琴言譚[きんげんたん]

今、救世主なら語る

今度は野村不動産ですか

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話が違うではないか。日本郵政だ。「経営の効率化が遅い」「グローバル化が進んでいない」。だから、プロが稼げる体質に転換するのではなかったのか。なのに儲けるどころか、2017年3月期の連結最終損益は400億円の赤字に転落した。2007年の郵政民営化以来、初の赤字だというが、事は国民の財産の話である。「こんなこともあるさ」ではすまされない。


●ドブに捨てた4000億円
「過去のレガシーコスト(負の遺産)を一気に断ち切る」――。4月25日の日本郵政の記者会見。長門正貢社長の言葉は何だか勇ましいが、こんな言葉を田舎の老人たちが理解できるだろうか。いいことなのか、悪いことなのか。それすら分からない。結論を先に言おう。とんでもないことだ。国民の資産を4000億円もドブに捨てたのだ。まず国民に詫びろ。
ことの発端は2015年、日本郵便を通じてオーストラリアの物流子会社トール・ホールディングスを6200億円で買収したこと。当時の社長は東芝出身の西室泰三氏で時価総額の1・5倍の価格で買収した。「少し高かった」と長門氏は言うが、その出所はゆうちょ銀行とかんぽ生命の含み益だ。いわば庶民が託したお金を回して蓄えたお金を「まんまと外資にさらわれた」のだ。「少し高かった」どころの話ではない。
今回はそのとんでもない割高な買い物のツケを一気に払った。本来なら20年かけて償却するはずだったトールのブランド価値、つまり「のれん代」を一括で支払った。だから赤字になったのだ。ただ、それだけのことだ。20年ローンで買ったバカ高い買い物のツケを1回払いで支払った。それを「レガシーコストを断ち切る」と見栄を切ってみせた、それ以上の意味はない。
それにしても自分たちで作った借金を国民のお金で精算するとはいったいどういう了見か。長門氏は「責任をとって」6カ月間、20%の役員報酬を返上するというが、例え1カ月の給与が500万円としても、1カ月で100万円。その6カ月分で600万円。個人としては大きなお金だが、あれだけ「リスクが高い」とされたオーストラリアの物流会社を高値づかみし、4000億円をもの損を出しておきながら600万円の減給でカタがつけられるはずはない。ことは国民のお金の問題なのだ。

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●まだまだ買う
ところが、長門氏はまだまだ買うという。今、着手しているのは野村不動産ホールディングス(HD)の買収だ。いったいいくらになるのか、その詳細は明らかになっていないが、1000億円や2000億円の単位ではすまない買い物になることだけは間違いない。そもそも野村不動産HDなど株価は高いが会社にはみるべき資産など何もない。これといったオフィスビルも商業施設ももたない。あえていうなら東芝不動産だ。東芝の経営が厳しくなったおりに、取得したもので、これとてピカピカの資産を持っているわけではない。それなのに不動産に手を出してどうする。日本郵政の手に負える代物ではない。
長門社長は「マネーが不動産に向かっているリスクがこの業界にはある。その点を十分に勘案して分析しないと危ない」というが、この言葉の意味もまたよくわからない。「マイナス金利だからなかなか儲けられない。そう考えると不動産部門は比較的、儲けられる。他のみんなもお金を不動産に投資して儲けている。だから日本郵政も、不動産に投資して、そこできっちりと儲けないと、稼ぎ損なう。稼ぎ損なったら大変だから野村不動産を買う」とそういいたいのだろうか。それなら、そう言葉でいうべきだ。金融のプロのように振る舞いながら、難解な言葉で庶民をけむに巻くのは許されない。なぜなら、日本郵政は一般の民間企業とは違うからだ。日本郵政にかかわる庶民にきちんと分かる言葉、丁寧に説明する責任があるのだ。ステークホルダーは庶民だ。投資家ではない。
それはそれとして、このご時世で野村不動産の買収とは「筋の悪い投資」ではある。「プラウド」に代表されるマンション事業も表面はよくても内情は火の車。会社は認めないが、在庫はつみあがり、裏では値引き販売のラッシュを続けている。おそらく長門氏はそれも知らないはずだ。不勉強を難解な言葉で糊塗※(こと)し、庶民の金をドブに捨て続けることだけはご勘弁願いたい。(了)

※【糊塗】(こと)…一時しのぎにごまかすこと。その場をとりつくろうこと。 「うわべを-する」