茨城沖に巨大油田、日本に石油はある
日本に石油は確かにある。2020年7月。それを裏付ける証拠がまた明かになった。東シナ海?いやもっと近く。茨城県北茨城市の五浦(いづら)海岸だ。ここに世界的な規模の油田がある可能性が出てきたのだ。
●埋蔵量950億立方㍍の巨大油田
五浦海岸は日本画の横山大観縁(ゆかり)の地。明治期の美術思想家、岡倉天心が終(つい)の住処としたことで知られる景勝地でもある。この海岸に分布する岩礁が、かつて周辺の海底に存在した石油・ガス田から湧出した天然ガスに由来することが明かになったのだ。埋蔵量にして950億立方メートル以上。巨大ガス田に匹敵する油・ガス田だという。
存在したのは1650万年前だが、それでは「今は枯れてしまったのか」というとそういうわけではない。その周辺の茨城沖に石油、天然ガス資源が存在するポテンシャル(潜在力)は十分にあるというのだ。
今回の発見は茨城大学大学院理工学研究科の安藤寿男教授(地質学)と北海道大学大学院理学研究院の鈴木徳行名誉教授らの研究チームによるもの。研究成果は国際学術誌「Marine and Petroleum Geology」のオンライン版と紙媒体で公開された。
●待たれる国の探査
調査では採取した岩礁に残留する微量のガスを測定、岩礁やガスに含まれる炭素などの同位体組成も分析した。その結果、炭酸カルシウムを構成する炭素のほとんどがメタンなどの天然ガスに由来することや、メタンから生成した重炭酸イオンが海水中のカルシウムイオンと結びついて炭酸カルシウムを形成したことを確認、原油が存在していた可能性が高いと推定されるという。
国は2019~2028年度に日本周辺の海域で5万平方キロメートルを目標に、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の探査船「たんさ」による地下資源探査を進めている。是非、この地下資源探査で今回、油田がある可能性が指摘された茨城沖も対象に加えるべきだ。茨城沖で石油があるとなれば、その経済効果は計り知れない。
アフターコロナは確実に動乱の時代だ。経済的困窮は必ずやってくる。追い込まれればそのフラストレーションは戦争へ、戦争へと国を追い込んでいくだろう。そうなる前に、大型の公共工事、国によるプロジェクトが必要で、その1つが国による油田の開発なのだ。ちょうどこのタイミングで油田が発見されたのだ。偶然ではない。国は動くべきなのである。(了)
イージス計画が停止、日本独自の迎撃システム構築の時
安倍政権の暴走にまた1つ修正が入った。陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画のことだ。政府は6月16日、「費用、期間を考えれば配備が合理的ではない」として米国からシステムを購入、これを配備する計画を停止すると発表したのだ。米国の顔色を気にして、必要性はさておき「まずはとにかく何か武器を米国から買う」ことから決まったこの計画は、すんでのところで「待った」がかかった。日本は自らの国は自らで守ることを考えなければならない。
●米国の顔色伺い導入決定
ことの発端は2017年11月の安倍首相とトランプ大統領の日米首脳会談。ここでトランプ大統領は「非常に重要なのは首相が(米国から)膨大な量の兵器を買うことだ」と日本側に要求、安倍首相も「米国からさらに購入していく」と応じたのだ。米国の言いなりの安倍首相の対応に、さすがに首をかしげる政府関係者も多かったが、当時、勢いに乗っていた安倍政権は翌月の12月には「イージス・アショア」の導入が閣議決定してしまった。
「とにかく買え」と言われて、買ったイージス・アショア。いったいどういうシステムなのか。まず製造は米ロッキード・マーチン社だ。イージス艦と同じレーダーやミサイルを使い、地上から飛んできたミサイルを迎撃するのだという。1基あたり700億円から800億円と巨額だが、これを2基導入し日本全域をカバーする計画だった。
これだけの買い物をよく吟味もせず即決するとは実に乱暴な話だが、米国の機嫌をとりたい安倍政権にとって追い風だったのが北朝鮮だった。2017年夏、北朝鮮は弾道ミサイルの発射を繰り返していて「防衛力を高めなければ」という機運が日本のなかで全体的に高まっていた。これが味方した。
ただ、決めてはみたものの実に不備が多い。それが河野防衛相の洗い直しの指示で発覚した。とりわけ安全性には問題が多くこのままでは「極めて危険」があることが明かになった。ブースター問題だ。
●ブースターが民家に落下
イージス・アショアは迎撃ミサイルを使って向かってくる弾道ミサイルを大気圏外(宇宙空間)で撃ち落とすのだが、ミサイルを空高く打ち上げる時に使う「ブースター」を途中で切り離す。ところが現状のままでは、このブースターを完璧にコントロールしきれないために、場合によっては切り離したブースターが集落に落下してしまう可能性があるのだという。
