琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

人が犬を噛んだ

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    駆け出し記者のころ。先輩から「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛めばニュース、ニュースとはそういうもの」と教わった。もしこれがニュースの本質を言い当てているのだとしたら「川内原発が通常に稼働」がなぜニュースなのか。
 
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●「何もない」ことがニュースの狂気

14日午後9時26分ごろ、熊本県益城町震度7地震が発生、西日本の広い範囲で揺れが観測された。気象庁震源地の規模は同県中部で、地震の規模はマグニュチュード(M)6・5と発表した。家屋倒壊や死者もでているというから現地はさぞかし大変な事態になっているのだろう。
 NHKはもちろん民放各社もリアルタイムでニュースを刻々と届けてくるが、画面の下に「九電川内原発鹿児島県)に異常なし」「玄海原発、異常なし」と字幕スーパーが流れるのはかなり違和感がある。原発に異常なし?あたり前ではないか。
 ひょっとして後ろ暗いとろでもあるのだろうか。そう。ある。九州電力川内原発を再稼働する際、重大な手抜きをしているのだ。「免震重要棟(後で耐震構造に変更)」の不備だ。重大事故が発生した際、現場で混乱の収拾を図る最重要拠点である免震重要棟を建設しないまま原発を再稼働させているのだ。原子力規制委員会も「将来、この免震重要棟をつくる」ことを条件に再稼働を認めており今現在はこの免震重要棟は存在しないのだ。
 ということは、今回の熊本県の大地震により川内原発で何か事故が起こっていれば、その対応を指揮する拠点すらない。あれほどの大混乱を招いた東京電力福島原発ですら免震重要棟はあった。曲がりなりにも責任者が集結し、事態を収拾するための最前線の基地はあった。
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●走り出したブレーキのない車

 川内原発にはその免震重要棟ない。「将来つくるならそれでいい」と再稼働が認められた。その当時も「では、免震重要棟が完成する前に事故がおこったらどうなるのか」との指摘はあったにもかかわらず、静かに見過ごされ再稼働に至っている。
 ブレーキがない車が走り出しているのである。ブレーキは「将来、つけるから」という条件つきで「それなら安全」と太鼓判をおされ走り出している。今、急に目の前に人が飛び出せばとまる術はない。川内原発も同じだ。今、ここに何か事故がおこれば対応する術はない。前線で指揮をとる拠点すらない。
 今回はたまたま何も事故は起こらなかった。少なくとも現時点ではだ。しかし、明日は分からない。それでも川内原発の火は燃える。その火の危険にさらされているのは今回の熊本県地震で亡くなった人の何倍もの人の命である。今、この瞬間もだ。(了)
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〈免震重要棟の重要な役割〉