琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

軽く1丁あがりのトランプ訪日  


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 「スコアは国家機密だ」――。トランプ米大統領とのゴルフを終えた安倍晋三首相は記者団にこう語り笑いを誘った。しかし、安倍首相が本当に国家機密にしておきたかったのは翌日の貿易不均衡を巡るトランプ大統領とのやり取りだっただろう。北朝鮮情勢が緊迫してきたことを理由に防衛力強化を迫られ、弾道ミサイルなどの購入を約束させられたのだ。弾道ミサイルなど日本の防衛上、何の意味も持たない。ゴルフをおつき合い頂いた見返りに何千億円もの無用の長物の購入とは……。ゴルフがやりたければ国家予算を使わずに自分の金でやって欲しい。

 6日、トランプ米大統領安倍晋三首相の共同記者会見では、対日貿易赤字を巡る立場の違いが鮮明になった。トランプ氏は「日本の貿易赤字を減らしていかなければならない」と日米の貿易不均衡問題に言及、さらに日米自由貿易協定(FTA)の直接的な言及は避けたものの「公平で自由で互恵的な貿易関係を築いていきたい。平等で信頼できるアクセスが米国の輸出品に対して必要だ」と強調した。要は「今後、日本に対して貿易不均衡を是正するための具体的な措置を要求していく」ということだ。「こんなことなら、昨日のゴルフは何だったのか」。安倍首相はそう言いたかったに違いない。
 
●完敗の日本
 しかも、話はここで終わらなかった。さすがトランプ米大統領は役者が何枚も上手だ。一気に「安倍首相は様々な防衛装備を米国からこれから購入することになるだろう」と畳みかけ、「そうすれば上空でミサイルを打ち落とすことができる」と言及、安倍首相を追い詰めたのだった。渋々、安倍首相も「北朝鮮情勢が厳しくなるなかで、日本の防衛力を質的に量的に拡充していかないといけない。(弾道ミサイルやF35戦闘機を)米国からさらに購入することになる」と応じざるを得なかった。
 米国にしてみれば「毎度あり」。日本側とすれば完敗なのである。米国がたてつけた北朝鮮情勢の緊迫を理由に、まんまとはめられ、必要もない高額な武器を買わされたのだった。だいたい日本の「上空でミサイルを打ち落とす」必要がどこにあるのか。そのまま通過させればいいではないか。打ち落として欲しいのはむしろ米国の方だろう。日本に金を出させ、防衛力を強化させたうえで、米国を狙って発射された北朝鮮のミサイルを打ち落として欲しいだけのことだ。
 そもそもだ。米国と北朝鮮の小競り合いに日本が入っていく必要は全くない。北朝鮮は日本など相手にしてもいない。わざわざ米国の尻馬に乗り騒ぎ立て、大国気取りで北朝鮮を非難する。その実、欲しくもない武器を「いらない」とすらいえない弱虫の日本など、北朝鮮の敵ですらないのだ。
 この後、トランプ米大統領は、1強体制を盤石にした中国の習近平氏との対決が控える。今回の訪日は、その前にまずは軽く日本を平らげただけのこと。「1丁上がり」。そんな声が聞こえてくるようだ。(了)