国民を守るための迎撃システムが逆に国民を襲う。まるでブラックジョークだが、現状のままでその可能性をゼロにできない。これを解消するためには2000億円規模の追加費用がかかるという。「それならば導入は停止」、ということになったのだ。
あえて「白紙」または「中止」とせず、「停止」という言葉を使うのは「またいつかスタートさせたい」という意図なのだろうが、実にナンセンスだ。日本はここでも米国依存を改めなければならない。日本を襲う弾道ミサイルが仮にあったとするなら、自らのシステムでこれを撃ち落とせる態勢を整えておくべきだ。日本のレーザービームの技術を使えば、それは可能だ。米国に払うお金があるくらいなら、それを研究開発に振り向ければいい。
米国に守ってもらう。そのためにお金を使う。そんな負け犬根性では世界は日本を尊敬しない。そこを考えなければならない。(了)
河野防衛相(右)の「イージス・アショア」配備計画停止の判断を、安倍首相は了承した(共同)
「アベノマスク」人のフンドシで人気とり
この国は大丈夫なのか。あまりに偏りが過ぎる。あまりに無防備に国を開き過ぎた。今回のコロナ禍はこれを浮き彫りにした。日本はそろそろ学ばねばならない。国づくりということを。国民を感染症から守るマスクの輸入比率が8割。これでは国は守れない。
■総額466億円。検品に8億円
総額466億円――。これがアベノマスクノのお会計である。加えて検品に8億円。550人の人員も配置し目視(目でみて)で選別したのだそうだ。しかも「アベノ」と名称をつけた割には、お金は国民の税金である。安倍首相が自腹を切り、ただで配ってくれるわけではない。なのにわざわざマスクに「アベノ」と命名する厚かましさ。何とも腹立たしい。
それにしてもお粗末な話だ。そもそもなんでこうなる。結論を先にいえば、外国に依存しすぎたからだ。日本衛生材料工業連合会の統計では2018年に国内で供給された約55億枚のマスクのうち、日本製はわずか2割で残りは輸入品。マスクの原材料となる不織布も、日本企業の比率が2割でほとんどが中国産という。これでは国は守れない。
実は新たなパンデミック(世界的大流行)のリスクは2年前に指摘されていた。安全保障や感染症の研究で知られる米ジョンズ・ホプキンス大学が2018年にまとめた報告書だ。同報告書は今世界を苦しめている新型コロナウイルスの登場をすでに予見している。呼吸器系に悪さをするRNAウイルス、つまり今、流行しているコロナウイルスなどに十分な注意が向けられていないと警鐘を鳴らしているのだ。
■感染症研究にぬかり
もし、この2年前の警鐘に日本が耳を傾けていたらどうだろう。ワクチンや治療薬の開発は間に合わなかったからもしれないが、投入の時期は2年前倒しできた。すくなくともマスクくらいは十分に確保できたいたはずだ。
起きてしまったことを後からいくら講釈してみても始まらないのは分かっている。が、466億円もかけてマスクを配るくらいなら、その半分でも日本国民の命を感染症から守る研究に振り向けるくらいの機敏さと賢さが必要だったのではないか。儲からないと判断したものは、外でつくらせる。そのうえで国を開いて外から買う。「国は開け、開け」。
しかし、いざとなればどうだ。日本に供給網は遮断され、たちまち自国民の命は危機にさらされる。国を熱心に開いた責任者は莫大な税金を湯水のようにつかってマスクをくばる。
滑稽以外の何ものでもない。そしてこの政権を支持し、延命させてきたのは国民以外の何ものでもない。(了)
コロナより怖い自給率37%
新型コロナウイルスの感染拡大が日本の「食」を揺るがそうとしている。世界最大の小麦の輸出国であるロシアが4~6月の穀物輸出量に制限を設定、セルビアやベトナムなども食糧の輸出に歯止めをかけ始めた。自動車や電気製品の輸出のため自国の農業を犠牲にし続けてきた日本だが、そのツケが最大の国難の今、回ってくることになった。
ロシアの2019年4~6月の穀物の輸出量の実績は720万トン。しかし、今年はこれを700万トンに制限する。本来、ロシアの場合、穀物に輸出制限を設けていなかったが、自国の食糧事情に配慮、輸出を制限するという。
セルビアもひまわり油やイーストの輸出を一時停止、世界3位の米輸出国のベトナムも米輸出の新たな契約を一時、停止した。専門家によると今後、食糧事情が悪化していくなら、こうした動きは他国にも広がる可能性が高いという。さあ、日本はどうなる。
●平時の常識、非常事態の常識
ここで問題なのは各国の輸出制限の動きにほとんど批判が出てないことだ。「自由貿易の拡大こそ正義」という流れにあったコロナ前なら身勝手な行為とされたかもしれない。
しかし、ことここに至ってでは、各国政府が自国の国民の食糧を優先することに対して批判らしい批判は沸き起こってはいない。
当然だろう。国の責任者が自国の国民を守る。当然の行為だ。非常事態とはそういうことだ。自国の国民の命が危険にさらされている時に、他国への配慮や他国の利益を優先させる為政者などいない。
