琴言譚[きんげんたん]

今、救世主なら語る

北朝鮮との戦争、始めました

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    分かってはいた。しかし、言われてみればやはり衝撃だ。9月19日、小野寺五典(いつのり)防衛相の記者会見での発言。北朝鮮を巡る有事対応について「緊急の場合の事後承認制度がある」と語ったのだ。その言葉の意味は、つまりこういうことだ。「北朝鮮の中距離弾道ミサイルが飛んできたので、国民を守るために撃ち落としておきました。戦争?ああ、それももう政府の判断で始めてます。これも国民を守るためです。国民のみなさんは、ご承認だけお願いします」
 
北朝鮮のミサイル迎撃、事後承認で
恐ろしいことだが空想ではない。小野寺防衛相の発言は安全保障関連法で可能となった新任務を行う場合の国会承認について、「事後承認制度があるから大丈夫」との見解を示した。何が大丈夫なのか? 要するに北朝鮮が米国のグアムに向け中距離弾道ミサイルを発射した場合、米国と同盟関係にある日本が国会の事前承認がなくても北朝鮮のミサイルを米国に代わって撃ち落とすことは法的に問題はないというだけのことだ。国民には後から知らせ、承認させるだけで法的には済む。
 通常なら中距離弾道ミサイルを撃ち落とすような高度に政治的な判断は国会での承認を原則とする。ところが実際は非現実的だ。ミサイルが飛んでくるような緊急事態時に、えっちらおっちら国会議員を召集して議論し、最終的に「そういうことなら、ミサイルは撃ち落としますか」。そんな悠長なことをしている余裕はない。何せ、日本の上空をミサイルが飛ぶ時間は数秒なのだ。
 従ってミサイルを撃ち落とす時は何時だって緊急事態なのである。「事後承認」のロジックは常に成立する。国会に諮らず政府のほうで勝手に撃ち落としても「緊急事態だったから」と、後から承認を求めれば法的には問われることはないのだ。だから小野寺防衛相は「大丈夫」と述べた。たまたま今回は9月28日招集の臨時国会冒頭に衆院を解散、選挙に突入するという事態が想定され「こんな時に……。もし、北朝鮮からミサイルが飛んできたらどうするのか?」という質問が投げかけられたから明白になった。

 

●撃ち落とせば北朝鮮は黙っていない
 ただ、日本として法的に問題がなくても「ではそれで安全か」となれば答えは違ってくる。なぜならミサイルを撃ち落とされた北朝鮮にとっては大問題だからだ。北朝鮮が米国をめがけ本気で撃ち込んだミサイルを日本が米国の代わりに途中で撃ち落とすのである。ただで済むはずはない。北朝鮮にとって日本の行為は脅威であり戦闘行為と映る。
何せ朝鮮にとって米国は敵なのだ。「日本など単なる米国の番犬だ」と見ていたとしても、米国に命じられ誰よりも先に北朝鮮に噛みついたとしたら、もはや放ってはおけない。それを政府は分かっているのだろうか。
 日本政府もバカではない。理解はしている。問題は断れるかだ。米国が正式に「次に北朝鮮からミサイルが飛んできた時は撃ち落とせ」と要請してきた時にはねつけられるかだ。「集団的自衛権」を日本政府が認めてしまった今、論理的にはかなり難しい。米国に対し「同盟国だからそうしたいのは山々だが、自国の防衛しか認められていないので無理だ」とは言えない。日本と密接な関係、つまり同盟関係にある米国が攻撃されることは、日本の存立が脅かされることと同じであるとする「存立危機事態」という考え方に立てば、米国を守ることは日本を守ること、「集団的」に「自衛する」ためのミサイル迎撃要請は断れない。
 こうなれば「集団的自衛権」は、「米国に日本を守ってもらう」という都合のいい話だけでは済まなくなる。こと北朝鮮との問題においては極めて日本が不利だ。米国の盾になることを常に求められる。そして、それこそが米国の思惑であった。最初から北朝鮮問題解決のため日本の「集団的自衛権」を認めさせ、米国の身代わりにする作戦だったのだ。安倍政権は、まんまとその罠に引きずり込まれてしまった。

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日本海では使い走り
 今、日本海自衛隊が米国に何をさせられているか。それを紹介すれば、いかに日本が屈辱的な立場におかれているのか、ご理解頂けるかもしれない。海上自衛隊北朝鮮の弾道ミサイル防衛(BMD)を担う米イージス艦に給油をさせられているのである。しかもその事実を国民に明かにすることも許されない。なぜなら「米国の行動に関わる」(河野克俊統合幕僚長)からだ。ささいなことでもそれを公表することで米国の行動を北朝鮮に気取られてしまっては大変、だから明かせないのだ。
 しかし考えてみて欲しい。米イージス艦に日本がせっせと給油すれば、北朝鮮から「米軍と自衛隊は一体」と見なされても仕方がないではないか。しかもそれほど日本がリスクを冒して米国に尽くしても、トランプ大統領は決して感謝はしない。問題は「米国民は大丈夫」かどうかだからだ。
 米国に気に入られたい、それだけ日本国民を危険にさらす、今の安倍政権に本物のプライドはあるのか。使い走りさせられ、揚げ句に北朝鮮からは敵とみなされ攻撃される可能性はないのか、それすら考えようとしない。
はっきり言っておく。日本が攻撃されたからといって米国は決して北朝鮮を攻撃することはない。仮に米国が北朝鮮を攻撃すれば、日本と同じように今度は米国が攻撃されてしまうからだ。その現実を見つめなければならない。(了)