琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

ジャパンファーストとなぜ言えぬ(2)~トヨタが国を売る~

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おもねったかいがあったというもの。米トランプ大統領が1月30日(日本時間31日)に実施した一般教書演説でトヨタ自動車マツダの名前をあげ、米国の雇用拡大に貢献した企業として賞賛してくれたのだ。米国での新工場建設が評価された格好で、米政権との摩擦を避け、車を売りたいトヨタ自動車マツダはこれで一安心。しかし、問いたい。「おい。おまえたち。米国はいい、日本はどうする気だ」

 

●4000人雇用の工場、米より東北につくれ
トランプ大統領が評価した新工場は南東部のアラバマ州に建設する。20州近く手をあげた中で、精査に精査を重ねて決定した。北米ではトヨタにとって8つ目の完成車工場で、マツダにとってはメキシコに続く2つ目の拠点だ。
 工場はトヨタマツダの共同出資となるが、投資額は総額で約16億ドル(約1792億円)。2021年の稼働を目指すという。トヨタが小型車「カローラ」、マツダが中小型の多目的スポーツ車(SUV)の生産を計画しており、2本の生産ラインの年産能力は年30万台。そして新工場建設により新たに生まれる雇用は約4000人だ。
 何という大きな経済効果だろう。仮にこの工場が東日本大震災で被災した東北地方に建設されたと考えて欲しい。4000人もの雇用が生まれるのだ。流出した人たちが故郷に帰るきっかけとなり、どれほど復興に弾みがつくだろうか。海と陸を無残に分断するそびえ立つコンクリートの防波堤をつくるより、よほど地域を元気づける。

 

●「まずは米国」のウソ
 しかし、安倍政権はそうは考えない。「まずは米国」。こう考える。「米国のおかげで日本は守られ、平和を享受できている。その米国をまずは富まそう。日本はその次ぎ。米国が繁栄しなければ、日本の繁栄もないのだ」と。
 だから、日本のお金は米国に流れ続ける。今回のトヨタの新工場建設は単なるその前哨戦に過ぎない。これを契機にトヨタは米国にどんどんお金を振り向け、今後5年間で100億ドル(約1兆1000億円)を投資するのだという。
 しかし、それにしても悲しい話だ。トヨタが自動車を輸出しやすいよう、どれだけ日本国が米ドルを買っていることか。1000兆円を遙かに超える借金を抱える世界に冠たる貧乏国、日本が、である。「きっと国を豊かにしてくれるのだろう」と国債を発行し、そのお金でドルを買っているのである。国民に借金をしてまでドルを買い、「円安」を維持しているのだ。
 それもこれも日本の企業が海外でモノを売りやすいようにするため、トヨタが海外に自動車を輸出しやすいようにするため血税を為替市場に注ぎ込んでいるのだ。それでもひとたび、トランプに恫喝されれば、企業はさっさと日本を売る。米国になびく。血税を使い、日本国に稼がせてもらった利益を我が身かわいさに米国に流す。これを恩知らずと言わずして、何という。
 今、日本は貧しい。1%の富裕層はともかく、中間層は貧乏ぶるいをしている。その民を見捨て、仕事を与えず、米国におもねる企業など国が守る価値などない。まず、国は日本国民を守れ。企業も米国もその後だ。(了)

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ジャパンファーストとなぜ言えぬ(1)〜強い通貨の国が強い〜

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スイスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席した米トランプ大統領。米国の現職大統領の出席は18年ぶりというだけあって、発言に世界の注目が集まったが「期待通り」、その言葉は世界を揺るがせた。テレビのインタビューに対しトランプ大統領は「最終的には私は強いドルを望む」と発言したのだ。通貨の強さは国の強さに通ず――。さすがアメリカンファーストを標榜する米大統領らしい発言だがそれにしても、なぜ日本はトランプ大統領の真似(まね)ができないのか。

 

●大切なのは企業よりも国民
トランプ大統領の発言の効果は覿面(てきめん)だった。「強いドル発言」はたちまち世界を駆け巡り対円で1円20銭近く急上昇した。前日の1月25日、ムニューシン財務長官が「ドル安」を容認する発言をしていただけに、マーケット(市場)は機敏に反応、ドル高に一気に切り返した。
トランプ大統領は「ドル高」、ムニューシン財務長官は「ドル安」――。1国の政府要人の発言が真っ二つに割れるのは実に珍しいが、日本にとっては示唆に富む「事件」だ。少し考えてみよう。
まずムニューシン財務長官の発言の真意は「ドル安」に為替を誘導、企業が製品を輸出しやすい環境を整えることで、米国の貿易赤字を解消したいということにある。だから「弱いドルは貿易面では好ましい」となる。日本と同じだ。
一方、トランプ大統領は違う。ドルが弱くなると米国が発行する国債を世界の国々が買ってくれなくなるので米国にお金が集まらなくなる。今後10年間で1兆7000億ドルのインフラ投資を打ち出しているが、これが出来なく可能性がある。ドル安は望ましくないというわけだ。
さて、ドル高とドル安、つまり自国通貨が強い場合と弱い場合、どちらが国を富ますだろうか。


●強い通貨で国を富ます
確かに日本のように自国通貨が弱くなると、モノを海外に売りやすくなる。企業の輸出は伸びる。企業は儲かり、豊かになる。しかし、国や国民は豊かになるだろうか。少なくとも米大統領であるトランプは企業が富んでも国は富まないと判断している。自国通貨を強くすることで、世界中からお金を集め、道路や鉄道、病院や学校をつくろうという考えなのだ。
日本もこのトランプ氏を少し見習ったらどうか。国民の税金を投入し、円安に誘導、トヨタ自動車の車を世界で売りまくれるようにしても、儲かるのはトヨタ自動車とその社員くらいで、庶民は豊かにはならない。そればかりか、個人のお金を、「ドル買い(つまり円安)」に使われればその分、富は少なくなる。車は売れるが庶民はやせ細っていくばかりなのだ。
身勝手な振る舞いの象徴のように取り扱われる「アメリカンファースト」だが、視点を変えてみれば、これほど国や国民のことを考えている言葉はない。日本にも「ジャパンファースト」を唱える政治家がでてきてもいいのだが。大和魂はどこにある。   (了)