さて、日本はどうだろう。この事態を想定しただろうか。想定はしていただろが、現実のものになるとは思ってはいなかっただろう。自動車や電気製品を海外で売るために、自国の農業を傷め続けてきた。農業にこだわることはまるで田舎者のエゴイズムのようにみてきた。国の経済成長にばかり目を奪われ、命の保障をお座なりにしてきた。
その結果の自給率40%割れ。農林水産省の発表によれば、2018年度の日本の食料自給率は37%(カロリーベースによる試算)と過去最低を記録した。明日から食糧の輸入がストップされればいったいこの国は持つのか。半分にも満たない自給率で、国は維持できない。無節操な経済最優先のツケが、今、国民に回されている。コロナと同時に今、ここにあるリスクである。(了)
国を富ます企業を国も応援する
463兆1308億円――。途方もない金額だ。実はこのお金、企業がため込んだ内部留保の金額(2018年度末)なのだ。7年連続での過去最高更新だが、とにかく今、企業は潤っている。にもかかわらず庶民の生活は楽とは言えない。むしろその逆。いったい何なんだ、これは。そのからくりを探ってみる。
●企業の儲けのたまり、過去最高
まず「内部留保」。これは企業の売上高から人件費や原材料費などの費用を差し引き、法人税や配当を支払った後の利益を積み上げたもの。つまり、純粋な儲けの貯まったものだ。
これが463兆1308億円。日本の税収(2019年度)が62兆4950億円だから、その7.4倍のお金が、企業の懐にとどまっているわけだ。
とりわけ儲けを独り占めしているのが大企業だ。資本金10億円以上の大企業の儲けっぷりは凄まじく2018年度末時点で1年前に比べ8.1%増の234兆903億円。これだけでも日本の税収の4倍近く。恐ろしい儲かり方なのである。
では、さぞかし勤め人の生活は潤っているだろうと思うのだが、さにあらず。企業は賃上げに積極的に応じる構えはなく、お金を外に出そうとはしない。労働分配率は改善しないままに推移している。「社会貢献に振り向けろ」とまではいわない。せめて身を粉にして働いた従業員に還元すれば、それが消費に回り、間接的に社会を潤す原動力となるだろうが、企業はがっちりお金を抱え込んだまま放そうとはしない。庶民はカラカラだ。
しかし、もっと問題なのは大企業の納税態度である。「米国や欧州のグローバル企業との激しい競合を勝ち抜かなければならない」として法人税を初めとして企業が納めるべき、お金をいっこうに納めようとしないのだ。企業に言わせれば自己防衛ということになるのだろうが、本当にこれでいいのか。
●法人税ゼロのソフトバンク
例えば最近、倒産説が喧伝(けんでん)されるソフトバンク。実に巧妙だ。10兆円という巨額の運用規模を誇る投資ファンドが大赤字を抱え、「会社経営がギリギリのところまで来ているのでは」とみる向きも多いのだが、そうではない。わざと赤字をつくっていのだ。2018年3月期の決算で売上高は約9兆1587億円、純利益は1兆390億円を計上していたが、日本国に納めた法人税はゼロ。「ビタ一文」たりとも国にお金を払っていないのだ。
そのトリックはこうだ。まず、ソフトバンクは2016年に英国の半導体大手、アーム社を3.3兆円で買収したが、これを使った。ソフトバンクはアーム社を買収した後、アーム社の株式の4分の3を配当という形で吸い上げてしまったのだ。これでアーム社の実質的な価値は大きく目減りしてしまう。もちろんそれは百も承知で、あえて、自分が勝ったアーム社の価値を傷つけ、評価を下げたのだ。そのうえで価値が下がったアーム社の株を自分のグループ内の会社に買い取らせる。アーム社の株を買い取る会社は、当初の価値より大幅に下がってしまった株を買うのだから、赤字となる。その会社こそが10兆円の投資ファンドの会社で、この会社があえて赤字になるように操作したわけだ。ここがミソだ。ソフトバンクは赤字会社を抱えこんだわけだから、大手を振って法人税の支払いを国から免除してもらえる。もちろん合法だ。
本来ならソフトバンクは1000億円単位の法人税を払ってもいいはず。それがゼロ。こんなムチャクチャがまかり通るのが日本。そしてアベノミクスなのだ。
だいたい企業が健全に活動できるのは誰のおかげなのか。国という土台があってこその企業活動ではないのか。なのにその国を蔑ろにして、儲けるだけ儲けて、税金を払わないどころか、その国の民にサラリーとしてきちんと還元しようともしない。そんな企業はソフトバンクだけではないが、これでは国は枯れる。企業栄えて国、枯るる、ではあまりに悲し過ぎるではないか。企業の発展もない。国を富ます企業を国も応援する、この基本を抑え企業が常に国に奉仕し国民を大切にする姿勢を忘れてはならない。これが本当の企業の生き残り策である。(了)
郵便局員は金持ちの奴隷か。郵政民営化の悲しい結末
かんぽ生命保険の不適切販売問題を受け日本郵政、かんぽ、日本郵便の3社長が12月27日、引責辞任を表明した。社員40万人の巨大グループの経営トップが総退陣する異例の事態。いったい何が起こったのか。小泉純一郎元首相は「民営化が不徹底だった」と発言したが本当か。違う。民営化こそまさに今回の問題が発生した原因であり、追求すべき本質なのだ。
●弱者が弱者を叩く
