琴言譚[きんげんたん]

今、救世主なら語る

あなたはコオロギを食べますか 

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   フィンランドヘルシンキに面白いベンチャー企業を見つけたと日本経済新聞が1面で報じている。読んでみると確かに面白い。食用コオロギを育てているのだ。その数たるや50万匹。世界人口100億人時代を救うのだというのだが……。


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↑〈専用のコンテナを販売し、飼育のノウハウを有料で提供する〉

● 食料需要1・6倍に

風変わりなベンチャー企業の名前はエント・キューブ。最高経営責任者(CEO)によるとコオロギ100グラムあたりに含まれるプロテインの量は21グラムあり、牛肉や粉ミルクに匹敵する。しかも、飼育コストが格段に低い。仮に牛1頭を100グラム太らせるには1キログラムの飼料と1543リットルの水が必要なのに対して、コオロギは飼料なら100グラム、水は1リットルで、コオロギはざっと牛の10分の1のコストで飼育できるわけだ。
 もちろん農業の生産技術は加速度的な進歩を続けている。ただ、それでも2050年に世界人口が100億人に迫るとなると、今の1・6倍の食料増産が必要になる。生産技術の進歩を待っていたのでは、とても追いつかない。コオロギのお世話になる日がこないとも限らない。
 とりわけ日本は人ごとでは済まされない。農林水産省によれば、日本の食料自給率(カロリーベース)は40%前後。今後はさらに下がる。TPPに大筋合意したとあってはなおさら下がるから、いったん世界的危機や戦争など不測の事態に見舞われれば、日本人の食卓にコオロギをこねてつくったハンバーグが上る日が来ないとも限らない。
 そう考えていたら、日本経済新聞がこのニュースを伝えたのとちょうどころ、日本が捕鯨を再開したとの情報が飛び込んできた。2014年、オランダの国際司法裁判所(ICJ、ハーグ)が日本の捕鯨は商業目的だとして停止すべきとの判断を下したが、今回の捕獲調査はその時以来である。
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●まやかしの調査捕鯨

明るい話である。調査捕鯨という形ではあるが、捕鯨国、日本がのろしを上げた。12年間にわたって調査を続ける予定で、6年後には調査結果の中間報告も実施するという。BBCニュースなどは「また日本が残酷な行為を始めた」と否定的だが、ここで日本はひるむ必要はない。
ただ、むしろ、堂々と調査ではなく「生業としての捕鯨」と主張するべきだ。今回は昨年3月のICJの中止命令に配慮し、捕獲予定数を従来の3分の1に減らしたほか、皮膚の採取や目視での調査、餌となるオキアミ資源量調査なども盛り込み、調査としての意味合いを強めたが、これは逆効果だ。
本来は純粋な捕鯨であるにも関わらず、「調査」だと言うから、そこに弱みが出来るし、まやかしが発生する。日本はそこをつかれる。戦術としては下策である。なにも中国のように他国の領海の島を埋め立て、基地をつくるわけではないのだ。生業を営むわけだから、それを貫いたほうが、よっぽど潔いし、理解も得やすい。
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●日本人がコオロギを食べないように

捕鯨問題は日本の文化と誇りの問題であると同時に切実な食料問題でもある。食料自給率40%の国が、「調査」とうそぶいている間に状況は深刻さを増す。今秋、日本近海で鯨が増えすぎ、サンマが獲れなくなった事件が問題化したように、捕鯨で二の足を踏んでいるうちに日本近海の生態系はバランスを崩し、いずれ取り返しがつかなくなる。
そうならないうちに日本は動き出すべきだ。捕鯨を手控えることは国力をそぐことにつながる。そこを簡単に考えるならば、いずれ日本人がコオロギを食べる日がやってくる。(了)
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