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屈辱のJBIC、ウラン濃縮会社買収

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 耳を疑った。日本政府が、国際協力銀行JBIC)を通じて欧州のウラン濃縮大手、ウレンコ社(本社・英国)の買収交渉に入ったというのだ。福島第1原発の事故を引き合いに出すまでもなく原発の難しさは身に染みたはず。にもかかわらず、国自らがウラン濃縮の会社を買収するという。しかも、米国のエネルギー会社と一緒に、だ。今のところ決まっているのは日本がカネだけを出すということだけだという。

 

●金だけ出す日本
 話を分かりやすくするために、日本政府が買おうとしているウラン濃縮の会社がいったい何をする会社なのか解説しよう。一言でいえば原子力発電の燃料となるウランつくる会社だ。鉱山から採掘される天然ウランのなかには、実際に発電で使える「ウラン235」は0・7%しか含まれていない。だからこの濃度を3~5%程度にまで高めなければ実際の原子力発電では使えない。遠心分離機などを使ってウランの濃度を高める必要があり、それを手掛ける会社を米国のエネルギー会社と一緒に買うというのだ。
 しかし、原発の再稼働にこれだけ批判が高まるなかで、原発の燃料をつくる会社を買うなど尋常ではない。とりわけこれが問題なのは国自らが乗り出すということ。東京電力東芝が買うわけではないのだ。
 となると、気になるのはお金の出所だ。国が買うということは結局は国民が買うということだ。つまり、お金は「外国為替資金特別会計」から出る。一般会計ではなく特別会計から出るわけだが、いずれにしても要は簡単に言えば、国民の税金で買うのである。買った会社は米国のエネルギー会社が牛耳る、日本はお金だけ出す。

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血税がまた無駄になる
 ふざけた話しではないか。いったいいつこんな屈辱的なディールにカネをつかっていいと誰が言った。100歩譲って買ったウラン濃縮の会社を、日本の傘下に収めるならまだ利用の仕方がある。うまく使えば福島第1原発の処理に貢献するかもしれない。しかし、そうではない。買った会社は米国にくれてやるのだ。米国のエネルギー会社が欲しがるオモチャを、日本国民の血税で買ってやったようなものである。しかも、そのオモチャは原発という危険な代物なのだ。
 これはおかしい。極めて異常だ。最も恐ろしいのは日本政府が、それを隠そうともしないことだ。米国にかしづく、卑しい狐である実態を糊塗(こと)※しようともせず、正々堂々、国民のカネを使う。
さあ、安倍政権の正体が赤裸々に見えてきた。問われているのは国民の方だ。(了)

※糊塗(こと)…一時しのぎにごまかすこと。その場を何とか取り繕うこと。

 

どこか卑屈だ、郵便局

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「違うんだよな」と言いたくなる。日本郵便が4月から全国の郵便局で訪日外国人向けのサービスを本格的に始めるという。全2万の直営局に翻訳システムを導入し、窓口での外国人の接客対応を向上させる。いったいどこにそんなニーズがあるというのだろうか。日本は全国津々浦々、外国人が徘徊(はいかい)しているような国になるつもりはない。

 

 翻訳システムは4月に導入する計画だとか。情報通信研究機構(NICT)の翻訳エンジンなどを使って自前のアプリを開発。タブレット端末を通じて音声を吹き込めば、自動的に翻訳できる仕組みをつくる。英語・中国語・韓国語に対応し、ゆうパックなどの商品名や郵便の専門用語も簡単に訳せるようにする。このほか、都市部や観光地の郵便局では有料で荷物を預かり、ホテルなどへ配送するサービスも始める。全国に広がる郵便局網を生かし、増加する訪日客の利便性を高める狙いだという。

 確かに外国人にとっては便利だろう。日本人の観光客ですらやってこない寒村に、ぶらっと外国人が訪問、郵便局に立ち寄り言葉が通じれば感激するかもしれない。しかし、その確率は1%にも満たないだろう。そんな「まさか」に備えるために、なぜ日本が翻訳機を完備しておかねばらないないのか。

●日本は植民地にあらず

 日本は米国や中国の植民地ではない。日本に興味を持ち訪れてくれた外国人なら、片言でも日本語を話せるはずだ。少なくとも話そうとはする。用があるのは向こうなのだ。英語や中国語で話しかけられ、舞い上がってオタオタする必要などまったくない。「分からない」なら「分からない」と日本語で正々堂々、言えばいい。ここは日本なのだ。

 日本の政府は2017年で約2800万人だった訪日客を2020年に4千万人にまで増やす方針。地方へも積極的に訪日客を呼び込んでいくといい、郵便局のグローバル対応はこの流れのなかでは必然のように思えるかもしれない。

 だが、やはりおかしい。どこか卑屈、しかも、無意味だ。そもそも訪日外国人が日本に落とすお金は年間4兆円。郵便局がどれだけがんばっても1%も増えないだろう。日本の借金が1000兆円をはるかに超えるという時代に、日本の美しい田園地帯の生活を犠牲にして小銭を稼いだところでどうにかなるものではない。時代に合っているようで、合っていないのだ。

思い出して欲しい。日本郵政グループは2015年に買収した豪物流子会社トールを巡って、今年4月に約4000億円の巨額減損を出したばかり。今度は火傷をしないよう、M&A(合併・買収)を引っ込め、地道に小銭を稼ぐつもりかもしれないが、実はM&A(合併・買収)以上に採算性が低く、そして危険かもしれない。 (了)

安倍首相はビスマルク

    この国は大丈夫か。先日の大手新聞にこんな記事が掲載された。「ビスマルク流」の安倍外交――。1971年生まれの慶応大学の教授が書いた記事で、安倍首相はドイツの、「鉄血宰相(独: Eiserner Kanzler)」ビスマルクだと賞賛しているのだ。ドイツ統一を成し遂げたヨーロッパを代表する政治家ビスマルクと、米国への従属外交一辺倒の安倍首相と、いったどこが似ているというのか。

 

●プライド捨てた知識人
 この大学教授の論旨はこうだ。「今、米国は自国第1主義に傾きつつある。このため世界での影響力は後退、アジアでは不安定性が増しつつある。そして、この空白を埋めようと秩序を形成しようとしているのが、日本の安倍首相だ。安倍首相は、いわば21世紀のビスマルクだ」。読んでいるだけで気恥ずかしくなる。赤面する。いったい知識人のプライドはどこにいったのか。
 氏によるとビスマルクの外交戦略には常に勢力均衡の観点があり、「世界が5大国の不安な均衡によって統御されている以上、3国のうちの1つになること」、これがビスマルクの外交戦略だったと結論づけている。いわば複数の馬のなかから「勝ち馬」を見分け、常にその勝ち馬に乗り、体制側につくことこそビスマルクの外交だったと分析している。
 今、安倍首相にそのような5つの国を複合的に見る力などない。ロシアが、北朝鮮が、そして中国が何を考え、どう動くか、それを予想し、考える力などない。ただ、ただ、米国の機嫌を伺っているだけだ。