この問題はつくづく悲しい。悲しすぎる。なぜなら「弱者」が「弱者」を傷つけてしまったからだ。しかも「弱者」が「弱者」を傷つけることを「強者」に強いられた。そこが悲しい。
ここでいう傷つけられた側の「弱者」とは、1人で4つも5つも保険に契約させられた老人。そして傷つけた側の「弱者」とは老人を騙して無理矢理、契約をさせた郵便局員だ。弱者がより弱い弱者を叩き、傷つける――。これほど淋しい風景はないではないか。
明確にしておきたいのが今回、退任した日本郵政グループ3トップは決して弱者ではない。老人を傷つけた弱者というのはその末端で仕事をさせられていた郵便局員たちだ。かんぽ生命から保険の販売を請け負う日本郵便は、全国2万以上の郵便局で新規に獲得する保険料支払額について、局や個人ごとに厳しい「ノルマ」を課してきた。その「ノルマ」の結果として契約者が不利益となった疑いのある契約が約18万3000件も発生したのだ。
もともと郵政民営化前、郵便局員に「ノルマ」らしい「ノルマ」など存在しないに等しかった。仮にあったとしても今ほどの厳しさはなかった。上司が部下を怒鳴りつけ、精神的に追い詰めながらノルマを達成させるような無茶はなかった。追い詰められた末端の郵便局員は、さらに弱い老人を騙し契約をとる。郵便局員も心では泣いていたに違いない。
だいたいそうまでしてノルマを達成しても、その郵便局員が年収3000万円も4000万円ももらえるわけではない。末端の郵便局員を怒鳴りつけていた上司、郵便局長にしてもそうだ。それほど高い年収を得ていたわけではない。では誰が得をしたのか。
●資本主義とは金持ちが勝つ
結局、老人から保険料として吸い上げたお金は「強者」に回る。すべてスーテークホルダー(利害関係者)、つまり株主にその利益は流れていくだけなのだ。老人たちを騙して儲けた利益は、巡り巡ってかんぽ生命保険の株主に配当として回っていく。それが株主上場、つまり民営化ということの本質なのである。
当然だ。会社を上場して民営化すれば、株主の期待に応えることが第一義となる。コンプライアンスだ、情報共有だなどと生ぬるいことを言っている暇はない。資本主義なのだから、まずは儲けること。そして資本家、ここでは株主に配当を還元すること、それが何よりもまして優先される。末端の郵便局員はそのお金持ちがさらにお金持ちになるための先兵として駆けずり回ったに過ぎない。
つまりは今日の結末は郵政民営化が決まった時から分かっていたこと。郵便局員は田舎のおじいちゃん、おばあちゃんの味方でなければならなかったのに。郵政民営化は、郵便局員とお年寄りの関係を割き、敵同士にしてしまった。
悲しい結末なのである。(了)
そして軍隊が動き出す
最近こんなニュースがあった。兵庫県の宝塚市が「就職氷河期世代」を対象に職員を募集したところ倍率が600倍を超えたのだという。
合格した4人には賛辞を送りたいが、それにしても不思議だ。世間は働き手不足の「売り手市場」ではなかったか。調べてみると実はそうでもない。職は溢れているが、では「納得できる賃金がもらえる職は」と探るとほとんどない。宝塚市の職員のように賃金水準がある程度高く、しかも安定感のある仕事はまず見当たらないのだ。
そんななか密かに注目されつつある職がある。
自衛官だ。
●自衛官、家賃、光熱費はタダ
興味深いサイトを見つけた。北海道帯広地方協力本部のサイトだ。民間企業に就職した場合と自衛官になった場合で月給がどれくらい違うか、比較している。これをみると民間企業が初任給が20万3400円(大卒)なのに対して自衛官は22万2000円(幹部候補生)。かなり条件がいい。しかも家賃、水道・光熱費、食費はタダ。仕事用の衣類、靴代もかからず、給料の大半の部分が残るのである。訓練の厳しさや万が一の場合、命の危険にさらされることを考えれば当然といえば当然だが、待遇面だけみると特別職の国家公務員にあたる自衛官は民間企業よりも相当に恵まれている。
しかし政府がこの水準をさらに引き上げようと検討している。世間では10月から消費税が増税となり庶民の生活は厳しさを増しているというのにだ。そもそも自衛官は増税の対象となる水道・光熱費、食費はただなのだから、痛税感はうすい。その上さらに給料が高くなるのだとしたら、自衛官はそのうち人気職種になる可能性すらある。
●戦争の空気が漂い始めた
もちろん国の防衛に携わる人間の待遇が良いのは当然で、それを批判するわけではない。不気味なのはそうやってじわじわと自衛官のなり手を増やそうとしている政権の動きである。
安倍政権は2019年11月20日で在職日数が憲政史上最長となり、さらに記録は延びそうな勢い。この政権は憲法改正を宿願としており、経済界もこれを支持、安倍政権を延命させようと守りを固めている。確かに第2次安倍政権発足後、直近の半年までの指標をみると企業の経常利益は1・7倍、日経平均は2・3倍になっているのだから、経済界としては景気をうまく回してくれる安倍政権は大歓迎なのだろうが、戦争の準備に向け大きな歯車が動きだしたような気がしてならない。
