琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

ローマは休日で滅んだ 2

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   2019年の5月1日が祝日となる。天皇陛下の退位と皇太子さまの新天皇即位がかさなる重要な日であるというのがその理由。おかげで来春のゴールデンウィークは10連休となる。「さすが安倍首相。働きバチの日本人も公式に休日となれば、大手を振って休むことができる。新天皇の即位を祝うというなら誰も反対する人はいまい」と歓迎する向きは多いかもしれない。しかし、ちょっと待った。日本は世界で1番の祝日大国なのだ。経済力は落ちる一方、それなのにさらに休みを増やして大丈夫なのか。「ローマは休日で滅んだ」のですぞ。


●来年は10連休
5月1日を祝日とする方針は2018年4月12日、安倍首相が正式に発表、来年の大型連休は10連休とする方針も表明した。5月1日のほかに新天皇の即位を国内外に宣言する「即位礼正殿の儀」が行われる2019年10月22日も同様に休日とする。いずれも来年限りの措置で、政府提出法案を臨時国会に提出する見通し。「休日の大盤振る舞い」といったところだ。
しかし、ここで気をつけて欲しい。実は日本の祝祭日の日数は、諸外国と比べて群を抜いて多い。サガンの『悲しみよ こんにちは』よろしく、バカンス大国のイメージの強いフランスだが、実際は年間9日。米国ですら10日だ。これに対して日本は欧米勢より1週間以上長い17日。同じアジア勢の香港が13日、シンガポールが11日と続く。
もちろん休みは祝日だけでなく有給休暇がある。こうなると事情は異なる。フランスでは有休付与数、消化数とも30日で100%消化している。スペイン、ブラジル、オーストリア、イタリアも取得率は高く、日本は付与数20日、消化数10日。取得率50%だ。 
これらの祝祭日と有給休暇を合わせた休暇日数合計を見ると、やはりフランスやスペインが39日と長く、「何だそういうことか」と合点がいくが、それなら日本が極端に短いかというとそうでもない。日本は27日。中位で米国の24日、シンガポール25日、韓国17日と比べると相当、長い。
こう考えていくとこれ以上、休日が増えるのは危険だ。ついこの間までは「勤労は美徳」だったはずなのに今はすっかり「働き方改革」で長時間労働は悪。遅くまで残っている社員は「無能」「手際が悪い」といった目で見られかねない。日本はいったん軸が振れると国全体の雰囲気が一気に変わる。「休め」「休もう」「休むべき」はそろそろ終わり。生真面目な日本人に回帰すべきだ。

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●借金大国がなぜ休む
それでなくてもGDP(国内総生産)は中国に抜かれ世界3位。電機も自動車も、世界で断トツだったものづくりの力が弱りつつある。そして何よりも世界に冠たる借金大国ではないか。ライバル関係にある韓国よりも10日も多く休んでいる場合ではない。足をとめてはいけないのだ。
「日が沈まぬ大国」とされたローマも結局は慢心で滅んだ。人々は働かず、享楽にふけり、贅を楽しみ、そして滅んだ。日本もその轍にはまりつつあるのではないか。そもそも新天皇の即位を祝するとは言うが、この国を新しい船出を見届けようと日本にとどまる人はどれだけいるだろう。10日も連休ともなれば海外脱出組みがまた増えることは確実だ。休日を増やし、国民をレジャーに駆り立て、消費を増やす。一見、国は勢いを取り戻すかのように思えるかもしれない。しかし、怖いのはその先だ。休日はもう要らない。(了)

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コロッセオ(イタリア)…ローマ帝政期に造られた円形闘技場。イタリアの首都ローマを代表する観光地。