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●「ビスマルク」がトランプの運転手
 考えてみて欲しい。いくら歓迎するといってもゴルフ場で米国大統領のカートの運転手までつとめて、接待する一国の宰相がどこにいる。ビスマルクが聞いてあきれる。
 そしてもっとあきれるのは、そんな腑抜けの宰相を「鉄血宰相」と持ち上げる大学教授、そしてその論文を載せる新聞社の見識の低さだ。しかもどうどう1面に。かつて新聞は太平洋戦争をあおり、終戦を迎えるその日まで日本は勝つといい、玉砕を賛美し続けた。その罪を忘れたか。あきれるというよりは、ややそら恐ろしさを感じる。「あの時」と似てきたのではないか……。 (了)

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ビスマルクWikipediaより)

実感なき「いざなぎ越え」のワケ

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    今景気は絶好調である――。そう言えば驚く人も多いだろう。内閣府は9月の景気動向指数(CI、2010年=100)の基調判断を「改善を示している」に据え置き、2012年12月から始まった景気回復期が58カ月間と高度成長期の「いざなぎ景気」を超え戦後2番目の長さになった。しかし、これほど実感を伴わない好景気があろうか。富裕層や企業は将来の不況にそなえ、現金を貯め込むばかり。庶民に全く回ってこないではないか。

 

●「外」頼みのアベノミクス
内閣府の発表を受け市場(マーケット)は反応、東京株式市場では日経平均株価が一時、1992年1月以来、25年10カ月ぶりとなる2万3000円台に乗せた。世界経済も堅調、日本経済もいい、企業業績も過去最高を更新と良いことづくめなのに、なぜこれほどまでに空々しく響くのか。

まず、この好景気の起点だが、これは第2次安倍政権の発足時。今回の好景気が「アベノミクス景気」と呼ばれる所以(ゆえん)で、堅調な世界経済を背景に緩やかながらも長期にわたり指標となる経済的データが上向いている。

特に大きいのは二つ、一つは企業の輸出、そしてももう一つは訪日外国人と富裕層がけん引した消費だ。結局は「外部」の力頼みなのである。


これこそがアベノミクスの正体であり真骨頂である。要は「円安」の恩恵を被ったものだけが、得をするのである。つまりそれは自動車や家電製品の輸出で稼ぐグローバル企業と呼ばれる大企業、そして外国人に商品を買ってもらって潤う商売人たちだけ。庶民は全くの蚊帳の外に置かれるのだ。

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●「円安」を庶民の金で買うな
ただ、庶民にお金が回ってこないというだけならまだいい。庶民は何も贅沢をしたいわけではない。問題なのは大企業や商売人たちがきっちり稼ぎやすいよう円安の状態をつくるために、庶民の金がまるであぶく銭のように使われていることだ。

円安の状態は日本の長期金利を0%程度に誘導することで保たれている。この状況を維持するために日銀は日々国債の購入量を調整、長期国債を購入し続けており、今やその額は「年間で80兆円程度」。もちろん上限はあるが、この天文学的な資金を使って円安の状態を維持しており、このお金は結局、巡り巡って庶民につけ回されるのだ。

庶民に実感のない「アベノミクス景気」を演出するために、庶民の金があぶく銭のように使われる――。そんなバカな道理はないではないか。これは経済政策でもなんでもない。庶民の金を大企業と商売人にこっそり付け替えているだけのことなのだ。
まず、そこを見抜かなければならない。「安倍政権が維持されれば景気は上向く」。これはまやかしだ。

しかし、もっと知っておかなければならないのは、まやかしの好景気の先に何があるかだ。今の好景気が人為的につくらていることなど、経済人なら誰も知っている。それを誰も言わないのは安倍政権を長期化させ、そこで稼いだ時間を使って憲法9条を改正させことを狙っているためだ。今、経済界は戦争をしたくて仕方がない。戦争は金になる。その魂胆を庶民はきちんと捕捉しておく必要がある。(了)

ルールはこちらが決める

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天皇陛下の御所だろうが例外はない」――。これが対等の国に対する態度か。米国の警備責任者は米トランプ大統領天皇、皇后両陛下と会見するにあたり「大統領が行くところは事前にすべて我々がチェックするのがルールだ」と主張、御所への事前の立ち入りを要求してきたのだ。これでは日本はまるっきり植民地扱いである。ここまで侮辱され黙っているならもはや独立国ではない。安倍首相が「断固として立ち向かう」のは北朝鮮ではなく米国のこうした非礼な態度だろう。

 

●当日までもめた陛下との会見

米国のこの無礼な申し出は10月、トランプ大統領の訪日が固まった段階で打診があった。当然、日本はすぐさま受け入れられないと突っぱねたが、米国側は執拗に要求を繰り返してきたという。結局、やり取りは天皇陛下とトランプとの会見が予定されていた6日の前日まで続き、日本の外務省幹部が「日本は独立国だ。このままでは(天皇陛下との)会見は成立しない。流れても仕方ない」とトランプ氏の同行筋に通告し何とか、おさまった。米国側もようやく日本側が本気であることを理解し会見の当日の朝、「今回は例外として認める」として折れたのだった。
それにしても「例外」「認める」とは随分、高いところからの物言いではないか。しかも、それだけではもの足りないらしく「今回は例外として認めるが、日本側の態度は残念だ」とつけ加えた。
いったい米国は何様のつもりか。天皇陛下がいらっしゃる御所に米国の警備担当者レベルが土足で入り込めるはずがないではないか。国事行為はもちろん国守りの御祭事も執り行う神聖な御所に「自分たちの国のトップが行くから」との理由で勝手に入り込み、チェックするなど許されると本気で考えたのだろうか。しかもご丁寧に「それが我々のルールだ」とは……。日本が米国のルールを無理強いされる覚えはない。