安倍氏の盟友である麻生太郎氏は、安倍政権の政治遺産(レガシー)について、「歴史に残る政治遺産は4字で語呂がいいものが多い。岸政権の『安保改定』、佐藤政権の『沖縄返還』もそうだ。『憲法改正』はまさに4字だ」と語ったという。知的レベルの極めて低い軽薄な言葉で、この程度の政治家を副総理としなければならない日本国の人材不足はかなり深刻だが、もはやそれを嘆いていられるほどの状況にはない。
無批判に戦争になだれ込んでいった第2次世界大戦の前の空気感が、今ふたたび漂い始めたことを庶民は意識しなければならない。(了)
なぜ友好国と戦争をしにいくのか
日本政府が10月19日、中東への自衛隊派遣に向けて具体的な検討に入った。「米国の要請に応える」というのがその理由で、日本は米国が唱える船舶の安全航行のための応分の負担をするのだという。具体的な派遣の期日などは未定だというが、いずれ日本の自衛隊はオマーン、イエメンの周辺海域で偵察活動に入ることになる。しかし、ここで一言、言っておきたい。「いったい、何だそれ」
●海自のカレーライス
19日、中国新聞速報版にこんな記事が掲載された。「全国の海自カレー 呉に終結」。内容は要約するとこうだ。「海上自衛隊呉基地でカレーフェスタが開かれた。広島県内外から7000人が集まり、海自の基地がある横須賀、舞鶴、大湊のカレーも振る舞われた。家族とやってきた9歳の少年が『味が違うカレーがいろいろ食べられておいしかった。また来たい』と声を弾ませた」。
まだ駆け出しの記者だろう。ただのカレーフェアの「ノリ」で書いている。いわゆる暇ネタ。休日で事件もないし、ちょこっと記事を書いて写真をつければ、ちょうどいい埋グサになるとでも思ったか……。
この記事を書いた記者は何も考えていない。この9歳の少年があと10年もしないうちに海上自衛隊の戦艦に乗る可能性があることを。その時、甲板上の少年を狙っているのは記者のカメラではない。米国と戦争をしている第三国の大砲なのだ。今、「声を弾ませ」ている少年の声は震えに変わる。泣き叫びに変わる。その事実を分かってこの記者は記事を書いているのか。
●「応分の負担」を蹴っ飛ばせ
米国が求める「応分の負担」に応えること、それはすなわち米国がしかけた戦争に日本が加担することだ。そのために無邪気にカレーを食べている我が子を、戦闘員として差し出さねばならない。憲法を変えるということは、すなわちそういう可能性を日本人が招来することを意味する。その自覚が日本人にあるのか。覚悟はあるのか。そして何よりその必要性はあのか。
今回の中東への自衛隊の派遣もそうだ。日本とイランは友好国ではないか。イランが日本の船舶を狙うはずはない。その証拠に日本船主協会も「自衛隊による防護が即座に必要な状況とは受け止めていない」と公式に表明しているではないか。
イランが日本の、しかも民間の船舶を狙うとするならば、イランの敵国である米国の手先として日本が立ち回る時だ。米国が引き起こそうとしている戦争に日本がわざわざ巻き込まれにいく必要はない。「応分の負担」要求? なぜ日本は蹴飛ばせない。 (了)
猫に小判、下戸に10万円のボルドーワイン
この日の赤ワインは1996年ボルドー産のシャトー・ラフィット・ロートシルト。5月27日、即位後初の国賓となるトランプ米大統領夫妻を歓迎する宮中晩餐会で、アルコールを口にしないトランプ大統領に出されたワインは1本市価10万円を超えるものだった。宮内庁ができるだけ通訳を介するよう依頼していたにもかかわらず、陛下は英語で直接やり取りされる場面も多く、皇后さまは終始、英語で話されたという。
陛下は1974年にオーストラリアでホームステイし、1983~1985年に英オックスフォード大に留学された。皇后さまは20代前半までの一時期を米国で過ごし、ハーバード大を卒業した後、1987年から外務省で外交官を務められていた。お二人とも英語はご堪能でいらっしゃる。
だからこそだろうか。宮内庁はお二人に依頼していたのだという。「通訳を介されますように」。宮内庁の依頼の理由を「意味が正しく伝わりますよう」としているが、「外国賓客の接遇は他国との友好関係を深める目的で行われ、相手国の大小にかかわらず平等にもてなすことが、重要な公務の一つである」とされていることから考えると、宮内庁がなぜ、そのような依頼をしたのかが見えてくる。
⚫︎千秋楽は大騒動
大相撲夏場所千秋楽の観戦も大騒動だった。正面最前列、16人分の升席を潰し、椅子に腰掛けての観戦。正面最前列の升席は席を仕切る鉄枠が取り外され、ソファが据えられた。一見すると、客で埋まった正面に、大統領と首相の両夫妻が着席しているように見えるが、実はその周囲は広く確保され、シークレットサービスや日本のSPらが固めていた。大相撲は、江戸時代から庶民の娯楽だが、江戸時代とて庶民を押しのけて最上等の席から観戦した将軍は、記録にない。令和の相撲観戦は「将軍様もびっくり」の庶民そっちのけの大観戦だった。
