琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

銀行潤い、国民泣く

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日銀が危ない。市場に回るお金の量を増やすため、民間の銀行が持つ国債を日銀が買い取り、お金に換えてきたのだが、それが日銀の重荷になっているのだ。日銀から民間銀行に回したはずのお金は、庶民に回されることなく再び日銀に逆流、これが日銀の経営を痛めるという負のスパイラルが生まれる可能性が出てきた。


●国民に回さず日銀に貯金
どういうことか。政府は国民にお金を回すため、このところ民間銀行の国債を日銀が買い取るという方法を多用している。簡単に言うと民間銀行が持っている国債という紙切れを、日銀が引き取り、その代わりにお金を民間銀行に渡しているのである。つまり「紙切れ」と「お金」の交換である。
 紙切れを引き取ってもらい、その代わりにお金をもらった民間銀行は、そのお金を本来なら国民に回せばいい。国民は楽になるし、銀行だって利子を稼ぐことができる。
 ところが民間銀行はそうはしない。国民に回さずに、日銀に戻しているのだ。せっかく国債を引き取る代わりに、お金を渡してくれた日銀に対して、「いやいや。こちらでは使いませんから、そちらで預かって下さい」と再び預け直している。
 こうやって民間の銀行から日銀に返ってきたお金は378兆円(2018年3月末)。これが日銀の当座預金に眠っているのだが、問題はただ眠っているだけでないことだ。利子がつく。もともと日銀が民間銀行に回してくれたお金だとはいえ、それを民間銀行は日銀に預け直しているわけだから当然、利息が発生するわけだ。これが日銀にとって重荷になっている。

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●日銀の重荷は国民の重荷 
日銀の重荷になっているというなら、それは国の重荷。つまり国民の負担である。国民に負担を強いながら民間銀行に利息を払っているのだ。どこかおかしくはないか。
 政府は今後、物価を引き上げ、金利も引き上げていく方針。そうなれば日銀が民間銀行に支払う利息も増える。国民の負担をどんどん増やしながら、民間銀行の稼ぎを増やす。どうなっているのか。
 金融緩和は国民を豊かにするために始まったのではなかったか。緩和で生まれたお金が国民に回らず、それが負債として水膨れし、民間銀行を太らせていくなら本末転倒もいいところだ。(了)

日本は米国の植民地です

    行く意味があったのだろうか。安倍晋三首相の訪米である。北朝鮮問題では従来通りの「圧力の維持」で進展なし、その一方で18日に米国が発動した「鉄鋼・アルミ製品の輸入制限を外すように」という日本の要求は突っぱねられた。まったく成果ゼロ。今後、日本の市場開放を議論することになる閣僚級会合の設置もねじ込まれ、むしろマイナス。国内での支持率低下を外交で取り戻す腹づもりだったのだろうが、今回もまた「国を売る」結果となった。

 

●目的は支持率アップ
いったい安倍氏は何をしに行ったのだろう。国内で財務省事務次官のスキャンダルで大揺れに揺れているというのに。ここはじっくり腰を据え、国政に専念すべきところだった。トランプ氏とゴルフ場で渡り合い、「森友学園問題」や「加計学園問題」で低下した支持率をこれで回復させようとでも思ったか。もはや国民はそこまでバカではない。
北朝鮮を巡る一連の動きを見ても日本が全く蚊帳の外に置かれ、軽視されていることはどうみても明らかだ。「米国と100%一致」を繰り返す日本などトランプ大統領が相手にするわけはないではないか。「日本は米国の植民地です」と宣言しているようなものだ。何をしても何を決めても従順で「100%一致」というような国など交渉する必要はないではないか。
それでも女々しく追いすがる安倍。トランプ氏とのゴルフで、安倍氏は数字やキーワードを書いた英語のカンニングペーパーをポケットにしのばせ、時折をそれを見ながら談笑してみせたというが、大丈夫か。いったい何を決めてきたのだ。


●成果はマイナス
今回、最も大きな安倍の失敗は鉄鋼・アルミの輸入制限を米国から突っぱねられたことだ。EUも韓国も除外されているのに、なぜ、日本だけ輸入制限をかけられのか。何時間かけてゴルフをしても、そんなことですら譲歩を引き出さなければわざわざ行った意味がない。これが安倍の実力だ。
しかも、今後の通商問題を議論する閣僚級の会合の設置が決まった。これは日本の貿易を考えるうえで極めて重要だ。今後、この会合が開かれる度に日本は米国に譲歩を迫られるだろう。そんな負のシステムの設置を安倍はねじ込まれてきたのだ。つまり、また国を売ったのだ。
考えれば当然だ。政権の足元が揺らいでいるのに、米国のような強国と台頭にやり合えるはずはない。国を売り、虚飾の「日米蜜月」を演出してみせただけ。とんだ茶番に今回も国民の税金が投入されただけのことだ。 (了)

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18日、米南部フロリダ州パームビーチのトランプ・インターナショナル・ゴルフ・クラブでゴルフを楽しむ安倍晋三首相とトランプ米大統領(内閣広報室提供)

 

ジャパンファーストとなぜ言えぬ(5)〜罪状は国を売った罪だ~

「私が全責任をとります」。政治家や官僚がよく口にする言葉だ。しかしこの「責任をとる」という言葉、実はかなりくせ者だ。「責任をとる」って何?いったいどうやってとるつもりなのか。まさか、辞任をもって責任をとったと言うつもりじゃないだろうな。
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●「モリトモ」の国税庁長官辞任
9日、財務省の前理財局長の佐川宣寿国税庁長官(60)が辞任した。学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる混乱の責任をとったという。佐川氏は売却契約を結んだ際の理財局長。売却手続きに問題はなく、交渉記録も廃棄したと国会で答弁し、批判を受けていた。疑惑が解明されないなかでの辞任は、安倍政権への打撃となるとの見方も強い。
   森友問題は国有地が8億円強値引きされて売却された経緯が国会で問われた。佐川氏は2017年に国会で「(交渉記録は)全て廃棄した」と説明。売却手続きにも問題はなかったと繰り返した。その後、財務省の内部文書が多数見つかり、野党から虚偽答弁との批判を受けた。

