琴言譚[きんげんたん]

今、救世主なら語る

鳴かぬなら殺してしまえ、原子力規制委

   権勢を誇った秦の始皇帝が最後に求めたのが不老不死の妙薬だった。その薬を探すよう命を受けた徐福(じょふく)は「薬を探す」と偽り、命からがら日本にたどり着いたとされる。傲(おご)るものの滑稽さは本人には分からない。「時間を克服することなど人には出来ない」という当たり前の道理さえ見失う。だが、もっと怖いのはその無謀な挑戦を止める者がいない社会だ。
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原子力規制委、40年超運転を認可

4月20日。原子力規制委員会関西電力の老朽原発、高浜原発1、2号機(福井県)が新基準を満たすとの判断を示した。これにより高浜原発の運転延長が認可される可能性が高まった。実現すれば、運転から40年を超えた老朽原発に火がともり続けることになる。
原発の寿命は原則40年。これが原則だ。その原則を曲げるには原子力規制委員会の認可が必要だが、関電は今回そのお墨付きを得たことになる。稼働までに後いくつかの認可手続きを経ることになっているが「大きな課題は残っていない」とみられ、このまま何もなければ後20年の稼働が可能になる。
これまで40年原則を超えて運転した原発はない。高浜の運転期間延長が認められれば「原発寿命40年」の原則は有名無実化、周辺の住民の命が危険にさらされる。同時に「高浜モデル」が電力業界全体に広がり、老朽原発の長期運転に道が開かれてしまう。
もちろん原則には例外がつきものだ。しかし、まず例外からスタートする原則など聞いたことがない。ところが、原子力規制委員会の今回の動きはかなり不自然だった。関電の老朽化原発の長期運転を認めようという意思がありありなのだ。
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原子力規制委員会 田中委員長〉

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関西電力高浜原発を巡る経緯〉

●熊本地震のまっただ中の暴挙

それは今回の判断のタイミングを見ればよく分かるだろう。原子力規制委員会が認可を与えた4月20日はまだ九州の熊本で激しい余震が続いていた時期。川内原発鹿児島県)の周辺住民が福島第1原発の様子を思い出しながら恐怖に怯えていた時期である。
その時期にあえて老朽原発の運転期間延長を表明するなど、日本中を敵に回すようなもの。しかし、原子力規制委員会はそれをやらざるを得なかった。なぜなら、期間延長の判断の「期限」が7月に迫っていたからだ。これを過ぎれば高浜原発は「廃炉」となってしまう。この後、安全対策の認可、詳しい設計の認可、運転延長の認可を得なければならないことを考えれば、1日でも早く原子力規制委員会が認可を下ろす必要があった。
そしてその通り原子力規制委員会は認可を下ろした。期限から逆算し、高浜原発が時間切れで「廃炉」になることを避けた。
こうなれば原子力「規制委員会」とはいったい何を規制しているのかという疑問がわいてくるのも当然だろう。先の川内原発でも絶対的に必要な重要免震棟すらない原発を「安全」として再稼働を認めた。今、この時点で川内原発地震に耐えられず水蒸気爆発を起こしたならどうするつもりか。丸裸の原発でいったいどんな対応がとれるというのか。
今回の高浜の件もそうだ。原発40年というのは長期運転による原子炉の壁の摩耗の度合いからみて科学的に「限界」とされる時間である。それをこえ運転させてもよいという。しかもかなり焦ってそう判断した。本当に大丈夫か。責任はとれるのか。福島第1原発ですらメルトダウンを防ぐことはできなかった。「ありえない」とされてきたことが現実になった。にもかかわらず「原発稼働ありき」でお墨付きを振りまき、国民の命を危険にさらす原子力規制委員会。何も審査せず、ただ現状を黙認するだけの機関なら必要はない。(了)