●日本の国柄を理解せよ。
米国側には、神を中心として成り立つ日本の国柄と、現人神(あらひとがみ)である天皇陛下という存在に対する敬意と理解が根本的にかけている。学ぶ気配もない。ただ、一方的に自分たちのルールを押しつけてくるだけだ。よく覚えておいて欲しい。これこそが米国の正体である。
日本もそろそろ目を覚ますべきだ。米国という傲慢な国が日本をどう見ているかということを理解すべきた。中国が脅威なら、北朝鮮が怖いなら、自分が強くなり自衛する力を養えばいいではないか。ぶざまに媚びへつらい、戦闘機を何機も買って米国に守ってもらう必要など何もない。
 安倍晋三首相とトランプ氏が蜜月関係にあることから、トランプ政権の中には「日本に強く要求すれば最終的にいいなりになる」(米ホワイトハウス関係者)と高をくくっている連中も多い。それを証拠に米国の警備当局はクレムリンの大統領の居住スペースへの事前検査を要求するようなことはしてない。日本だから無理を承知で要求してくる。要は日本はバカにされているのだ。その事実を正確に理解し、日本は米国との関係を見直すべき時である。  (了)

軽く1丁あがりのトランプ訪日  


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 「スコアは国家機密だ」――。トランプ米大統領とのゴルフを終えた安倍晋三首相は記者団にこう語り笑いを誘った。しかし、安倍首相が本当に国家機密にしておきたかったのは翌日の貿易不均衡を巡るトランプ大統領とのやり取りだっただろう。北朝鮮情勢が緊迫してきたことを理由に防衛力強化を迫られ、弾道ミサイルなどの購入を約束させられたのだ。弾道ミサイルなど日本の防衛上、何の意味も持たない。ゴルフをおつき合い頂いた見返りに何千億円もの無用の長物の購入とは……。ゴルフがやりたければ国家予算を使わずに自分の金でやって欲しい。

 6日、トランプ米大統領安倍晋三首相の共同記者会見では、対日貿易赤字を巡る立場の違いが鮮明になった。トランプ氏は「日本の貿易赤字を減らしていかなければならない」と日米の貿易不均衡問題に言及、さらに日米自由貿易協定(FTA)の直接的な言及は避けたものの「公平で自由で互恵的な貿易関係を築いていきたい。平等で信頼できるアクセスが米国の輸出品に対して必要だ」と強調した。要は「今後、日本に対して貿易不均衡を是正するための具体的な措置を要求していく」ということだ。「こんなことなら、昨日のゴルフは何だったのか」。安倍首相はそう言いたかったに違いない。
 
●完敗の日本
 しかも、話はここで終わらなかった。さすがトランプ米大統領は役者が何枚も上手だ。一気に「安倍首相は様々な防衛装備を米国からこれから購入することになるだろう」と畳みかけ、「そうすれば上空でミサイルを打ち落とすことができる」と言及、安倍首相を追い詰めたのだった。渋々、安倍首相も「北朝鮮情勢が厳しくなるなかで、日本の防衛力を質的に量的に拡充していかないといけない。(弾道ミサイルやF35戦闘機を)米国からさらに購入することになる」と応じざるを得なかった。
 米国にしてみれば「毎度あり」。日本側とすれば完敗なのである。米国がたてつけた北朝鮮情勢の緊迫を理由に、まんまとはめられ、必要もない高額な武器を買わされたのだった。だいたい日本の「上空でミサイルを打ち落とす」必要がどこにあるのか。そのまま通過させればいいではないか。打ち落として欲しいのはむしろ米国の方だろう。日本に金を出させ、防衛力を強化させたうえで、米国を狙って発射された北朝鮮のミサイルを打ち落として欲しいだけのことだ。
 そもそもだ。米国と北朝鮮の小競り合いに日本が入っていく必要は全くない。北朝鮮は日本など相手にしてもいない。わざわざ米国の尻馬に乗り騒ぎ立て、大国気取りで北朝鮮を非難する。その実、欲しくもない武器を「いらない」とすらいえない弱虫の日本など、北朝鮮の敵ですらないのだ。
 この後、トランプ米大統領は、1強体制を盤石にした中国の習近平氏との対決が控える。今回の訪日は、その前にまずは軽く日本を平らげただけのこと。「1丁上がり」。そんな声が聞こえてくるようだ。(了)

外交は死んだのか

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 もはやこれは外交とは呼べない。11月5日午前10時40分すぎ、トランプ大統領がメラニア夫人とともに着陸したのは成田空港でも羽田空港でもない。米軍横田基地だった。しかも午前11時すぎから始まった歓迎式典とスピーチも基地の格納庫。いったい人様の家を正式に訪問する時にいきなり勝手口から入ってくるバカがいるだろうか。ジャージ姿で台所で演説する常識知らずいるだろうか。なのにそれを国賓級の扱いで迎え、髪振り乱して孫まで接待する。そんな国が世界から尊敬されるはずはない。

 
●陛下の前に米兵
「間もなく着陸する。偉大なる兵士たちに会うのを待ち切れない」。着陸の約1時間前、トランプ大統領が専用機「エアフォースワン」の中でツイッターでつぶやいたのはこの言葉だった。横田基地では米兵と自衛隊トランプ大統領を迎えたが、ツイッターでつぶやいたトランプのこの「兵士」とは米軍兵士であることは間違いない。今回、日本ではトランプと天皇陛下の会談も会見も用意されているにもかかわらず、自国の兵士に会うことを最大の楽しみとして掲げるとは無礼千万である。
 しかも、到着後、最初のスピーチ時に羽織っていたのは兵士たちから贈られたジャンパー。横田基地には早朝から軍関係者や報道陣が集まり、トランプ氏の到着前からすでに生バンドの演奏が行われるなどパーティーのような盛り上がりだったが、そこに得意満面のトランプが、いきなりジェット機で乗り付け、我が物側でスピーチするとはいったいどういうことか。日本を訪問したならまず日本の首相に挨拶をしてからもの申すのが筋というものであろう。いったいいつから日本は米国の植民地になったのだろうか。

 

●アラベラちゃんに「アッポーペン」
 さらに情けないのは安倍首相だ。トランプ大統領につきっきりでゴルフだお食事だと必死でお相手。しかも、トランプ氏の娘のイバンカ氏まで日本食材を使ったフランス料理でもてなし、孫娘アラベラちゃんにも粗相があっては大変とばかりに、アラベラちゃんお気に入りのタレントのピコ太郎を呼び、相手させた。
 いったいこの国の誇りはどこにいってしまったのか。このような「媚びへつらい」をもはや外交とは呼ぶことは難しい。ぶざまなまでに米国にかしづき、必死で機嫌をとりながら、その米国の威光で北朝鮮に「圧力」をかけるという。笑止千万。滑稽としかいいようがない。(了)