こうした騒動を巻き起こしながらも安倍政権を守り抜いた論功行賞で、佐川氏は2017年7月、国税庁長官に就任した。しかし、この国税庁長官の就任は相当の波乱ぶくみだった。国税庁長官の場合、そのポストにつく新長官は代々、就任記者会見を開くのが決まり。ところが佐川氏はそれを開かなかった。

    国税庁長官という徴税業務を担う国の最高機関のトップが、マスコミの前に顔すら出さず、国民への説明責任も果たさない傍若無人さは前代未聞。批判は渦巻いていたが、ついにここに来てこらえ切れず辞任となった。


●要は「国を売った」
それにしても、一般の人はよくわからないだろう。いったいこの問題の本質はどこにあるのか。事件が劇場型に展開していくためにマスコミはやたら「モリトモ」「モリトモ」と騒ぐが、何がそんなに問題なのかよくわからない。要するにこうだ。「国を売る」行為が問題なのである。
   安倍首相は自分のお友達である籠池泰典氏に国の財産を格安で払い下げたのだ。財務省の理財局というのは国の財産を管理するのが仕事。そのトップである佐川氏は安倍氏が国の財産を不正にお友達に安く譲る手伝いをし、その事実を隠蔽し、その見返りに国税庁長官のポストを手に入れた。最近、都内に1億円の自宅を建てたという。
   卑しいではないか。安倍氏にしても佐川氏にしても。国を守る立場の人間が反対に国を売る。そして私腹を肥やす。佐川氏は「丁寧な説明が足りなかった」というが、どう「丁寧に」説明してもらっても、国民は納得すまい。「時間をつくして丁寧に説明」すれば、国民は安倍政権の詐欺を「理解」するとでも思っているのか。

  9日、この問題を巡り近畿財務局の職員が自殺をした。公務員にとって上司の命令は絶対だからこの職員は安倍氏が国を売った事実の隠蔽に加担させられた。抵抗できなかった。そしてその事実が今、明るみに出ようとしている。すべてが明かになる前に命を絶ったのだ。
   しかし、重要なのはこの職員は命をかけて安倍氏を守ろうとしたのではないということだ。自分が犯罪者となり家族が辱めを受けることを良しとしなかった。守ったのは家族だ。安倍氏と佐川氏はこの末端の職員をここまで追い詰めた。
   安倍氏も佐川氏も辞任したくらいでは責任をとったとはいわせない。豚箱に入ってもらう。この自殺した職員のためにも罪を償って欲しい。罪状は「国を売った罪だ」。(この項おわり)

 

 

ジャパンファーストとなぜ言えぬ(4)~人の石垣が崩れる~

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人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり――。「人こそ城であり堀である、人を大切にしない国はやがて滅ぶ」という武田信玄の戒めの言葉だとされる。実際に信玄がそう言ったのか真偽は定かではないが、もし信玄が今の日本を見たら何というだろうか。きっとこう言うだろう。「人がこれほど貧しく捨て置かれた国は滅ぶ」と。

 

●労働者の取り分が減っている
 今、日本の企業はどこも過去最高益、株価もバブル崩壊後の最高値を更新中だ。なのに庶民の節約志向に歯止めがかからず、消費の「巣ごもり」は続く。こんなに景気はいいのに、節約だなんて、日本人はよっぽどケチな民族なのだろうか。
 その答えは「労働分配率」にある。これは企業が儲けたお金のうちの従業員の取り分の割合といった意味。今のように企業が儲かっているなら、当然、従業員の取り分、つまり労働分配率も上がっていなければならない。
 ところが、実態は違う。会社は儲かっているのに従業員の取り分は増えていない。それどころか減っているのだ。直近でデータのある2015年の労働分配率をみると74%。これは1994年以降で最低の水準だ。2000年と比べても9ポイントも低下している。会社はお金でジャブジャブになっているのに、それを実際に稼いでいる従業員には全く報いていない。庶民には使うお金が回ってきていないのだ。


●先進国でも最低水準
 では、企業はお金を従業員に還元しないでどうしているのだろうか――。ため込んでいるのである。日本企業の付加価値のうち最終的に企業に残る比率(内部留保率)は2015年のデータでなんと11%。米国は4%、ドイツも7%なのに日本はそれよりも大幅に多い2桁の水準だ。事実、日本の上場企業の現預金を積み上げてみると100兆円にも達する。
 企業を経営する側にとってみれば言い分はあるのだろう。いざとなった時の頼りはお金だと。2000年のころの小泉政権の時を思い出してほしい。あの時は政府の方針で金融機関が融資を縮小、財務状況の悪い企業からはどんどんお金をはがしていった。いつあの時代が舞い戻ってくるかもしれない。それに備えるのは分からないわけではない。
 だが、実態は違う。「アメリカンファースト」の米トランプ氏にどんどん持って行かれているではないか。ツイッターで一喝され、あわてて米国に投資し人も雇用しているではないか。日本のためになっていない。
 ならば日本人に還元すべきだ。給料として支払ってやるべきだ。
 今、日本の国民は貧しい。大企業につとめる人ですらだ。年収1000万円、共働きの4人世帯の場合、手取り収入は2011年から2017年にかけて38万円も減った。2019年に消費税があがれば、さらにまたさらに減る。「アッパー・サラリーマン」ですら苦しいのだ。
 安倍政権はその苦しさを本当に分かってくれているのだろうか。来日したトランプ氏とゴルフ三昧、その揚げ句に米国が演出した朝鮮半島危機にあおられ、天文学的な価格の武器を買わされている日本。そんな金があるなら、庶民に回して頂きたい。
 安倍さん、国を守るなら武器よりもまず人。このままでは石垣は崩れ、堀は埋まり、国は滅びますぞよ。(了)