それにしても日本は、言葉でも譲り、国技でも譲り――。そして最後は金でも譲った。いつものことではあるが、実にみっともない。象徴的なのが5月28日、トランプ大統領は「日本は(米ステルス戦闘機の)F35を105機買う。日米両国の危機への対応力は増すだろう」と発言したのだ。何と一方的な話なのか。
実はこれ、米政府の提示額や納期を日本側が受け入れる「対外有償軍事援助(FMS)」に基づくもので、2018年12月に公表された取り決めだ。つまり日本は「援助」という理由で、米国の言いなりにものを買わされる決まりなのだ。2019年度のFMSによる調達額は予算ベースで7013億円と18年度から7割増える見通しだという。気を遣い、1本10万円のワインまで出してもてなした日本に対する見返りがこれ。あまりにバカバカしくはないか。
仮に海外調達を増やしても日本企業がライセンス生産するなら問題無い。しかしFMSでは米国製を買うわけだから、日本企業の出番は無い。日本がお金を使うのに、そのお金は日本の企業には回らないのだ。
トランプ大統領は満面の笑みで帰国の途に就いた。今回も残ったのは日米の「蜜月」という言葉と、日本から米国に対する多額の支払いの約束だけだ。いったいいつまで続けるつもりなのか。(了)
辺野古移設反対で進まぬ海兵隊撤収
「国益」か「県益」か――。それが問題なのである。米軍普天間基地の辺野古移設は反対派の運動もあって遅々として進まないが、これは国益を大きく損なう問題だと言っていい。なぜなら辺野古の基地建設が遅れれば遅れるほど、米海兵隊のグアム移転が遅れてしまうからだ。海兵隊が撤収すれば基地産業は縮小、沖縄県は一時的に経済的ダメージを受けるかもしれない。しかし、日本国全体を考えて欲しい。ここは速やかに米軍撤退を優先、まずは早々にお引き取り願う方が賢明なのだ。
いったい沖縄県の玉城デニー知事は本当に意味が分かっているのだろうか。辺野古移設反対で知事選に勝利した玉城氏は「基地の7割をしめる沖縄県の苦しみを知れ」という。そうだ。その通りだ。日本の基地の7割が沖縄に集中する現実は問題である。その苦しみを本土の人間は知らなければならない。そこは否定できない。
だからこそ沖縄の基地負担を軽減するというなら沖縄の基地は縮小しなければならない。当然だ。その際、気をつけなければならないのは「辺野古での基地建設は何にも沖縄に基地を増やそうとしているわけではない」ということだ。一見、辺野古移設反対は米国に反旗を翻しているように見えるが違う。実態は逆だ。反対運動を盛り上げ、移設が遅れれば、米軍撤収のタイミングもその分、遅くなる。
思い出さなければならないのは2012年4月だ。この時、日本と米国の両政府は沖縄にいる海兵隊約1万9千人のうち約9000人をグアムやワハイなどに移転させることで合意した。これがどれだけ画期的なことだったのか。戦後、長らく居座り続け少女への暴行事件など不祥事を繰り返してきた米軍が半分近い兵力を日本から引き上げることで合意したのだ。もろ手をあげて「どうぞ、どうぞ」といったところだ。
問題は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設が、海兵隊の撤退とセットになっていることだ。海兵隊の撤収と辺野古移設は2012年に日米両政府が修正合意した米軍再編計画にセットになって一緒に盛り込まれている。つまり辺野古移設が進まないと米海兵隊の撤収も進まない構造になっているということだ。このことを玉城知事は理解しているのだろうか。反対するほど沖縄県民を苦しめてきた基地は沖縄に居座り続ける。
玉城知事は、沖縄県中頭郡与那城村(現・うるま市)で生まれた玉城知事は沖縄米軍基地に駐留していた米兵を父に持ち、伊江島出身のアメラジアンを母に持つ。若い頃は「俳優」だったというが、調べてみてもこれといった作品に華々しく登場した形跡はない。政治家としてもその手腕は未知数だ。
玉城氏始め沖縄県民が考えなければならないのは米軍基地の縮小とともに、その米軍撤退後の沖縄をどうするかということだ。今では米軍基地関連の経済規模は小さくなったとはいえ5%台。まずこの穴をどう埋めるか考えることが重要だ。
そして国。米軍撤退で低下するような防衛力なら極めて問題だ。中国や北朝鮮に脅かされるというなら、毅然として自衛できる力を身に付けるべきだ。米軍という虎の威を借りなければ国を守ることはできないという考え方は決してリアリズムなどではない。ただの幻想だ。米軍は日本を決して助けない。
米軍など必要ない。反対運動は米軍に居座る理由を与えているだけ。そんな単純な図式も分からないようでは情けないし、もし分かって反対しているなら恐ろしい。 (了)
東京五輪どころじゃない
これが世界の現実だ。韓国による福島など8県産の水産物の輸入禁止は不当として日本が提訴していた問題で、世界貿易機関(WTO)は2019年4月11日、韓国の措置を妥当とする最終判決を下した。つまり「日本の食材は放射能に汚染されているから危険だ」という主張を「正当」と認めたのだ。日本側が被る打撃は尋常ではないが、たったひとかけらの核燃料デブリも回収できない状況はでは致し方ない。日本の原発事故は終わっていない。東京五輪など夢のまた夢なのだ。