北朝鮮との戦争、始めました

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    分かってはいた。しかし、言われてみればやはり衝撃だ。9月19日、小野寺五典(いつのり)防衛相の記者会見での発言。北朝鮮を巡る有事対応について「緊急の場合の事後承認制度がある」と語ったのだ。その言葉の意味は、つまりこういうことだ。「北朝鮮の中距離弾道ミサイルが飛んできたので、国民を守るために撃ち落としておきました。戦争?ああ、それももう政府の判断で始めてます。これも国民を守るためです。国民のみなさんは、ご承認だけお願いします」
 
北朝鮮のミサイル迎撃、事後承認で
恐ろしいことだが空想ではない。小野寺防衛相の発言は安全保障関連法で可能となった新任務を行う場合の国会承認について、「事後承認制度があるから大丈夫」との見解を示した。何が大丈夫なのか? 要するに北朝鮮が米国のグアムに向け中距離弾道ミサイルを発射した場合、米国と同盟関係にある日本が国会の事前承認がなくても北朝鮮のミサイルを米国に代わって撃ち落とすことは法的に問題はないというだけのことだ。国民には後から知らせ、承認させるだけで法的には済む。
 通常なら中距離弾道ミサイルを撃ち落とすような高度に政治的な判断は国会での承認を原則とする。ところが実際は非現実的だ。ミサイルが飛んでくるような緊急事態時に、えっちらおっちら国会議員を召集して議論し、最終的に「そういうことなら、ミサイルは撃ち落としますか」。そんな悠長なことをしている余裕はない。何せ、日本の上空をミサイルが飛ぶ時間は数秒なのだ。
 従ってミサイルを撃ち落とす時は何時だって緊急事態なのである。「事後承認」のロジックは常に成立する。国会に諮らず政府のほうで勝手に撃ち落としても「緊急事態だったから」と、後から承認を求めれば法的には問われることはないのだ。だから小野寺防衛相は「大丈夫」と述べた。たまたま今回は9月28日招集の臨時国会冒頭に衆院を解散、選挙に突入するという事態が想定され「こんな時に……。もし、北朝鮮からミサイルが飛んできたらどうするのか?」という質問が投げかけられたから明白になった。

 

●撃ち落とせば北朝鮮は黙っていない
 ただ、日本として法的に問題がなくても「ではそれで安全か」となれば答えは違ってくる。なぜならミサイルを撃ち落とされた北朝鮮にとっては大問題だからだ。北朝鮮が米国をめがけ本気で撃ち込んだミサイルを日本が米国の代わりに途中で撃ち落とすのである。ただで済むはずはない。北朝鮮にとって日本の行為は脅威であり戦闘行為と映る。
何せ朝鮮にとって米国は敵なのだ。「日本など単なる米国の番犬だ」と見ていたとしても、米国に命じられ誰よりも先に北朝鮮に噛みついたとしたら、もはや放ってはおけない。それを政府は分かっているのだろうか。
 日本政府もバカではない。理解はしている。問題は断れるかだ。米国が正式に「次に北朝鮮からミサイルが飛んできた時は撃ち落とせ」と要請してきた時にはねつけられるかだ。「集団的自衛権」を日本政府が認めてしまった今、論理的にはかなり難しい。米国に対し「同盟国だからそうしたいのは山々だが、自国の防衛しか認められていないので無理だ」とは言えない。日本と密接な関係、つまり同盟関係にある米国が攻撃されることは、日本の存立が脅かされることと同じであるとする「存立危機事態」という考え方に立てば、米国を守ることは日本を守ること、「集団的」に「自衛する」ためのミサイル迎撃要請は断れない。
 こうなれば「集団的自衛権」は、「米国に日本を守ってもらう」という都合のいい話だけでは済まなくなる。こと北朝鮮との問題においては極めて日本が不利だ。米国の盾になることを常に求められる。そして、それこそが米国の思惑であった。最初から北朝鮮問題解決のため日本の「集団的自衛権」を認めさせ、米国の身代わりにする作戦だったのだ。安倍政権は、まんまとその罠に引きずり込まれてしまった。

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日本海では使い走り
 今、日本海自衛隊が米国に何をさせられているか。それを紹介すれば、いかに日本が屈辱的な立場におかれているのか、ご理解頂けるかもしれない。海上自衛隊北朝鮮の弾道ミサイル防衛(BMD)を担う米イージス艦に給油をさせられているのである。しかもその事実を国民に明かにすることも許されない。なぜなら「米国の行動に関わる」(河野克俊統合幕僚長)からだ。ささいなことでもそれを公表することで米国の行動を北朝鮮に気取られてしまっては大変、だから明かせないのだ。
 しかし考えてみて欲しい。米イージス艦に日本がせっせと給油すれば、北朝鮮から「米軍と自衛隊は一体」と見なされても仕方がないではないか。しかもそれほど日本がリスクを冒して米国に尽くしても、トランプ大統領は決して感謝はしない。問題は「米国民は大丈夫」かどうかだからだ。
 米国に気に入られたい、それだけ日本国民を危険にさらす、今の安倍政権に本物のプライドはあるのか。使い走りさせられ、揚げ句に北朝鮮からは敵とみなされ攻撃される可能性はないのか、それすら考えようとしない。
はっきり言っておく。日本が攻撃されたからといって米国は決して北朝鮮を攻撃することはない。仮に米国が北朝鮮を攻撃すれば、日本と同じように今度は米国が攻撃されてしまうからだ。その現実を見つめなければならない。(了)

 

 

聖子が便器の水を飲む日

 

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 第3次安倍内閣内閣改造で最大のサプライズの1つは野田聖子の入閣であることに異論はないだろう。ポスト安倍への意欲を隠さない異分子を身内に取り込み、「安倍下ろし」の芽を摘む安倍側の作戦に、あえて乗った格好の野田。手をこまぬいていれば安倍から岸田文雄への禅譲(ぜんじょう)※の流れは止められないとの読みが働いたことは間違いない。ならば、国務大臣の名に恥じぬ仕事をすることだ。帝国ホテルの便器の水を飲み干したあの日を思い出せ。

