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琴言譚[きんげんたん]

今、救世主なら語る

集団的自衛権が引き寄せたもの

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 北朝鮮国際海事機関(IMO)に対し「人工衛星」を打ち上げると通告してきた。北朝鮮の場合、この「人工衛星」なるものが米国本土まで攻撃できる大陸間弾道ミサイルICBM)を意味することは衆目の一致するところ。それ自体に驚きはないにもかかわらず日本の政府関係者の間にはこれまでにない緊張感が走っている。ICBMが日本を標的にする可能性が出てきたのだ。招かれざる客を引き寄せているのはほかでもない。「集団的自衛権」だ。
 
●チャンスは1秒

通告によるとロケットは北朝鮮西部の東倉里(トンチャンリ)から南方へ発射。1段目は韓国西方の黄海に落下し、その後、フェアリングと呼ぶ衛星のカバー部品が韓国・済州島の南西沖に、ロケットの2段目はフィリピンのルソン島の東方沖に落下するとしている。
本当にそうならまだいい。しかし、仮にこれが米国を標的にしていたならどうか。核弾頭を装備している可能性もゼロとは言い切れない状況で当然、日本は同盟国である米国を守る「義務」が発生する。迎撃命令が出ることは必至だ。
問題はここからだ。果たして日本はICBMを打ち落とせるのだろうか。
ここで興味深い材料がある。韓国の東亜日報※が掲載した社説だ。「北朝鮮の弾道ミサイル、韓国領空を通過すれば迎撃できるのか」というものだが、ここで東亜日報は2014年5月に韓南(ハンナム)大学のチェ・ボンワン教授が国会で公開してシミュレーションを紹介している。北朝鮮が射程距離1000キロのノドン・ミサイルに1トンの核兵器を搭載して発射した場合、675秒(11分15秒)でソウルに落下するというのだが、この675秒のうち551秒は大気圏外にあり迎撃は不能だというのだ。しかも、大気圏内に入っている124秒のうち、PAC―3(パトリオット)打ち落としが可能な高度(12から15キロ)にあるのは、たった1秒しかない。迎撃はかなり難しいと指摘している。

●日本に定められた照準

ただ、社説では防衛技術が韓国よりも10年進んだ日本の場合は、ミサイルを打ち落とせる範囲が広くなると指摘、北朝鮮からの距離もソウルからさらに延びるため、ミサイルを迎撃できる時間はかなり増えるという。社説では、韓国もこうした事態に踏まえて装備を充実させる必要があると示唆しているのだが、それでは韓国からお手本とされる日本は安心していられるのだろうか。そうはいかない。
確かに東亜日報が言うように日本がミサイルを迎撃できる時間は韓国に比べて格段に多くなるが、秒単位の話でしかない。ミサイルを打ち落とせる確率は上がるが、100%ではない。それどころかその半分にも満たないという専門家もいる。

●今、危機はそこにある

にもかかわらず、そのミサイルが米国ではなく日本を標的にしていたとしたらどうだろう。米国に向かうミサイルを撃ち損ねても、日本自体に被害が及ぶことはないが、照準が日本に定められているとするなら話は別だ。しかも核弾頭を搭載していたとしたら……。「そんなこと、あるはずがない」。昨年までは確かにそうだったかもしれない。しかし、集団的自衛権を認めてしまった以上、北朝鮮からしてみれば日本は米国と同格の仮想敵国に「格上げ」されてしまった。重要な変化が起きたのである。米国と一緒になって北朝鮮を攻撃してくることが法的に担保されたとなれば、北朝鮮も穏やかではいられない。米国と一緒に日本も叩いてしまう、それが自然だ。
その自然な北朝鮮の行動に対して、日本は防ぐ手立てを持たない。代わりに米国は日本という防波堤を強化することに成功した。ここに国民は気がつかなければならない。集団的自衛権を認め、米国との同盟関係は強化されたかもしれないが、日本はとてつもないリスクを抱え込んでしまったのだ。
果たしてどうなるか。仮に本当にミサイルが日本を向いていたなら、おそらくその結果をこのサイトに記すことはできないだろう。今、八岐大蛇は牙をむく。危機はそこにある。(了)

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東亜日報「[社説]北朝鮮の弾道ミサイル、韓国領空を通過すれば迎撃できるのか」より(February. 04, 2016 07:19한국어)→http://japanese.donga.com/List/3/05/27/522102/1