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ジャパンファーストとなぜ言えぬ(3)〜企業なりて国民枯る〜

 

一将功成りて万骨枯る(いっしょうこうなりてばんこつかる)――。一人の将軍の輝かしい功名の陰には、戦場に命を捨てた多くの兵士があるというのがその意味。成功者・指導者ばかりが功名を得るのを嘆く言葉だが、今の日本の企業と国民の関係はこれに極めて似ている。円安を背景に海外マーケット(市場)を開拓し利益を貯め込む企業とは裏腹に、国民は貧しく生活は苦しさを増す。世界で戦う日本企業の「功」は成り潤うが、その陰で日本国民はやせ細る。それはまるで土地の滋養を一身に集め吸い尽くし、地を枯らす高麗人参のようだ。

 

●旦那様はだれだ
 「株主等分配率」という、ややいかめしい言葉がある。企業が生み出した付加価値、つまりお金を株主にどれだけ還元したか、その割合を示す指標だ。日本企業は2005年度からこの株主等分配率が急激に上昇している。2000年は2%だったのに、2015年は8%にまで急上昇している。儲ける力を増した企業が、その成果物である「お金」を株主により手厚く配分するようになっているのだ。
  それがどうしたと思われるかもしれない。確かに、企業が儲かっているんだから、その儲けを株主に還元するのは当然だ。しかし、問題は株主の正体だ。この正体こそ注意しなければならない。
お分かりだろう。外国人なのだ。例えばシャープ。2016年3月時点で、外国人の保有比率は72・6%。つまり、もはや実態は日本の企業ではない。シャープは外国人の旦那(だんな)様の持ち物なのだ。この旦那様のためにシャープは様々な支援を日本政府や日本の金融機関から受けながら、鞭(むち)を入れられ、必死で金を稼ぎ、その稼ぎを旦那様に戻しているわけだ。
 もちろんこのシャープは特殊な事例だが、ほかにも並み居る大企業のかなりの株主が外国人にすり替わっている。そして日本の企業はせっせとこの外国人の旦那様のためにお金を稼ぎ、分配しているのだ。

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※シャープ買収契約調印後に会見に臨んだ、鴻海副総裁(シャープ現社長)の戴正呉(左)、鴻海(ホンハイ)董事長の郭台銘(中央)、シャープ前社長の高橋興三(右)の各氏


●大企業の社員もまた貧しい
 安倍政権は「まず企業が元気にならないと国民が元気にならない」という。税制面で企業を優遇し、金融面で助け、円安誘導で輸出を後押しする。にもかかわらず、そうやって稼いだお金をせっせと外国の旦那に貢いでいるのだ。バカバカしいではないか。
 もし、日本国の宰相がトランプだったら、どうだろう。この状態を放っておくだろうか。そんなはずはない。「国が稼がせてやっているのに、外国の旦那に貢ぐとはなんだ。ジャパンファーストだろう」。そう怒るだろう。
 そもそも企業だけが潤う今の態勢はおかしい。ため込んだ現預金は上場企業に限定したとしても100兆円。しかも内部留保として抱え込むだけで、社員に還元するわけでもない。大企業は豊かでもそこで働く社員もまた貧しいのだ。
 結局、よくみればここでもまた日本のお金は外国にだだ流れになっている。悲しいことである。(了)

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ジャパンファーストとなぜ言えぬ(2)~トヨタが国を売る~

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おもねったかいがあったというもの。米トランプ大統領が1月30日(日本時間31日)に実施した一般教書演説でトヨタ自動車マツダの名前をあげ、米国の雇用拡大に貢献した企業として賞賛してくれたのだ。米国での新工場建設が評価された格好で、米政権との摩擦を避け、車を売りたいトヨタ自動車マツダはこれで一安心。しかし、問いたい。「おい。おまえたち。米国はいい、日本はどうする気だ」

 

●4000人雇用の工場、米より東北につくれ
トランプ大統領が評価した新工場は南東部のアラバマ州に建設する。20州近く手をあげた中で、精査に精査を重ねて決定した。北米ではトヨタにとって8つ目の完成車工場で、マツダにとってはメキシコに続く2つ目の拠点だ。
 工場はトヨタマツダの共同出資となるが、投資額は総額で約16億ドル(約1792億円)。2021年の稼働を目指すという。トヨタが小型車「カローラ」、マツダが中小型の多目的スポーツ車(SUV)の生産を計画しており、2本の生産ラインの年産能力は年30万台。そして新工場建設により新たに生まれる雇用は約4000人だ。
 何という大きな経済効果だろう。仮にこの工場が東日本大震災で被災した東北地方に建設されたと考えて欲しい。4000人もの雇用が生まれるのだ。流出した人たちが故郷に帰るきっかけとなり、どれほど復興に弾みがつくだろうか。海と陸を無残に分断するそびえ立つコンクリートの防波堤をつくるより、よほど地域を元気づける。

 