 
●家の掃除もせぬお嬢様
1983年、上智大学を卒業、得意の英語を生かそうと帝国ホテルに入った野田は新人教育係の先輩の行動に度肝を抜かれた。新人研修で客室清掃の指導を受けた時のこと、便器の清掃を終えた先輩が便器の水をコップにくんで飲んでみせたのだった。
野田と言えば、大蔵次官から参院議員を経て衆院当選9回の故野田卯一元建設相を祖父に持つ生粋のお嬢様である。それまで家の掃除すらしたことがなかったシンデレラだ。なのに、それがいきなり便所掃除となれば大変だ。素手でつかんだスポンジを便器に入れた瞬間、思わず吐いてしまった。
 しかし、さすがである。野田聖子はくじけなかった。数カ月後、自分であらった便器の水を先輩の前で飲んだ。その後は国際営業の仕事にも抜てきされとんとん拍子。まだ女性がビジネスの世界で受け入れられない時代に若くして頭角を現していった。
 その気骨は政界に転じても発揮される。最たるものが2005年、小泉政権が進めた郵政民営化への反対だ。野田は閣僚史上最年少の37歳で郵政相として入閣した経験もあって日本の郵便事業への造詣はなかなか深い。「日本の郵便の仕事は民間に任せず国で守るべき」との主張を貫き、自民党を離党した。その後、自民党に復党を果たすが信念を曲げない性格は変わらず、安倍に対してもはっきりとものを言ってきた。
 その野田聖子の入閣なのだ。見ものである。安倍から入閣の打診があった際、総務相を自ら指定したというから、その仕事ぶりには期待したい。

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●国を忘れた仲間主義
ただ、入閣直後の野田の「卑怯(ひきょう)発言」にはやや違和感を感じる。その内容とは「非常に苦しんでいる時に、いたずらに今いる(安倍晋三自民党)総裁を仲間が批判して政権を弱くするのは卑怯(ひきょう)なことだ」というもの。
さっと聞くと野田らしい潔い発言のようにも響く。しかし、よく考えて欲しい。なんと実に身びいきで、身勝手な発言であることか。国政を預かるトップの人間、つまり安倍が順境にあろうと逆境にあろうと国民には関係のない話である。是は是、非は非だ。国を危うくする判断なら仲間であっても正々堂々、否というべきである。「仲間なんだから」という発想は、安物の学園ドラマでもあるまいし、さっさと捨ててもらいたい。
 野田氏の発言から見えてくるのは、政治家の完全な国家意識の欠如、緊張感の欠落である。国務大臣である以上、日本国の「国務」をゆだねられている身であることを肝に銘じてもらいたい。
 今、安倍政権にまつわる国民の最大の懸念は憲法改正の動きである。加計学園問題などで政権への支持率が危険水域とされる30%を割り込むようなことがなければ、安倍は今秋の臨時国会改憲原案を提出する予定だった。そして来年の通常国会で発議し、その秋には国民投票に持ち込み、悲願の憲法9条改正という運びだった。この改憲カレンダー通り進むべきか、進まざるべきか――。安倍は今、ハムレットの心境にあるのかもしれないが、それは国民も同じである。
 日本は戦争をしない国。その箍(たが)をいったん外してしまえば後は奈落だ。国民も憲法改正議論を固唾をのんで見守っている。野田も仮にも一国の宰相の座を狙うと公言するなら浅薄な雑音を一気に飲み干してもらいたい。かつて帝国ホテルの便器の水を飲み干した時のように。(敬称略)【了】

 

禅譲(ぜんじょう)→天子(ほとんどの場合、皇帝)が、その地位を血縁者でない有徳の人物に譲ることである。実際には、歴史上禅譲と称していても譲られる側が強制して行われていることが多い。また、天子に限らず、比喩的に地位を平和裏に譲ることを禅譲、無理やり奪うことを簒奪と呼ぶことがある。『ウィキペディアより』

東電よ、奇跡を知れ

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原子力規制委員会が6月28日、東京電力の福島第1原子力発電所を取り囲む地下の「凍土遮水壁」を全面凍結させることで大筋合意した。これまで凍結させずに残していた1カ所を凍結させ、福島第1原発を完全に「凍土遮水壁」で取り囲む。この「凍土遮水壁」のおかげで原発への地下水の流入は大きく抑制される。これで事故処理は1歩前に進むと専門家はいう。しかし果たしてそれは本当か?違う。逆だ。全く逆だ。

 

●この瞬間にも放射能水は漏れる
130トン――。たった1日で福島第1原発から排出される汚染水の量だ。2011年3月に起きた事故で、冷却不能となった核燃料(デブリ)が原子炉を突き破って落下。そこに地下水がどんどん流れ込み、結果として放射性物質を含んだ汚染水が1日130トン排出されているのだ。2トントラックで65台分、ドラム缶で換算すると650本もの汚染水がたった1日で増えていく。放射能を含んだ大量の汚染水が今、この瞬間にも流れ続けているわけだ。
この問題にどう対処すべきなのか。政府が出した答えが、「凍土遮水壁」。福島第1原発に地下水が流れ込まないようにするため、海側遮水壁で深さ30メートルの鋼管約600本を地下に打ち込み、この鋼管を凍らせることでその周辺の土も凍結、壁をつくってしまうやり方だ。日本ならではの高い建設技術なのだが、どこか幼稚な発想のようにも思える。

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●冷えなくなる核燃料(デブリ
もともと「凍土遮水壁」というのは、トンネルを掘削する際の技術だ。原発への応用については「効果は疑問」との見方は少なくない。ただ、いったん効果のほどは置くとして、仮にうまく地下水の流入をシャットアウトできたとしても、果たしてそれは良いことなのか。東京電力によると全面凍結により凍土遮水壁が完成すれば、地下水の流入は100トン以下に減らせるという。これが良いことなのか。これは疑わしい。
確かに地下水の流入がとまればその分、放射能を含んだ汚水の量は抑えられる。当然だ。しかし、今度は反対に核燃料(デブリ)の問題が浮上する。ここが分かっていない。せっかく大量の地下水で核燃料(デブリ)が冷やされ、小康状態を保ってはいるのに、地下水がとまれば再び息を吹き返す可能性があるのだ。
福島第1原発が核爆発を免れたのは全くの天恵だったと言っていい。電源装置の喪失で冷却装置が作動しなくなった場合、通常なら異常な高温状態となった核燃料(デブリ)が原子炉内で爆発しても仕方がない。菅直人首相(被災当時)が狂ったように東電の現場に要請したベント(空冷)くらいでは本来、とても追いつかない。
今回、核爆発を免れたのは奇跡なのだ。たまたま原子炉が爆発する寸前で底にヒビが入り、そこから核燃料(デブリ)が溶け落ちた。おそらく核燃料(デブリ)は地下に到達したところでとまり、そこに冷たい地下水が流れ込んでいるはずだ。福島第1原発の下にはもともと地下水の水脈があり、これが自然の冷却装置として機能しているのだ。恐ろしき偶然だと言える。
なのに政府は「凍土遮水壁」で、「天然の冷却装置」の作動をとめる。核燃料(デブリ)を冷却していた地下水をとめる。本当に大丈夫なのか。いったん落ち着いた核燃料(デブリ)が暴れ出しはしないか。
そもそも今、デブリがどこにあるのか、固まっているのか、飛散しているのか、どういう状態にあるのか、何1つ分からない。完全に人知は越えている。なのに小学生の思いつきのように「きたない水がでるからとめちゃう」と言って、せっかくの天恵である地下水を遮ってしまって大丈夫なのか。
人間の知恵などいかに限定的か。それを思い知るべきだ。おそらく深さ30メートル程度の壁で地下水の浸入が計画通り止まるとは思えないが、こうした思いつきの対処方法から試していかねばならないほど、原発の前に人間は無力なのである。
まず謙虚に考えることだ。そこから、すべては始まる。(了)

