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琴言譚[きんげんたん]

今、救世主なら語る

ジャパニーズ・トランプはいないのか

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「想定外」――。2016年を象徴する言葉を1つ挙げるとするなら、この言葉になるだろう。英国の欧州連合(EU)離脱、米大統領選でのヒラリーの敗北など今年は想定を覆す事件が勃発し続けた。しかし、目立たないが決して見過ごしてはならないのが日本が引き起こした「想定外」。戦後70年間、日本が担ってきた核兵器拡散の「楔」の役割を日本が放棄してしまったことだ。
 
●日本が世界を裏切った


その歴史的な瞬間は10月27日に起こった。国連総会で軍縮を話し合う第1委員会。核兵器使用を禁じる核兵器禁止条約の交渉入りに日本が異を唱えたのだ。「核兵器の使用がもたらす破滅的な結末を深く懸念する」とし、核兵器の使用を禁じるための法的拘束力のある禁止条約の必要性を議論することに「反対」する側に回ったのだ。
 安倍晋三首相は「今回の判断は簡単ではなかった」とコメントしたが、何のことはない。米国の恫喝に屈しただけのこと。実は米国は国連総会の前に密かに水面下で各国に圧力をかけている。北大西洋条約機構NATO)諸国に「核兵器禁止条約の防衛上の影響」なる文書を送りつけ、暗に採決時に反対票を投じるように求めていたのだ。当然、日本や韓国にも同様の圧力をかけきており、それに日本があっさり屈した。
 米国がそう言ってくる理由は要はこういうことだ。「誰のおかげで日本は平和を維持できているのか」。米国の核の傘の下に逃げ込んでいるから日本の平和は保たれているのに、その核を否定する「核なき世界」を推進する側に回るなどとんでもないというわけだ。
 主張はそれぞれあろう。しかし、日本は戦争被爆国である。一般市民が核兵器の犠牲にさらされた世界で唯一無二の国である。その立場と役回りを忘れてはならない。人々の日常を一瞬にして地獄絵図に変えた原爆の非人道性と酷さを身を持って体験した国が、その核兵器を肯定するなどあってはならないことだ。世界は日本に失望した。
 国際社会においてそんな当然の振る舞いができない国をだれが信用するというのか。自国の子供や老人、家族を殺した国にひざまずき、圧力に屈し媚びを売るような国をいったい誰が評価するというのか。

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●二流政治家はいらない


核兵器禁止条約の交渉入り決議に「反対」と唱えた国は、米国、英国などたった38カ国(日本を含む)。これに対して「賛成」は123カ国だ。安倍首相の十八番である「グローバル化」という観点で論じたとしても世界の趨勢は「核兵器反対」なのだ。世界主要列強国に日本が名前を連ねる心地よさに身をゆだねてはならない。
ここで日本は方向を転換するべきだ。核兵器廃絶に向けた議論は来年3月から国連で始まるが日本は正々堂々、被爆国としての論を展開しなければならない。岸田文雄外相は「現実的で実践的な取り組みをしなければならない」と発言、「現実的」で「実践的」な判断を優先する意向だが、それではいけない。二流の政治家にありがちな「リアリズム」志向、「長いものに巻かれろ」式で米国の意向を忖度(そんたく)しながら事を進めるということではあってはならない。

 

●卑しき「長いもの」


日本は是非、その「長いもの」の正体をよく見て欲しい。12月に起きた普天間基地沖縄県宜野湾市)所属の新型輸送機オスプレイ名護市沖で不時着・大破した事故はそれを考えるうえで、有力な材料の1つだ。事故原因は空中給油の訓練中の乱気流などによるトラブルということだが、米海兵隊の主力輸送機オスプレイは導入当初から操作性の難解さからその安全性が疑問視されてきた。今回の事故はその懸念が単なる憂慮ではなかったことの証しにほかならない。
万が一、事故現場が今回のような海岸ではなく住宅街であったならその被害は計り知れなかった。当然、徹底検証されその結果が日本側に提供されてしかるべきだが、日米地位協定があるために日本は事故現場に近づくことすら許されない。せめて事故の原因が本当に気象条件によるものだったか、かねてから指摘されてきたようにオスプレイという機体そのものにあるのか、徹底検証されるべきだ。
しかし現実は違う。「安全性が確認できるまで運用を一時停止する」としていた在日米軍は日本側の意向を完全に無視、事故からたった6日後に飛行を再開してしまった。この対応に沖縄県側の怒りはいまだおさまっていないが、その神経を逆なでするように国は2017年度予算案でオスプレイの取得費391億円を計上している。
この顚末で分かるのは、米国が日本という国に対する最低限の礼節を失ってしまっているという事実だ。日本国の住民の安全など全く眼中に入っていない。その米国に日本が卑しいまでに尾を振っている。

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オスプレイの機体の残骸を回収する米軍関係者=15日午後、沖縄県名護市安部 

●GDP2位国のプライドはないのか


背景にあるのはトランプ次期大統領が言う通り「日本をただで守ってやっている」という意識だ。「守ってやっているのに何の文句があるんだ」という考えだ。この強弁に日本は怯えている。「米国が撤退したら日本は丸腰になる」と震えている。
本当にそうか。日本はそれほど弱い国なのか。GDP(国内総生産)で世界2位の国が自国を自分で守れないはずはないだろう。発想を変える時だ。ここまで卑屈になる必要がどこにある。ジャパニーズ・トランプはいないのか。でてきて欲しい。そしてこう言って欲しい。「米国よ出て行け。自分の国は自分で守る」            (了)