琴言譚[きんげんたん]

今、救世主なら語る

どこか卑屈だ、郵便局

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「違うんだよな」と言いたくなる。日本郵便が4月から全国の郵便局で訪日外国人向けのサービスを本格的に始めるという。全2万の直営局に翻訳システムを導入し、窓口での外国人の接客対応を向上させる。いったいどこにそんなニーズがあるというのだろうか。日本は全国津々浦々、外国人が徘徊(はいかい)しているような国になるつもりはない。

 

 翻訳システムは4月に導入する計画だとか。情報通信研究機構(NICT)の翻訳エンジンなどを使って自前のアプリを開発。タブレット端末を通じて音声を吹き込めば、自動的に翻訳できる仕組みをつくる。英語・中国語・韓国語に対応し、ゆうパックなどの商品名や郵便の専門用語も簡単に訳せるようにする。このほか、都市部や観光地の郵便局では有料で荷物を預かり、ホテルなどへ配送するサービスも始める。全国に広がる郵便局網を生かし、増加する訪日客の利便性を高める狙いだという。

 確かに外国人にとっては便利だろう。日本人の観光客ですらやってこない寒村に、ぶらっと外国人が訪問、郵便局に立ち寄り言葉が通じれば感激するかもしれない。しかし、その確率は1%にも満たないだろう。そんな「まさか」に備えるために、なぜ日本が翻訳機を完備しておかねばらないないのか。

●日本は植民地にあらず

 日本は米国や中国の植民地ではない。日本に興味を持ち訪れてくれた外国人なら、片言でも日本語を話せるはずだ。少なくとも話そうとはする。用があるのは向こうなのだ。英語や中国語で話しかけられ、舞い上がってオタオタする必要などまったくない。「分からない」なら「分からない」と日本語で正々堂々、言えばいい。ここは日本なのだ。

 日本の政府は2017年で約2800万人だった訪日客を2020年に4千万人にまで増やす方針。地方へも積極的に訪日客を呼び込んでいくといい、郵便局のグローバル対応はこの流れのなかでは必然のように思えるかもしれない。

 だが、やはりおかしい。どこか卑屈、しかも、無意味だ。そもそも訪日外国人が日本に落とすお金は年間4兆円。郵便局がどれだけがんばっても1%も増えないだろう。日本の借金が1000兆円をはるかに超えるという時代に、日本の美しい田園地帯の生活を犠牲にして小銭を稼いだところでどうにかなるものではない。時代に合っているようで、合っていないのだ。

思い出して欲しい。日本郵政グループは2015年に買収した豪物流子会社トールを巡って、今年4月に約4000億円の巨額減損を出したばかり。今度は火傷をしないよう、M&A(合併・買収)を引っ込め、地道に小銭を稼ぐつもりかもしれないが、実はM&A(合併・買収)以上に採算性が低く、そして危険かもしれない。 (了)