琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

200円カレーと5兆円

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      新潟市に本社を置く「原価率研究所」。この会社の売りは税込み1皿200円のカレーライスだ。年初にオープンした東京1号店には行列ができるという。漠然とした将来への不安を拭いきれないビジネスマンは生活防衛にやっきだ。そんな庶民を尻目に「株で5兆円もスッてしまった人がいる」というから驚きだ。いったい誰?

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●年金5兆円が消失


 答えを明かしてしまおう。その人とはGPIF、すなわち年金積立金管理運用独立行政法人だ。6月30日の運用委員会で2015年度の公的年金積立金の運用成績を厚生労働省に報告したところ、5兆円を超える運用損が発生したという。
 「5兆円なんて随分、景気のいい話だ」と笑ってはいられない。なぜなら、このお金、国民年金と厚生年金の積立金だからだ。国民が老後に必要な、どうしてもなくてはならないお金が、5兆円も消失してしまったのだ。見過ごしていいはずはない。どうしてこうなった。
まず、抑えておかなければならないのがGPIFが運用する積立金の規模だ。ざっと140兆円。日本の一般会計税収(2016年度=57兆6000億円)の2倍強にあたる。これだけのお金をGPIFは株式のほか、国債、外国株などで運用しているが、運用しているお金が年金であることから、これまで政府は運用益よりも安定性を重視してきた。変動幅の大きい日本株や外国株ではなく、利回りは低くても安定している国債などに比重を置いてきたのだ。
ところがだ。安倍政権がこれを一気に切り替えた。利回りが低い代わりにリスクも低い国内債券の比率を60%から35%にまで引き下げ、その一方で、株式での運用の比率をこれまでの2倍の50%にまで引き上げたのだ。大量の年金マネーが株式市場になだれ込んだのである。
年金マネーは株式市場で「クジラ」と呼ばれ、その流入は大いに歓迎された。株価上昇を下支えどころかけん引役となり、それがアベノミクスの成果としてもてはやされた。しかし、それもつかの間。昨年8月の、人民元の切り下げを受けた世界同時株安「チャイナ・ショック」の影響で、巨額の損失を出してしまった。ここに今後、英国の欧州連合(EU)離脱問題が追い打ちをかけ、損失はさらに拡大していくことだろう。

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アベノミクスのウソを暴け


アベノミクスの正体とは、とどのつまりが「円安と株髙」。結局それは国民のお金を使って演出されたに過ぎない。日本の経済が世界と無縁であるはずもなく、お金を無理に注入して底上げされたニセモノ相場は、中国や英国、欧州連合(EU)などが揺らぐたびに、震え上がる。皮肉にもそれはアベノミクスが標榜するグローバル化が、進めば進むほど直接的になる。
この5兆円の巨額損失は、アベノミクスのウソを見破る入り口となる。人様のお金を拝借し、それを使って自分の成果を演出するなど、なんと姑息なことか。国民はこの事実を見逃してはならない。櫛名田姫がまたアベノミクスという大蛇(オロチ)に食われたのである。5兆円も。さあ、どうする。アベノミクスはこれを反省することはない。株式市場に刺激を与えるため、さらにニューマネーを投入する政策をとるだろう。それを許すのか。見逃せば、すべてを食わせてしまうことになる。(了)

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