琴言譚[きんげんたん]

今、救世主なら語る

日本郵政が踏んだ東芝の轍(てつ)

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日本郵政が大変だ。2015年に買収したオーストラリアの物流会社の業績が振るわず17年3月期の連結決算で数千億円規模の損失を計上するという。場合によっては最終利益のかなりの部分が吹き飛びかねない。民間から人材を招聘(しょうへい)、その揚げ句の巨額赤字は単なる経営判断のミスでは済ませられない。ことは国家の問題なのである。
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毎日新聞日本郵政グループの業績推移」より
日本郵政が巨額損失
問題のオーストラリアの物流会社とは「トール・ホールディングス」。オーストリアでは最大の物流会社で2015年、6200億円もの巨費を投じて買収した。民営化していなければとても考えられない大型買収で、当時は利益率が低い国内の郵便事業を補完するための攻めのM&A(合併・買収)とされた。
 皮肉なことに当時の社長は西室泰三社長、東芝の元社長である。買収を発表した2015年2月の時点で「トール・ホールディングスは事業を補完できる最高のパートナー」と自画自賛、得意の絶頂にあったが、それがまるで噓のよう。わずか2年あまりで巨額損失の計上を迫られることになった。
 それにしても、「大枚はたいて買ったはいいが、蓋を開ければ経営を揺るがしかねない、とんだ金食い虫だった……」とは、どこかで聞いたような話ではないか。そう、西室氏の出身母体である東芝だ。世界の原発ビジネスを牛耳ろうと社運をかけて傘下に収めたウエスチング・ハウス(WH)に完全に経営をむしばまれてしまった東芝の二の舞を、日本郵便が演じてしまったのである。

 
※2017年3月14日 東芝の綱川 智(つなかわ さとし)社長【写真】

●ウエスチング・ハウスの二の舞
 そもそも最大手とはいえオーストラリアの物流会社に6200億円とは「あまりにも高い買い物」という声は当時からあった。鉄鉱石など資源安を背景としオーストラリア経済の低迷で、その高値づかみを修正せざるを得なくなったわけだが、これも全く東芝のWH買収と同じ構図である。
 ただ、東芝日本郵便が違うのは、東芝は倒産しても国民は悲しみはしても困りはしないが、日本郵便が揺らげば大変な痛手を被るということだ。つまり、国富が痛むのである。いくらインターネット時代だとはいえ、郵便事業は日本になくてはならない大切なサービス。都会に出た一人息子を心配する田舎の母親に、息災であることを知らせる唯一の手段なのだ。

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●国民はただ泣く
 この日本列島の動脈を痛めてはならない。泥船の原発企業に社運をかける巨大M&A(合併・買収)をしかけるようなセンスのない東芝程度が、手を触れてはならない国の宝なのだ。1民間企業の経営者の蛮勇に翻弄されてはならない。
 なのにこの国はそれを許した。推奨すらした。民間企業の出身者に経営をゆだねることこそ、グローバル化の流れにそった最善の方策だと言い続けた。それがこの結果だ。
いったい東芝の西室氏は責任をとってくれるのか。3000億円、場合によってはもっと膨らむ可能性がある損失を東芝や西室氏が補塡できはしない。結局、そのツケは国民に回る。そして、国民が泣くのである。(了)

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※(参考)西室泰三(にしむろ たいぞう)氏 経歴

誕生日:1935年12月19日
年齢:81歳
出身地:山梨県都留市
出身校:慶應義塾大学経済学部
職業:実業家

経歴
2000年6月東芝代表取締役 取締役会長
2005年6月相談役。
2005年6月株式会社東京証券取引所取締役会長
2010年6月東京証券取引所取締役会長を退任
2010年11月慶應義塾評議員会議長(任期:4年)
2013年6月日本郵政取締役兼代表執行役社長
2015年レジオン・ドヌール勲章オフィシエ受章
2015年4月ゆうちょ銀行取締役兼代表執行役社長
2015年7月東芝不正会計処理問題が発覚
2016年2月検査入院開始
2016年3月日本郵政代表執行役社長を退任。東芝相談役を退任し新設の名誉顧問に就任
2016年6月日本郵政取締役、日本郵便取締役、ゆうちょ銀行取締役、かんぽ生命取締役、各任期満了退任