●「まずは米国」のウソ
 しかし、安倍政権はそうは考えない。「まずは米国」。こう考える。「米国のおかげで日本は守られ、平和を享受できている。その米国をまずは富まそう。日本はその次ぎ。米国が繁栄しなければ、日本の繁栄もないのだ」と。
 だから、日本のお金は米国に流れ続ける。今回のトヨタの新工場建設は単なるその前哨戦に過ぎない。これを契機にトヨタは米国にどんどんお金を振り向け、今後5年間で100億ドル(約1兆1000億円)を投資するのだという。
 しかし、それにしても悲しい話だ。トヨタが自動車を輸出しやすいよう、どれだけ日本国が米ドルを買っていることか。1000兆円を遙かに超える借金を抱える世界に冠たる貧乏国、日本が、である。「きっと国を豊かにしてくれるのだろう」と国債を発行し、そのお金でドルを買っているのである。国民に借金をしてまでドルを買い、「円安」を維持しているのだ。
 それもこれも日本の企業が海外でモノを売りやすいようにするため、トヨタが海外に自動車を輸出しやすいようにするため血税を為替市場に注ぎ込んでいるのだ。それでもひとたび、トランプに恫喝されれば、企業はさっさと日本を売る。米国になびく。血税を使い、日本国に稼がせてもらった利益を我が身かわいさに米国に流す。これを恩知らずと言わずして、何という。
 今、日本は貧しい。1%の富裕層はともかく、中間層は貧乏ぶるいをしている。その民を見捨て、仕事を与えず、米国におもねる企業など国が守る価値などない。まず、国は日本国民を守れ。企業も米国もその後だ。(了)

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ジャパンファーストとなぜ言えぬ(1)〜強い通貨の国が強い〜

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スイスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席した米トランプ大統領。米国の現職大統領の出席は18年ぶりというだけあって、発言に世界の注目が集まったが「期待通り」、その言葉は世界を揺るがせた。テレビのインタビューに対しトランプ大統領は「最終的には私は強いドルを望む」と発言したのだ。通貨の強さは国の強さに通ず――。さすがアメリカンファーストを標榜する米大統領らしい発言だがそれにしても、なぜ日本はトランプ大統領の真似(まね)ができないのか。

 

●大切なのは企業よりも国民
トランプ大統領の発言の効果は覿面(てきめん)だった。「強いドル発言」はたちまち世界を駆け巡り対円で1円20銭近く急上昇した。前日の1月25日、ムニューシン財務長官が「ドル安」を容認する発言をしていただけに、マーケット(市場)は機敏に反応、ドル高に一気に切り返した。
トランプ大統領は「ドル高」、ムニューシン財務長官は「ドル安」――。1国の政府要人の発言が真っ二つに割れるのは実に珍しいが、日本にとっては示唆に富む「事件」だ。少し考えてみよう。
まずムニューシン財務長官の発言の真意は「ドル安」に為替を誘導、企業が製品を輸出しやすい環境を整えることで、米国の貿易赤字を解消したいということにある。だから「弱いドルは貿易面では好ましい」となる。日本と同じだ。
一方、トランプ大統領は違う。ドルが弱くなると米国が発行する国債を世界の国々が買ってくれなくなるので米国にお金が集まらなくなる。今後10年間で1兆7000億ドルのインフラ投資を打ち出しているが、これが出来なく可能性がある。ドル安は望ましくないというわけだ。
さて、ドル高とドル安、つまり自国通貨が強い場合と弱い場合、どちらが国を富ますだろうか。


●強い通貨で国を富ます
確かに日本のように自国通貨が弱くなると、モノを海外に売りやすくなる。企業の輸出は伸びる。企業は儲かり、豊かになる。しかし、国や国民は豊かになるだろうか。少なくとも米大統領であるトランプは企業が富んでも国は富まないと判断している。自国通貨を強くすることで、世界中からお金を集め、道路や鉄道、病院や学校をつくろうという考えなのだ。
日本もこのトランプ氏を少し見習ったらどうか。国民の税金を投入し、円安に誘導、トヨタ自動車の車を世界で売りまくれるようにしても、儲かるのはトヨタ自動車とその社員くらいで、庶民は豊かにはならない。そればかりか、個人のお金を、「ドル買い(つまり円安)」に使われればその分、富は少なくなる。車は売れるが庶民はやせ細っていくばかりなのだ。
身勝手な振る舞いの象徴のように取り扱われる「アメリカンファースト」だが、視点を変えてみれば、これほど国や国民のことを考えている言葉はない。日本にも「ジャパンファースト」を唱える政治家がでてきてもいいのだが。大和魂はどこにある。   (了)

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屈辱のJBIC、ウラン濃縮会社買収

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 耳を疑った。日本政府が、国際協力銀行JBIC)を通じて欧州のウラン濃縮大手、ウレンコ社(本社・英国)の買収交渉に入ったというのだ。福島第1原発の事故を引き合いに出すまでもなく原発の難しさは身に染みたはず。にもかかわらず、国自らがウラン濃縮の会社を買収するという。しかも、米国のエネルギー会社と一緒に、だ。今のところ決まっているのは日本がカネだけを出すということだけだという。

 

●金だけ出す日本
 話を分かりやすくするために、日本政府が買おうとしているウラン濃縮の会社がいったい何をする会社なのか解説しよう。一言でいえば原子力発電の燃料となるウランつくる会社だ。鉱山から採掘される天然ウランのなかには、実際に発電で使える「ウラン235」は0・7%しか含まれていない。だからこの濃度を3~5%程度にまで高めなければ実際の原子力発電では使えない。遠心分離機などを使ってウランの濃度を高める必要があり、それを手掛ける会社を米国のエネルギー会社と一緒に買うというのだ。
 しかし、原発の再稼働にこれだけ批判が高まるなかで、原発の燃料をつくる会社を買うなど尋常ではない。とりわけこれが問題なのは国自らが乗り出すということ。東京電力東芝が買うわけではないのだ。
 となると、気になるのはお金の出所だ。国が買うということは結局は国民が買うということだ。つまり、お金は「外国為替資金特別会計」から出る。一般会計ではなく特別会計から出るわけだが、いずれにしても要は簡単に言えば、国民の税金で買うのである。買った会社は米国のエネルギー会社が牛耳る、日本はお金だけ出す。