●「日本の魚は危ない」
そもそものことの発端は2018年2月。第一審にあたる紛争処理小委員会(パネル)が韓国側に対して日本の食材が危険だとして輸入を禁止するのは「不当な差別」だとして是正するよう勧告したことが始まりだ。
当然、韓国は収まらない。「日本はまだ東京電力福島第1原子力発電所事故の処理が何も終わっていない」とし判決の2カ月後、「判決は不当」として上訴した。汚染水処理や廃炉など原発の事故処理がなお続く状況の日本から食材を輸入しないのは当たり前だというわけだが、WTOは今回、その韓国の主張を認めた。日本は放射能汚染国との烙印(らくいん)を世界から押された。
WTOが「日本の食材が危ない」ことを正式に認めたとなると、今後、「日本外(はず)し」の動きが世界に広がる可能性が出てくる。すでに韓国の流通・外食業界は原発事故後、日本から調達していたサンマやサケをノルウェー産、タラはロシア産、ホヤは国産にそれぞれ変更しているが、これが他のアジア諸国にも広がっていけば、日本の経済的な打撃は計り知れない。
ただ、日本が今からやるべきはWTOで韓国と争うことではない。原発事故と真摯に向き合うことだ。日本はこの瞬間にも放射能が混じった汚染水を海に垂れ流している。その日本の海で獲れた水産物を韓国が怖がるのは当然なのだ。いくら日本がWTOで韓国に勝訴したとしても、海に流れ出る放射能汚染水が止まりはしない。
実際、韓国の流通関係者は「仮に日本が上級委員会でも勝っていたとしても『販売を再開する計画はなかった』」と証言する。WTOがどう判断しようが日本の魚など世界の誰も好きこのんで買ってはくれない。重要なのは韓国の消費者の不安をどうすれば払拭できるのかなのだ。
●「アンダーコントロール」って何?
韓国をとがめ立てする暇があるくらいなら、日本は原発事故の処理を真剣に考えなければならない。安倍首相は「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません。……」。こう言ってはばからないが、世界から見ればとんだ笑いもの。何の科学的な根拠も数字も示さず、ただ強弁しているだけ。安倍氏にはこの手の発言が実に多いが、「原発はアンダーコントロール」の認識から改めていただきたい。
東京五輪で使うはずのお金を事故処理の研究費に回したっていい。本来なら原発がこのような状況で何が東京五輪だ。被災地でまだまだ泣いている人はたくさんいるのにお祭りどころではない。今回の出来事はそれを思い起こさせてくれた。日本には良い薬だ。(了)
1億円のランチはもう売れない
〈ウォーレン・バフェット氏〉
1億円のお金を払っても、ステーキランチをともにしたい人などこの世の中にいるのだろうか。実は1人いる。米国の天才投資家ウォーレン・バフェット氏(88歳)だ。毎年、バフェット氏とのランチ券が1億円以上で落札されるという。ただ、今年はどうか。ひょっとして、もうランチ券は売れないかもしれない。なぜならバフェット氏が天才ではなくなったからだ。「そろそろ投資で、お金は儲けられなくなってきた」。そういってお金を預けてくれた人に返還するという。
投資家とはいったいどういった種類の人々なのか。簡単に言えば富裕層からお金を預かり、それを増やして返す。いわゆるお金持ちのお金の運用を任される人びとだ。バフェット氏もその1人。米投資会社バークシャー・ハザウェイをバックに持ち、この会社に集まってきたざっと12兆円のお金を独特の嗅覚と才覚で儲かるビジネスに投資する。50年間にわたって勝ち続け、複利計算で約20%を上回るリターンを出した。まさに天才だ。
●バフェット敗北
しかし、ここに来てそんなバフェット氏も音を上げた。「もう儲かる対象がない」と。12兆円にまで膨らんだ投資資金の一部は、株主に返還する方針であることを毎年恒例の「株主への手紙」で明らかにした。
投資家としては事実上の敗北宣言だ。すべてが高くなり仮に今、企業を買収しても、投資したお金に見合うだけのリターンが期待できないのだという。現に過去に投資した加工食品大手クラフト・ハインツなども2019年10~12月期決算で想定外の減損を出し、バークシャーは30億ドル(3000億円強)の損失計上を余儀なくされた。
金持ちの金を預かり、弱った企業をM&A(合併・買収)で傘下に収める。そのうえでリストラなど経営効率化を断行、収益力を高めて株価が高値になったところで売りさばく。そのサイクルが回らなくなった。
●今、ここにある危機
そんな投資家の仕事が回らなくなったところで、「そらみたことか」というだけのことかもしれない。ただ、ここで見逃してならないことがある。「金余り」と「経済成長の鈍化」だ。このふたつの危機が今、同時進行で世界を覆い始めている。それが天才の名を欲しいままにしたバフェット氏すら、戸惑わせている。誰もいったい世界のどこに成長の芽があるのか分からないのだ。
