琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

日本は資源大国だ

⚫️JAZA問題が映すグローバル化の死角

 「JAZA」と聞いてピンときた人はほとんどいまい。Japanese Association of Zoos and Aquariums All Rights Reservedの略だそうで、日本語では『日本動物園水族館協会』が正式名称で日本にある水族館の大半がこれに加盟しているが、このJAZAが5月21日、一躍有名になった。

 さて、なぜJAZAが有名になったのか、、、。理由はイルカの入手方法だ。JAZAに加盟する日本の水族館の多くがイルカを和歌山県太地町の「追い込み漁」で捕獲したものを回してもらっているのだそうだが、これが「著しく残虐な行為」なのだそうだ。古来から捕鯨を文化とし、これを生業にしてきた漁師たちも多くいる日本にとって突然、古来からの捕鯨の手法を「残虐」と決めつけられてもただ驚くばかりなのだが、そう決めつけたのはJAZAの世界版にある『世界動物園水族館協会(WAZA、スイス)』だ。
JAZAの上位組織にあたり、このWAZAから「追い込み漁で捕獲したイルカを今後も使っていくなら除名だ」と言われれば、確かに困る。水族館は何もイルカだけで運営しているわけでなく、日本近海には生息していない世界各地の珍しい魚種も展示している。WAZAのルートで調達している魚も少なくなく、仮にJAZAがWAZAから離脱するようなことになれば、日本の水族館に世界の珍しい魚を回してもらえなくなる。むろん水族館の運営もいずれ立ちゆかなくなる。

「背に腹は代えられない」とはまさにことのこと。JAZAは太地町の追い込み漁で捕獲したイルカの調達を今後、見送ることを決めた。JAZAはWAZAに復帰、世界の珍魚を今後も斡旋、仲介してもらえることになり、存続に向け首はつながった。
ところがだ。問題の落としどころ、これでいいのだろうか。この事件、「たかが水族館の問題」と軽く見ていてはいけない。「捕鯨」という日本古来の伝統が完全に※蹂躙(じゅうりん)された。「鯨(イルカ)は聖なる生き物」とする欧米流の発想によってだ。
 
経済界や学界では今回のJAZAの判断におおむね賛成をとなえるところが多い。不用意な摩擦も避けられたという。だが、譲ったのは日本である。単にイルカ(鯨)の調達方法だけでなく、日本の文化そのもの、大げさに言えば魂を譲ったのである。自社のグローバルビジネスの環境さえ整えば、それでいいのだろうか。
グローバル化が進展するなかで、協調すべきところは協調すべき」との声は多い。ただ、今回の捕鯨問題はその「協調すべきところ」なのか何度も反芻しながら考えてみるべきである。決して譲ってならない領域ではなかったのか。
外交とは互いに尊重し相手の立場にも配慮しながら、進められるべきものだが、今回は単に日本が押し切られただけ。ほんの1㍉㍍も日本の主張は認められていない。日本は神経を研ぎ澄まし、ここにグローバル化の危うさを感じ取るべきである。無節操に譲り相手に迎合していくだけがグローバル化ではない。そのことを新ためてもう一度、肝に銘じるべきだ。(了)
※蹂躙(じゅうりん)…[名](スル)ふみにじること。暴力・強権などをもって他を侵害すること。「弱小国の領土を―する」「人権―」⇨「デジタル大辞泉」より
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http://www.iza.ne.jp/smp/kiji/politics/news/150525/plt15052512280010-s.html