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血税がまた無駄になる
 ふざけた話しではないか。いったいいつこんな屈辱的なディールにカネをつかっていいと誰が言った。100歩譲って買ったウラン濃縮の会社を、日本の傘下に収めるならまだ利用の仕方がある。うまく使えば福島第1原発の処理に貢献するかもしれない。しかし、そうではない。買った会社は米国にくれてやるのだ。米国のエネルギー会社が欲しがるオモチャを、日本国民の血税で買ってやったようなものである。しかも、そのオモチャは原発という危険な代物なのだ。
 これはおかしい。極めて異常だ。最も恐ろしいのは日本政府が、それを隠そうともしないことだ。米国にかしづく、卑しい狐である実態を糊塗(こと)※しようともせず、正々堂々、国民のカネを使う。
さあ、安倍政権の正体が赤裸々に見えてきた。問われているのは国民の方だ。(了)

※糊塗(こと)…一時しのぎにごまかすこと。その場を何とか取り繕うこと。

 

どこか卑屈だ、郵便局

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「違うんだよな」と言いたくなる。日本郵便が4月から全国の郵便局で訪日外国人向けのサービスを本格的に始めるという。全2万の直営局に翻訳システムを導入し、窓口での外国人の接客対応を向上させる。いったいどこにそんなニーズがあるというのだろうか。日本は全国津々浦々、外国人が徘徊(はいかい)しているような国になるつもりはない。

 

 翻訳システムは4月に導入する計画だとか。情報通信研究機構(NICT)の翻訳エンジンなどを使って自前のアプリを開発。タブレット端末を通じて音声を吹き込めば、自動的に翻訳できる仕組みをつくる。英語・中国語・韓国語に対応し、ゆうパックなどの商品名や郵便の専門用語も簡単に訳せるようにする。このほか、都市部や観光地の郵便局では有料で荷物を預かり、ホテルなどへ配送するサービスも始める。全国に広がる郵便局網を生かし、増加する訪日客の利便性を高める狙いだという。

 確かに外国人にとっては便利だろう。日本人の観光客ですらやってこない寒村に、ぶらっと外国人が訪問、郵便局に立ち寄り言葉が通じれば感激するかもしれない。しかし、その確率は1%にも満たないだろう。そんな「まさか」に備えるために、なぜ日本が翻訳機を完備しておかねばらないないのか。

●日本は植民地にあらず

 日本は米国や中国の植民地ではない。日本に興味を持ち訪れてくれた外国人なら、片言でも日本語を話せるはずだ。少なくとも話そうとはする。用があるのは向こうなのだ。英語や中国語で話しかけられ、舞い上がってオタオタする必要などまったくない。「分からない」なら「分からない」と日本語で正々堂々、言えばいい。ここは日本なのだ。

 日本の政府は2017年で約2800万人だった訪日客を2020年に4千万人にまで増やす方針。地方へも積極的に訪日客を呼び込んでいくといい、郵便局のグローバル対応はこの流れのなかでは必然のように思えるかもしれない。

 だが、やはりおかしい。どこか卑屈、しかも、無意味だ。そもそも訪日外国人が日本に落とすお金は年間4兆円。郵便局がどれだけがんばっても1%も増えないだろう。日本の借金が1000兆円をはるかに超えるという時代に、日本の美しい田園地帯の生活を犠牲にして小銭を稼いだところでどうにかなるものではない。時代に合っているようで、合っていないのだ。

思い出して欲しい。日本郵政グループは2015年に買収した豪物流子会社トールを巡って、今年4月に約4000億円の巨額減損を出したばかり。今度は火傷をしないよう、M&A(合併・買収)を引っ込め、地道に小銭を稼ぐつもりかもしれないが、実はM&A(合併・買収)以上に採算性が低く、そして危険かもしれない。 (了)

安倍首相はビスマルク

    この国は大丈夫か。先日の大手新聞にこんな記事が掲載された。「ビスマルク流」の安倍外交――。1971年生まれの慶応大学の教授が書いた記事で、安倍首相はドイツの、「鉄血宰相(独: Eiserner Kanzler)」ビスマルクだと賞賛しているのだ。ドイツ統一を成し遂げたヨーロッパを代表する政治家ビスマルクと、米国への従属外交一辺倒の安倍首相と、いったどこが似ているというのか。

 

●プライド捨てた知識人
 この大学教授の論旨はこうだ。「今、米国は自国第1主義に傾きつつある。このため世界での影響力は後退、アジアでは不安定性が増しつつある。そして、この空白を埋めようと秩序を形成しようとしているのが、日本の安倍首相だ。安倍首相は、いわば21世紀のビスマルクだ」。読んでいるだけで気恥ずかしくなる。赤面する。いったい知識人のプライドはどこにいったのか。
 氏によるとビスマルクの外交戦略には常に勢力均衡の観点があり、「世界が5大国の不安な均衡によって統御されている以上、3国のうちの1つになること」、これがビスマルクの外交戦略だったと結論づけている。いわば複数の馬のなかから「勝ち馬」を見分け、常にその勝ち馬に乗り、体制側につくことこそビスマルクの外交だったと分析している。
 今、安倍首相にそのような5つの国を複合的に見る力などない。ロシアが、北朝鮮が、そして中国が何を考え、どう動くか、それを予想し、考える力などない。ただ、ただ、米国の機嫌を伺っているだけだ。

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●「ビスマルク」がトランプの運転手
 考えてみて欲しい。いくら歓迎するといってもゴルフ場で米国大統領のカートの運転手までつとめて、接待する一国の宰相がどこにいる。ビスマルクが聞いてあきれる。
 そしてもっとあきれるのは、そんな腑抜けの宰相を「鉄血宰相」と持ち上げる大学教授、そしてその論文を載せる新聞社の見識の低さだ。しかもどうどう1面に。かつて新聞は太平洋戦争をあおり、終戦を迎えるその日まで日本は勝つといい、玉砕を賛美し続けた。その罪を忘れたか。あきれるというよりは、ややそら恐ろしさを感じる。「あの時」と似てきたのではないか……。 (了)