 

 

 

 

 

 

 

 

炭素減らして放射能漏れの愚

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バカにしてる――。そうでなければ国民を無視している。6月9日。経済産業省が国のエネルギー基本計画に将来の原子力発電所の新増設の必要性などを明記する方針であることが明かになった。その前々日、茨城県大洗町日本原子力研究開発機構で大量のプルトニウムが漏れ出す事故があったにもかかわらずだ。日本の最高峰の原子力技術を持つ原研で信じられないミスがあったその直後に、原発の増設を発表するとは、国民をバカにするにもほどがある。

 

●2万超ベクレルのプルトニウム
「真剣に反省し、手順を考え直すべきだ」。7日。原研の事故を受け原子力規制委員会の田中俊一委員長はこうコメントした。もっともだ。ウランプルトニウムが入った保管容器から放射性物質が漏れたのだ。5人の作業員の中で最も多い人の肺からは2万2000ベクレルのプルトニウムが検出された。国内最悪の内部被曝である。5人はそのまま医療機関に搬送されたが、これだけの被爆があれば健康に影響がないはずはない。「5年、10年すればそれが顕在化する可能性がある」というが、そんな生易しいものであるはずはないことくらい素人でも分かる。
 事故は初歩的なミスだった。保管容器の内部の状況を確認するため、蓋を留める6本のボルトのうち4本を外したところでなかのビニール袋が膨らみ、それでもなお残りの2本を外したため、ビニール袋が破裂した。異変を感じた段階で作業をストップしておけば、事故は防げた可能性が高い。残念なミスだ。
本来、このようなミスは起こりえない。しかし、起きた。つまり、事故は常に起きるのだ。「人間はミスを犯す動物」。これが基本だ。なのに本来起こるべきでない事故は、起こらないものと考え、原発を増設するなどもってのほかだ。

 

●米国抜きのパリ協定に拘泥(こうでい)
経産省の理屈は原発増設の理由を「地球温暖化対策の新枠組みである『パリ協定』を受けた計画」と説明、温暖化ガスを2050年までに80%削減するには原発の増設が不可避だと主張するが、これもおかしい。パリ協定など6月1日にトランプ大統領が、ホワイトハウスで声明を読み上げ、離脱すると表明したばかりではないか。米国抜きのパリ協定などなんの拘束力もない。わざわざ形骸化したパリ協定を引き合いに持ち出し、そのために原発を増やすなど、これまたセンスがない。
そもそもトランプ氏が指摘するように温暖化ガスと地球温暖化の因果関係は不透明な部分も多い。仮に温暖化がガスのせいだとしても、それを抑えるために放射能漏れを定期的に起こす原発を回すのは本末転倒だ。温暖化ガスと放射能のどちらが地球環境に悪影響を与えているのか、少し考えれば分かりそうなものだ。
今、政府は国民の声を聞く耳を失っている。これだけ原発リスクが赤裸々になるなかで、あえてそれに挑戦するように原発推進路線を打ち立てる。国民不在の国づくりなどあるはずはない。このタイミングで原発推進とはあまりに惚(ぼ)けた阿呆(あほう)ではないか。     (了)

 

今度は野村不動産ですか

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話が違うではないか。日本郵政だ。「経営の効率化が遅い」「グローバル化が進んでいない」。だから、プロが稼げる体質に転換するのではなかったのか。なのに儲けるどころか、2017年3月期の連結最終損益は400億円の赤字に転落した。2007年の郵政民営化以来、初の赤字だというが、事は国民の財産の話である。「こんなこともあるさ」ではすまされない。


●ドブに捨てた4000億円
「過去のレガシーコスト(負の遺産)を一気に断ち切る」――。4月25日の日本郵政の記者会見。長門正貢社長の言葉は何だか勇ましいが、こんな言葉を田舎の老人たちが理解できるだろうか。いいことなのか、悪いことなのか。それすら分からない。結論を先に言おう。とんでもないことだ。国民の資産を4000億円もドブに捨てたのだ。まず国民に詫びろ。
ことの発端は2015年、日本郵便を通じてオーストラリアの物流子会社トール・ホールディングスを6200億円で買収したこと。当時の社長は東芝出身の西室泰三氏で時価総額の1・5倍の価格で買収した。「少し高かった」と長門氏は言うが、その出所はゆうちょ銀行とかんぽ生命の含み益だ。いわば庶民が託したお金を回して蓄えたお金を「まんまと外資にさらわれた」のだ。「少し高かった」どころの話ではない。
今回はそのとんでもない割高な買い物のツケを一気に払った。本来なら20年かけて償却するはずだったトールのブランド価値、つまり「のれん代」を一括で支払った。だから赤字になったのだ。ただ、それだけのことだ。20年ローンで買ったバカ高い買い物のツケを1回払いで支払った。それを「レガシーコストを断ち切る」と見栄を切ってみせた、それ以上の意味はない。
それにしても自分たちで作った借金を国民のお金で精算するとはいったいどういう了見か。長門氏は「責任をとって」6カ月間、20%の役員報酬を返上するというが、例え1カ月の給与が500万円としても、1カ月で100万円。その6カ月分で600万円。個人としては大きなお金だが、あれだけ「リスクが高い」とされたオーストラリアの物流会社を高値づかみし、4000億円をもの損を出しておきながら600万円の減給でカタがつけられるはずはない。ことは国民のお金の問題なのだ。

