琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

実感なき「いざなぎ越え」のワケ

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    今景気は絶好調である――。そう言えば驚く人も多いだろう。内閣府は9月の景気動向指数(CI、2010年=100)の基調判断を「改善を示している」に据え置き、2012年12月から始まった景気回復期が58カ月間と高度成長期の「いざなぎ景気」を超え戦後2番目の長さになった。しかし、これほど実感を伴わない好景気があろうか。富裕層や企業は将来の不況にそなえ、現金を貯め込むばかり。庶民に全く回ってこないではないか。

 

●「外」頼みのアベノミクス
内閣府の発表を受け市場(マーケット)は反応、東京株式市場では日経平均株価が一時、1992年1月以来、25年10カ月ぶりとなる2万3000円台に乗せた。世界経済も堅調、日本経済もいい、企業業績も過去最高を更新と良いことづくめなのに、なぜこれほどまでに空々しく響くのか。

まず、この好景気の起点だが、これは第2次安倍政権の発足時。今回の好景気が「アベノミクス景気」と呼ばれる所以(ゆえん)で、堅調な世界経済を背景に緩やかながらも長期にわたり指標となる経済的データが上向いている。

特に大きいのは二つ、一つは企業の輸出、そしてももう一つは訪日外国人と富裕層がけん引した消費だ。結局は「外部」の力頼みなのである。


これこそがアベノミクスの正体であり真骨頂である。要は「円安」の恩恵を被ったものだけが、得をするのである。つまりそれは自動車や家電製品の輸出で稼ぐグローバル企業と呼ばれる大企業、そして外国人に商品を買ってもらって潤う商売人たちだけ。庶民は全くの蚊帳の外に置かれるのだ。

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●「円安」を庶民の金で買うな
ただ、庶民にお金が回ってこないというだけならまだいい。庶民は何も贅沢をしたいわけではない。問題なのは大企業や商売人たちがきっちり稼ぎやすいよう円安の状態をつくるために、庶民の金がまるであぶく銭のように使われていることだ。

円安の状態は日本の長期金利を0%程度に誘導することで保たれている。この状況を維持するために日銀は日々国債の購入量を調整、長期国債を購入し続けており、今やその額は「年間で80兆円程度」。もちろん上限はあるが、この天文学的な資金を使って円安の状態を維持しており、このお金は結局、巡り巡って庶民につけ回されるのだ。

庶民に実感のない「アベノミクス景気」を演出するために、庶民の金があぶく銭のように使われる――。そんなバカな道理はないではないか。これは経済政策でもなんでもない。庶民の金を大企業と商売人にこっそり付け替えているだけのことなのだ。
まず、そこを見抜かなければならない。「安倍政権が維持されれば景気は上向く」。これはまやかしだ。

しかし、もっと知っておかなければならないのは、まやかしの好景気の先に何があるかだ。今の好景気が人為的につくらていることなど、経済人なら誰も知っている。それを誰も言わないのは安倍政権を長期化させ、そこで稼いだ時間を使って憲法9条を改正させことを狙っているためだ。今、経済界は戦争をしたくて仕方がない。戦争は金になる。その魂胆を庶民はきちんと捕捉しておく必要がある。(了)