミサイルを打ち落とせる確率は上がるが、100%ではない。それどころかその半分にも満たないという専門家もいる。

●今、危機はそこにある

にもかかわらず、そのミサイルが米国ではなく日本を標的にしていたとしたらどうだろう。米国に向かうミサイルを撃ち損ねても、日本自体に被害が及ぶことはないが、照準が日本に定められているとするなら話は別だ。しかも核弾頭を搭載していたとしたら……。「そんなこと、あるはずがない」。昨年までは確かにそうだったかもしれない。しかし、集団的自衛権を認めてしまった以上、北朝鮮からしてみれば日本は米国と同格の仮想敵国に「格上げ」されてしまった。重要な変化が起きたのである。米国と一緒になって北朝鮮を攻撃してくることが法的に担保されたとなれば、北朝鮮も穏やかではいられない。米国と一緒に日本も叩いてしまう、それが自然だ。
その自然な北朝鮮の行動に対して、日本は防ぐ手立てを持たない。代わりに米国は日本という防波堤を強化することに成功した。ここに国民は気がつかなければならない。集団的自衛権を認め、米国との同盟関係は強化されたかもしれないが、日本はとてつもないリスクを抱え込んでしまったのだ。
果たしてどうなるか。仮に本当にミサイルが日本を向いていたなら、おそらくその結果をこのサイトに記すことはできないだろう。今、八岐大蛇は牙をむく。危機はそこにある。(了)

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東亜日報「[社説]北朝鮮の弾道ミサイル、韓国領空を通過すれば迎撃できるのか」より(February. 04, 2016 07:19한국어)→http://japanese.donga.com/List/3/05/27/522102/1