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●まだまだ買う
ところが、長門氏はまだまだ買うという。今、着手しているのは野村不動産ホールディングス(HD)の買収だ。いったいいくらになるのか、その詳細は明らかになっていないが、1000億円や2000億円の単位ではすまない買い物になることだけは間違いない。そもそも野村不動産HDなど株価は高いが会社にはみるべき資産など何もない。これといったオフィスビルも商業施設ももたない。あえていうなら東芝不動産だ。東芝の経営が厳しくなったおりに、取得したもので、これとてピカピカの資産を持っているわけではない。それなのに不動産に手を出してどうする。日本郵政の手に負える代物ではない。
長門社長は「マネーが不動産に向かっているリスクがこの業界にはある。その点を十分に勘案して分析しないと危ない」というが、この言葉の意味もまたよくわからない。「マイナス金利だからなかなか儲けられない。そう考えると不動産部門は比較的、儲けられる。他のみんなもお金を不動産に投資して儲けている。だから日本郵政も、不動産に投資して、そこできっちりと儲けないと、稼ぎ損なう。稼ぎ損なったら大変だから野村不動産を買う」とそういいたいのだろうか。それなら、そう言葉でいうべきだ。金融のプロのように振る舞いながら、難解な言葉で庶民をけむに巻くのは許されない。なぜなら、日本郵政は一般の民間企業とは違うからだ。日本郵政にかかわる庶民にきちんと分かる言葉、丁寧に説明する責任があるのだ。ステークホルダーは庶民だ。投資家ではない。
それはそれとして、このご時世で野村不動産の買収とは「筋の悪い投資」ではある。「プラウド」に代表されるマンション事業も表面はよくても内情は火の車。会社は認めないが、在庫はつみあがり、裏では値引き販売のラッシュを続けている。おそらく長門氏はそれも知らないはずだ。不勉強を難解な言葉で糊塗※(こと)し、庶民の金をドブに捨て続けることだけはご勘弁願いたい。(了)

※【糊塗】(こと)…一時しのぎにごまかすこと。その場をとりつくろうこと。 「うわべを-する」 

 

日本郵政が踏んだ東芝の轍(てつ)

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日本郵政が大変だ。2015年に買収したオーストラリアの物流会社の業績が振るわず17年3月期の連結決算で数千億円規模の損失を計上するという。場合によっては最終利益のかなりの部分が吹き飛びかねない。民間から人材を招聘(しょうへい)、その揚げ句の巨額赤字は単なる経営判断のミスでは済ませられない。ことは国家の問題なのである。
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毎日新聞日本郵政グループの業績推移」より
日本郵政が巨額損失
問題のオーストラリアの物流会社とは「トール・ホールディングス」。オーストリアでは最大の物流会社で2015年、6200億円もの巨費を投じて買収した。民営化していなければとても考えられない大型買収で、当時は利益率が低い国内の郵便事業を補完するための攻めのM&A(合併・買収)とされた。
 皮肉なことに当時の社長は西室泰三社長、東芝の元社長である。買収を発表した2015年2月の時点で「トール・ホールディングスは事業を補完できる最高のパートナー」と自画自賛、得意の絶頂にあったが、それがまるで噓のよう。わずか2年あまりで巨額損失の計上を迫られることになった。
 それにしても、「大枚はたいて買ったはいいが、蓋を開ければ経営を揺るがしかねない、とんだ金食い虫だった……」とは、どこかで聞いたような話ではないか。そう、西室氏の出身母体である東芝だ。世界の原発ビジネスを牛耳ろうと社運をかけて傘下に収めたウエスチング・ハウス(WH)に完全に経営をむしばまれてしまった東芝の二の舞を、日本郵便が演じてしまったのである。

 
※2017年3月14日 東芝の綱川 智(つなかわ さとし)社長【写真】

●ウエスチング・ハウスの二の舞
 そもそも最大手とはいえオーストラリアの物流会社に6200億円とは「あまりにも高い買い物」という声は当時からあった。鉄鉱石など資源安を背景としオーストラリア経済の低迷で、その高値づかみを修正せざるを得なくなったわけだが、これも全く東芝のWH買収と同じ構図である。
 ただ、東芝日本郵便が違うのは、東芝は倒産しても国民は悲しみはしても困りはしないが、日本郵便が揺らげば大変な痛手を被るということだ。つまり、国富が痛むのである。いくらインターネット時代だとはいえ、郵便事業は日本になくてはならない大切なサービス。都会に出た一人息子を心配する田舎の母親に、息災であることを知らせる唯一の手段なのだ。

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●国民はただ泣く
 この日本列島の動脈を痛めてはならない。泥船の原発企業に社運をかける巨大M&A(合併・買収)をしかけるようなセンスのない東芝程度が、手を触れてはならない国の宝なのだ。1民間企業の経営者の蛮勇に翻弄されてはならない。
 なのにこの国はそれを許した。推奨すらした。民間企業の出身者に経営をゆだねることこそ、グローバル化の流れにそった最善の方策だと言い続けた。それがこの結果だ。
いったい東芝の西室氏は責任をとってくれるのか。3000億円、場合によってはもっと膨らむ可能性がある損失を東芝や西室氏が補塡できはしない。結局、そのツケは国民に回る。そして、国民が泣くのである。(了)

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※(参考)西室泰三(にしむろ たいぞう)氏 経歴

誕生日:1935年12月19日
年齢:81歳
出身地:山梨県都留市
出身校:慶應義塾大学経済学部
職業:実業家

経歴
2000年6月東芝代表取締役 取締役会長
2005年6月相談役。
2005年6月株式会社東京証券取引所取締役会長
2010年6月東京証券取引所取締役会長を退任
2010年11月慶應義塾評議員会議長(任期:4年)
2013年6月日本郵政取締役兼代表執行役社長
2015年レジオン・ドヌール勲章オフィシエ受章
2015年4月ゆうちょ銀行取締役兼代表執行役社長
2015年7月東芝不正会計処理問題が発覚
2016年2月検査入院開始
2016年3月日本郵政代表執行役社長を退任。東芝相談役を退任し新設の名誉顧問に就任
2016年6月日本郵政取締役、日本郵便取締役、ゆうちょ銀行取締役、かんぽ生命取締役、各任期満了退任