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ビスマルクWikipediaより)

実感なき「いざなぎ越え」のワケ

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    今景気は絶好調である――。そう言えば驚く人も多いだろう。内閣府は9月の景気動向指数(CI、2010年=100)の基調判断を「改善を示している」に据え置き、2012年12月から始まった景気回復期が58カ月間と高度成長期の「いざなぎ景気」を超え戦後2番目の長さになった。しかし、これほど実感を伴わない好景気があろうか。富裕層や企業は将来の不況にそなえ、現金を貯め込むばかり。庶民に全く回ってこないではないか。

 

●「外」頼みのアベノミクス
内閣府の発表を受け市場(マーケット)は反応、東京株式市場では日経平均株価が一時、1992年1月以来、25年10カ月ぶりとなる2万3000円台に乗せた。世界経済も堅調、日本経済もいい、企業業績も過去最高を更新と良いことづくめなのに、なぜこれほどまでに空々しく響くのか。

まず、この好景気の起点だが、これは第2次安倍政権の発足時。今回の好景気が「アベノミクス景気」と呼ばれる所以(ゆえん)で、堅調な世界経済を背景に緩やかながらも長期にわたり指標となる経済的データが上向いている。

特に大きいのは二つ、一つは企業の輸出、そしてももう一つは訪日外国人と富裕層がけん引した消費だ。結局は「外部」の力頼みなのである。


これこそがアベノミクスの正体であり真骨頂である。要は「円安」の恩恵を被ったものだけが、得をするのである。つまりそれは自動車や家電製品の輸出で稼ぐグローバル企業と呼ばれる大企業、そして外国人に商品を買ってもらって潤う商売人たちだけ。庶民は全くの蚊帳の外に置かれるのだ。

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●「円安」を庶民の金で買うな
ただ、庶民にお金が回ってこないというだけならまだいい。庶民は何も贅沢をしたいわけではない。問題なのは大企業や商売人たちがきっちり稼ぎやすいよう円安の状態をつくるために、庶民の金がまるであぶく銭のように使われていることだ。

円安の状態は日本の長期金利を0%程度に誘導することで保たれている。この状況を維持するために日銀は日々国債の購入量を調整、長期国債を購入し続けており、今やその額は「年間で80兆円程度」。もちろん上限はあるが、この天文学的な資金を使って円安の状態を維持しており、このお金は結局、巡り巡って庶民につけ回されるのだ。

庶民に実感のない「アベノミクス景気」を演出するために、庶民の金があぶく銭のように使われる――。そんなバカな道理はないではないか。これは経済政策でもなんでもない。庶民の金を大企業と商売人にこっそり付け替えているだけのことなのだ。
まず、そこを見抜かなければならない。「安倍政権が維持されれば景気は上向く」。これはまやかしだ。

しかし、もっと知っておかなければならないのは、まやかしの好景気の先に何があるかだ。今の好景気が人為的につくらていることなど、経済人なら誰も知っている。それを誰も言わないのは安倍政権を長期化させ、そこで稼いだ時間を使って憲法9条を改正させことを狙っているためだ。今、経済界は戦争をしたくて仕方がない。戦争は金になる。その魂胆を庶民はきちんと捕捉しておく必要がある。(了)

ルールはこちらが決める

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天皇陛下の御所だろうが例外はない」――。これが対等の国に対する態度か。米国の警備責任者は米トランプ大統領天皇、皇后両陛下と会見するにあたり「大統領が行くところは事前にすべて我々がチェックするのがルールだ」と主張、御所への事前の立ち入りを要求してきたのだ。これでは日本はまるっきり植民地扱いである。ここまで侮辱され黙っているならもはや独立国ではない。安倍首相が「断固として立ち向かう」のは北朝鮮ではなく米国のこうした非礼な態度だろう。

 

●当日までもめた陛下との会見

米国のこの無礼な申し出は10月、トランプ大統領の訪日が固まった段階で打診があった。当然、日本はすぐさま受け入れられないと突っぱねたが、米国側は執拗に要求を繰り返してきたという。結局、やり取りは天皇陛下とトランプとの会見が予定されていた6日の前日まで続き、日本の外務省幹部が「日本は独立国だ。このままでは(天皇陛下との)会見は成立しない。流れても仕方ない」とトランプ氏の同行筋に通告し何とか、おさまった。米国側もようやく日本側が本気であることを理解し会見の当日の朝、「今回は例外として認める」として折れたのだった。
それにしても「例外」「認める」とは随分、高いところからの物言いではないか。しかも、それだけではもの足りないらしく「今回は例外として認めるが、日本側の態度は残念だ」とつけ加えた。
いったい米国は何様のつもりか。天皇陛下がいらっしゃる御所に米国の警備担当者レベルが土足で入り込めるはずがないではないか。国事行為はもちろん国守りの御祭事も執り行う神聖な御所に「自分たちの国のトップが行くから」との理由で勝手に入り込み、チェックするなど許されると本気で考えたのだろうか。しかもご丁寧に「それが我々のルールだ」とは……。日本が米国のルールを無理強いされる覚えはない。


●日本の国柄を理解せよ。
米国側には、神を中心として成り立つ日本の国柄と、現人神(あらひとがみ)である天皇陛下という存在に対する敬意と理解が根本的にかけている。学ぶ気配もない。ただ、一方的に自分たちのルールを押しつけてくるだけだ。よく覚えておいて欲しい。これこそが米国の正体である。
日本もそろそろ目を覚ますべきだ。米国という傲慢な国が日本をどう見ているかということを理解すべきた。中国が脅威なら、北朝鮮が怖いなら、自分が強くなり自衛する力を養えばいいではないか。ぶざまに媚びへつらい、戦闘機を何機も買って米国に守ってもらう必要など何もない。
 安倍晋三首相とトランプ氏が蜜月関係にあることから、トランプ政権の中には「日本に強く要求すれば最終的にいいなりになる」(米ホワイトハウス関係者)と高をくくっている連中も多い。それを証拠に米国の警備当局はクレムリンの大統領の居住スペースへの事前検査を要求するようなことはしてない。日本だから無理を承知で要求してくる。要は日本はバカにされているのだ。その事実を正確に理解し、日本は米国との関係を見直すべき時である。  (了)

