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琴言譚[きんげんたん]

今、救世主なら語る

日中共同ガス田開発ーー夢は獏に食わせてしまえーー


日本の岸田文雄外相と中国の王毅(おう・き)外相が8月6日、マレーシアで行ったガス田開発の協議は完全に決裂した。東シナ海で中国が進めるガス田開発は本来、「日本と共同で進めることになっていたはず」というのが日本の主張。しかし、中国側が話し合いの土俵にあがってくる気配はない。時間は経過、中国単独のガス田開発は進む。追い込まれる日本。日本の針路はいかに……。答えは「共同開発の夢など獏(バク)※に食わせてしまえ」だ。
・獏(葛飾北斎画)

8月7日、閣議後の記者会見で財務相麻生太郎氏が気になる発言をしている。
靖国神社には「終戦記念日に行った記憶はない」。今月15日の終戦記念日に「靖国神社参拝に行かない」という意味だが、背後に中国への配慮があることは間違いない。
相も変わらず、中国に譲り続ける日本だが、肝心なところ解き放ってしまえば、主権国家として形は崩れる。
資源問題は靖国参拝同様、その肝心要なところである。

懸案となっている東シナ海でのガス田開発は、日中両国が2008年6月、東シナ海ガス田問題の解決を目指し、まとめた合意事項に端を発する。
合意内容とは、日本と中国が主張する領海のちょうど中間地点を結んだ日中中間線付近にあるガス田「翌檜(あすなろ)※」(中国名・龍井)周辺を共同開発区域とし、その他のガス田についても「共同開発をできるだけ早く実現するため、継続して協議を行う」というもの。

日本と中国は合意に基づき条約締結交渉に入ったが、10年9月の中国漁船衝突事件後に中断。再開のめどは立たず、中国による単独開発が淡々と進んでいる。

単独開発の拠点は翌檜だけではない。
日本政府の発表によると2013年6月以降に中国が建設した海洋プラットホームは12基。
その前にすでに4基が建設済みであったため、全部で16基ものガス田開発が、「日本と中国が共同で進める」としたはずの東シナ海で、中国単独で進んでいるのである。

今、この瞬間も中国は東シナ海で石油を掘り続けている。防衛省は「ゆゆしき事態」として、7月に入りこの16基の航空写真と地図を外務省のホームページ※に掲載、「けん制」を始めた。

もちろんこれをけん制とするのは日本側だけで、掘削は「主権の行使」(王毅外相)と主張している中国側にしてみれば、正当な開発行為をホームページで公開されたからといって何ら後ろめたいところはないというのが本音のところ。日本政府の対応は十分とは言えない。

とはいえ、日本政府もこれ以上、事を荒立てる予定はない。理由は9月3日に北京で開く抗日戦争勝利記念行事に安倍晋三首相が招かれる可能性があるからだ。

ここで日中首脳会談が実現すれば、細りつつある話し合いのパイプに復活の可能性が出てくる。中国が日本に勝利したことを祝う式典をありがたがって、わざわざ出向いていく日本の外交センスは情けない限りだが、世界第2位の経済力を持つ中国におもねりたい財界の意向を受けた安倍首相らしい判断でもある。
ただ、目の前の利に目がかすみ、本来、国として死守すべき石油資源をさらわれてしまっていては本末転倒である。財界栄えて国は滅ぶ。

そもそも2008年に合意した共同開発にしても実態はなにもない。一時は日本政府側が国際石油開発帝石などにプロジェクトへの出資も検討させたが、どのポイントをどう掘削、開発していくのか具体的な話しは全く進んでいない。それどころか、今や中国は南シナ海の南沙(なんさ)[英語スプラトリー]諸島※付近では岩礁を埋め立て、軍事施設を建設する勢いである。
アジアでの覇権を見せつけようと近隣諸国を圧し、拡大路線を志向するなかで、南シナ海に続く東シナ海で、対立関係にある日本とガス田を共同開発するなど夢の夢である。

岸田外相王毅外相との今回の会談で、ガス田開発は止められなかったが「ガス田を巡る協議は継続することで合意した」と外交の成果をアピールした。しかし、もはや実現可能性のない見せかけの合意に希望を見いだそうとすることは無意味である。まず、日本は中国との共同開発という幻想を捨てるべきだ。そこから次が始まる。今、その「次」が芽吹こうとしているのだから。


※獏(バク)⇨中国から日本へ伝わった伝説の生物。[Wikipediaより]
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E7%8D%8F

※[外務省HP]中国による東シナ海での一方的資源開発の現状↓
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/higashi_shina/tachiba.html

※翌檜(あすなろ)⇨ヒノキ科アスナロ属の常緑針葉樹。日本固有種。[Wikipediaより]
https://.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%8A%E3%83%AD

南沙諸島(なんさしょとう)またはスプラトリー諸島(Spratly Islands)⇨南シナ海南部に位置する島・岩礁・砂州からなる島嶼群である。岩礁・砂州を含む約20の小島(およそ島と言えるものは12)があり、これらの多くは環礁の一部を形成している。[Wikipediaより]
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%B3%B6%E5%B6%BC