琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

タラちゃんが危ない

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政府の税制調査会が9月から所得税改革の議論を始める。最大の目玉は配偶者控除。専業主婦や年収が一定額以下の配偶者がいる世帯を抱える大黒柱の税金を軽くする制度で、安倍政権はこれを見直す方針。専業主婦がいる世帯だけを税制面で優遇する制度をやめ、主婦が働く世帯と平等に課税するという。一見、正論。しかし、サザエさんはタラちゃんを家に残し、働きにでなければならなくなる。

 

●狙われた配偶者控除


8日に開かれた政府の経済財政諮問会議では第3次安倍再改造内閣の重点課題について、議論がなされた。議題は「高額医薬品の価格算定手法の見直し」や「労働力人口の減少など経済構造の変化を見据えた成長力強化」などもっともらしいものが並んだが、このなかに混ぜ込まれたのが、配偶者控除の見直しだ。
経済財政諮問会議という、厳めしい名前の会議の目的は煎じ詰めれば国の歳出のカット。この会議で配偶者控除の「見直し」を議論するということは、国の支出を減らす方向で検討を進めることを意味する。すなわち配偶者控除の事実上の撤廃だ。実現すれば、専業主婦を抱えるサラリーンマン世帯への支援を打ち切るわけだから、そのままでは家計は苦しくなる。主婦は家事に専業していることは許されず、労働市場に追い立てられてしまう。

サザエさんは怠け者?


安倍政権ではこれを「女性活用」という。このまま専業主婦がいる世帯を税制面で優遇し続けることは社会の女性活用に反し、「女性の働く意欲を損なうことにつながる」と主張する。
しかしだ。サザエさんは「働く意欲がない」から家庭にいるのだろうか。マスオさんが国に支払う税額を圧縮するためにあえて家にいるのだろうか。それはけしからん、「1億総活躍社会なんだから、サザエさんも外に出て働け」というのか。ならば、タラちゃんはどうなる、タマのごはんは……。


●子供は2年は自分で育てろ 


こう考えると増税を盾に専業主婦を労働の場に駆り立てるのには無理がある。「いや、託児所がある。幼稚園がある」という見方もあるだろう。確かに今はゼロ歳から子供を預かる施設が都心にもある。しかし、簡単に考えてはいけない。子供はやはり少なくとも2年は母親が育てなければいけない。成人してからの人間性に欠損が生じる。人間性が固まる前に安易に外に放り出してはならない。たかだか1時間800円~900円を得るために、主婦が家や子供を犠牲にしてはならないのだ。
大切なのは庶民が一家の大黒柱をきちんと立てられることだ。中流階級であっても暖かい家庭生活を享受できる社会をつくるべきだ。もちろん高額所得者なら税制面の支援は不要だ。しかし、そうでない中流階級には、きちんと政府が税制面で生活を支援し、家を立てられるように応援してやらねばならない。

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●家が壊れる、国が壊れる


DODAのデータをみると20歳代の平均年収は349万円、30歳代で456万円。40歳代になってようやく572万円だ。どの世代も東京なら食べていくのがやっとだろう。妻が専業主婦で配偶者控除を撤廃されたなら、とても生活は成り立たず、子供をおいてパートに出るしかない。それを「1億総活躍」というなら、何とも浅薄な「活躍」だ。
安倍政権はいったい何を目指しているのか。このままだと家が壊れ、国が壊れる。(了)

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