軽く1丁あがりのトランプ訪日  


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 「スコアは国家機密だ」――。トランプ米大統領とのゴルフを終えた安倍晋三首相は記者団にこう語り笑いを誘った。しかし、安倍首相が本当に国家機密にしておきたかったのは翌日の貿易不均衡を巡るトランプ大統領とのやり取りだっただろう。北朝鮮情勢が緊迫してきたことを理由に防衛力強化を迫られ、弾道ミサイルなどの購入を約束させられたのだ。弾道ミサイルなど日本の防衛上、何の意味も持たない。ゴルフをおつき合い頂いた見返りに何千億円もの無用の長物の購入とは……。ゴルフがやりたければ国家予算を使わずに自分の金でやって欲しい。

 6日、トランプ米大統領安倍晋三首相の共同記者会見では、対日貿易赤字を巡る立場の違いが鮮明になった。トランプ氏は「日本の貿易赤字を減らしていかなければならない」と日米の貿易不均衡問題に言及、さらに日米自由貿易協定(FTA)の直接的な言及は避けたものの「公平で自由で互恵的な貿易関係を築いていきたい。平等で信頼できるアクセスが米国の輸出品に対して必要だ」と強調した。要は「今後、日本に対して貿易不均衡を是正するための具体的な措置を要求していく」ということだ。「こんなことなら、昨日のゴルフは何だったのか」。安倍首相はそう言いたかったに違いない。
 
●完敗の日本
 しかも、話はここで終わらなかった。さすがトランプ米大統領は役者が何枚も上手だ。一気に「安倍首相は様々な防衛装備を米国からこれから購入することになるだろう」と畳みかけ、「そうすれば上空でミサイルを打ち落とすことができる」と言及、安倍首相を追い詰めたのだった。渋々、安倍首相も「北朝鮮情勢が厳しくなるなかで、日本の防衛力を質的に量的に拡充していかないといけない。(弾道ミサイルやF35戦闘機を)米国からさらに購入することになる」と応じざるを得なかった。
 米国にしてみれば「毎度あり」。日本側とすれば完敗なのである。米国がたてつけた北朝鮮情勢の緊迫を理由に、まんまとはめられ、必要もない高額な武器を買わされたのだった。だいたい日本の「上空でミサイルを打ち落とす」必要がどこにあるのか。そのまま通過させればいいではないか。打ち落として欲しいのはむしろ米国の方だろう。日本に金を出させ、防衛力を強化させたうえで、米国を狙って発射された北朝鮮のミサイルを打ち落として欲しいだけのことだ。
 そもそもだ。米国と北朝鮮の小競り合いに日本が入っていく必要は全くない。北朝鮮は日本など相手にしてもいない。わざわざ米国の尻馬に乗り騒ぎ立て、大国気取りで北朝鮮を非難する。その実、欲しくもない武器を「いらない」とすらいえない弱虫の日本など、北朝鮮の敵ですらないのだ。
 この後、トランプ米大統領は、1強体制を盤石にした中国の習近平氏との対決が控える。今回の訪日は、その前にまずは軽く日本を平らげただけのこと。「1丁上がり」。そんな声が聞こえてくるようだ。(了)

外交は死んだのか

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 もはやこれは外交とは呼べない。11月5日午前10時40分すぎ、トランプ大統領がメラニア夫人とともに着陸したのは成田空港でも羽田空港でもない。米軍横田基地だった。しかも午前11時すぎから始まった歓迎式典とスピーチも基地の格納庫。いったい人様の家を正式に訪問する時にいきなり勝手口から入ってくるバカがいるだろうか。ジャージ姿で台所で演説する常識知らずいるだろうか。なのにそれを国賓級の扱いで迎え、髪振り乱して孫まで接待する。そんな国が世界から尊敬されるはずはない。

 
●陛下の前に米兵
「間もなく着陸する。偉大なる兵士たちに会うのを待ち切れない」。着陸の約1時間前、トランプ大統領が専用機「エアフォースワン」の中でツイッターでつぶやいたのはこの言葉だった。横田基地では米兵と自衛隊トランプ大統領を迎えたが、ツイッターでつぶやいたトランプのこの「兵士」とは米軍兵士であることは間違いない。今回、日本ではトランプと天皇陛下の会談も会見も用意されているにもかかわらず、自国の兵士に会うことを最大の楽しみとして掲げるとは無礼千万である。
 しかも、到着後、最初のスピーチ時に羽織っていたのは兵士たちから贈られたジャンパー。横田基地には早朝から軍関係者や報道陣が集まり、トランプ氏の到着前からすでに生バンドの演奏が行われるなどパーティーのような盛り上がりだったが、そこに得意満面のトランプが、いきなりジェット機で乗り付け、我が物側でスピーチするとはいったいどういうことか。日本を訪問したならまず日本の首相に挨拶をしてからもの申すのが筋というものであろう。いったいいつから日本は米国の植民地になったのだろうか。

 

●アラベラちゃんに「アッポーペン」
 さらに情けないのは安倍首相だ。トランプ大統領につきっきりでゴルフだお食事だと必死でお相手。しかも、トランプ氏の娘のイバンカ氏まで日本食材を使ったフランス料理でもてなし、孫娘アラベラちゃんにも粗相があっては大変とばかりに、アラベラちゃんお気に入りのタレントのピコ太郎を呼び、相手させた。
 いったいこの国の誇りはどこにいってしまったのか。このような「媚びへつらい」をもはや外交とは呼ぶことは難しい。ぶざまなまでに米国にかしづき、必死で機嫌をとりながら、その米国の威光で北朝鮮に「圧力」をかけるという。笑止千万。滑稽としかいいようがない。(了)

北朝鮮との戦争、始めました

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    分かってはいた。しかし、言われてみればやはり衝撃だ。9月19日、小野寺五典(いつのり)防衛相の記者会見での発言。北朝鮮を巡る有事対応について「緊急の場合の事後承認制度がある」と語ったのだ。その言葉の意味は、つまりこういうことだ。「北朝鮮の中距離弾道ミサイルが飛んできたので、国民を守るために撃ち落としておきました。戦争?ああ、それももう政府の判断で始めてます。これも国民を守るためです。国民のみなさんは、ご承認だけお願いします」
 
北朝鮮のミサイル迎撃、事後承認で
恐ろしいことだが空想ではない。小野寺防衛相の発言は安全保障関連法で可能となった新任務を行う場合の国会承認について、「事後承認制度があるから大丈夫」との見解を示した。何が大丈夫なのか? 要するに北朝鮮が米国のグアムに向け中距離弾道ミサイルを発射した場合、米国と同盟関係にある日本が国会の事前承認がなくても北朝鮮のミサイルを米国に代わって撃ち落とすことは法的に問題はないというだけのことだ。国民には後から知らせ、承認させるだけで法的には済む。
 通常なら中距離弾道ミサイルを撃ち落とすような高度に政治的な判断は国会での承認を原則とする。ところが実際は非現実的だ。ミサイルが飛んでくるような緊急事態時に、えっちらおっちら国会議員を召集して議論し、最終的に「そういうことなら、ミサイルは撃ち落としますか」。そんな悠長なことをしている余裕はない。何せ、日本の上空をミサイルが飛ぶ時間は数秒なのだ。
 従ってミサイルを撃ち落とす時は何時だって緊急事態なのである。「事後承認」のロジックは常に成立する。国会に諮らず政府のほうで勝手に撃ち落としても「緊急事態だったから」と、後から承認を求めれば法的には問われることはないのだ。だから小野寺防衛相は「大丈夫」と述べた。たまたま今回は9月28日招集の臨時国会冒頭に衆院を解散、選挙に突入するという事態が想定され「こんな時に……。もし、北朝鮮からミサイルが飛んできたらどうするのか?」という質問が投げかけられたから明白になった。

 

●撃ち落とせば北朝鮮は黙っていない
 ただ、日本として法的に問題がなくても「ではそれで安全か」となれば答えは違ってくる。なぜならミサイルを撃ち落とされた北朝鮮にとっては大問題だからだ。北朝鮮が米国をめがけ本気で撃ち込んだミサイルを日本が米国の代わりに途中で撃ち落とすのである。ただで済むはずはない。北朝鮮にとって日本の行為は脅威であり戦闘行為と映る。
何せ朝鮮にとって米国は敵なのだ。「日本など単なる米国の番犬だ」と見ていたとしても、米国に命じられ誰よりも先に北朝鮮に噛みついたとしたら、もはや放ってはおけない。それを政府は分かっているのだろうか。
 日本政府もバカではない。理解はしている。問題は断れるかだ。米国が正式に「次に北朝鮮からミサイルが飛んできた時は撃ち落とせ」と要請してきた時にはねつけられるかだ。「集団的自衛権」を日本政府が認めてしまった今、論理的にはかなり難しい。米国に対し「同盟国だからそうしたいのは山々だが、自国の防衛しか認められていないので無理だ」とは言えない。日本と密接な関係、つまり同盟関係にある米国が攻撃されることは、日本の存立が脅かされることと同じであるとする「存立危機事態」という考え方に立てば、米国を守ることは日本を守ること、「集団的」に「自衛する」ためのミサイル迎撃要請は断れない。
 こうなれば「集団的自衛権」は、「米国に日本を守ってもらう」という都合のいい話だけでは済まなくなる。こと北朝鮮との問題においては極めて日本が不利だ。米国の盾になることを常に求められる。そして、それこそが米国の思惑であった。最初から北朝鮮問題解決のため日本の「集団的自衛権」を認めさせ、米国の身代わりにする作戦だったのだ。安倍政権は、まんまとその罠に引きずり込まれてしまった。

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日本海では使い走り
 今、日本海自衛隊が米国に何をさせられているか。それを紹介すれば、いかに日本が屈辱的な立場におかれているのか、ご理解頂けるかもしれない。海上自衛隊北朝鮮の弾道ミサイル防衛(BMD)を担う米イージス艦に給油をさせられているのである。しかもその事実を国民に明かにすることも許されない。なぜなら「米国の行動に関わる」(河野克俊統合幕僚長)からだ。ささいなことでもそれを公表することで米国の行動を北朝鮮に気取られてしまっては大変、だから明かせないのだ。
 しかし考えてみて欲しい。米イージス艦に日本がせっせと給油すれば、北朝鮮から「米軍と自衛隊は一体」と見なされても仕方がないではないか。しかもそれほど日本がリスクを冒して米国に尽くしても、トランプ大統領は決して感謝はしない。問題は「米国民は大丈夫」かどうかだからだ。
 米国に気に入られたい、それだけ日本国民を危険にさらす、今の安倍政権に本物のプライドはあるのか。使い走りさせられ、揚げ句に北朝鮮からは敵とみなされ攻撃される可能性はないのか、それすら考えようとしない。
はっきり言っておく。日本が攻撃されたからといって米国は決して北朝鮮を攻撃することはない。仮に米国が北朝鮮を攻撃すれば、日本と同じように今度は米国が攻撃されてしまうからだ。その現実を見つめなければならない。(了)