いったいなぜこうなってしまったのか。振り返るべきは2000年頃。米国を始めとした先進国は地道なもの作りの道を捨てた。代わりの傾倒したのが金融緩和だ。もの作りを捨てれば国の成長はとまる。なのに必要もないお金を刷り続け、架空の経済取引で刹那的に儲けようとしたツケがここに来て表面化してきた。
翻って日本。日本はまさに世界の縮図だ。構造改革という美名のもとにもの作りを破壊し、それを外資にたたき売った。そのうえで金融を緩め「リスクをとったものにこそリターンがある」と金融緩和にひた走った。当然、日本も行き詰まった。
世界も日本も人々は息苦しさを感じはじめている。さあ、ここでどうするか。吹きたまった鬱憤(うっぷん)が3回目の世界大戦に人類を駆り立てなければいいのだが……。(了)
「人」に「良」と書いて「食」
ようやくだ。4月から鯨肉のインターネット販売が始まる。7月には商業捕鯨が再開、事業者が自分でとった鯨肉の販売価格を自由に決められるようになる。鯨肉は鯨肉。しかし、これからは価値が違う。調査捕鯨と銘打ちながら、こそこそ売る鯨肉ではなく、堂々と商業捕鯨といい我が国の領海内でとった鯨肉を売る。誰に遠慮がいろうか。
●IWC脱会は英断
昨年の国際捕鯨委員会(IWC)脱退の決定は久々の英断だった。捕鯨国の意見を全く認めず、一方的に反捕鯨を押しつけてくる組織に営々と居続けることの愚をよやく日本政府は悟った。脱会はむしろ遅すぎたくらいである。
おかげで日本は自由に鯨をとることができるようになる。もちろんそれは日本の領海内での話ではあるが、幸いなことに日本の海は広い。陸地となると確かに日本は小さいが、しかし海となると話は違ってくる。排他的経済水域(EEZ)では世界で上から6番目。この広い海がもたらす恩恵は計り知れない。反捕鯨を掲げる日本人の意見のなかにはIWC脱会により南極海での捕鯨ができなくなることを理由にする場合があるが、何のことはない。EEZがある。
しかも、重要なのは調査捕鯨ではなく、商業捕鯨だということだ。表向き「調査」と言いながら、そこで捕った鯨を結局最後は食べる、しかも本来はそれが目的だとするなら、どうも日本らしくない。堂々と「食べるために捕る商業捕鯨でございっ!」と宣言し、捕鯨を続けるべきだ。7月からはそれができる。実に日本らしい、結構なことである。何を恐れる必要があろうか。
実際、IWC脱会を決めた当初はオーストラリアなど海外からあれこれ批判する声もあがったが、今はすっかり下火になった。捕鯨は日本国の文化、食生活そのものであり、食糧安全保障そのものなのである。とやかく言われる筋合いではないし、言えるものでもない。仮に言われても言わせておけばよいのだ。
●国際連盟脱会と混同するな
にもかかわらず「国際的に協調性を欠く」「日本が孤立する」などといった声がいまだに国内でくすぶっているのは残念だ。「国際機関からの離脱は戦前の国際連盟以来。満州事変は侵略だとして撤兵を迫られ、松岡洋右(ようすけ)首席全権が連盟総会を退席した一件とも重なる」との意見も消えない。日本の食文化を守る問題と隣国への侵略の正当化の問題を混同し悦に入っているとしか思えない。
そのせいか政府もおかしい。農林水産省はせっかく商業捕鯨が再開するというのにわざわざ鯨種ごとに年間の上限を設けるという。ミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラなど鯨の種類ごとに捕獲頭数を決めるのだ。大きな御世話である。鯨など掃いて捨てるほどいる。エサに困り間違って浜辺に上がってくるほどなのだ。
さらにIWCは脱退しても日本が締約する国連海洋法条約の縛りを主張する向きもある。65条で捕鯨は「管理や研究のために適当な国際機関を通じて行う」ことを規定しているために「IWCと連携しなければ捕鯨はできない」。全くの亡国論だ。
これまで自動車や電機などに比べ「食」は軽んじられる傾向が強かった。しかし、腹が減っては車は造れないし、クーラーだって組み立てられない。まずは国民が飢えないことだ。戦時中じゃ、あるまいしとの意見もあるだろうが、それは分からない。いつそんな状態になるか分からないではないか。食こそ国を成り立たせる重要な要素、その政策を他国の顔色を伺いながら決めるものではない。
「食」という字をよく見て欲しい。「人」の下に「良い」と書く。食が良くなければ国も人も良くならない。そこを良く考えて欲しいのである。(了)
さよならアベノミクス
2018年最後の取引となった12月28日の東京株式市場の日経平均株価が下落に転じた。年間の株価が下落するのは7年ぶりのこととで、安倍晋三政権が発足して以来6年間続いた上昇記録が途絶えた。このことの意味は決して小さくない。なぜなら株価高こそ安倍晋三政権が存続する意味だったからだ。その意味が揺らいでいるのだ。金看板の「儲かる内閣」が「儲からなくなった」となれば、もはやお払い箱と言いたいところだが「ちょっと待った」。湯水のように株に突っ込んだ国民のお金、どうしてくれる。
28日の日経平均株価は前日比62円85銭(0・31%)安の2万0014円77銭。17年末比で2750円(12%)も低くひけた。米中貿易摩戦争などで世界経済の先行きに懸念が広がるなか日本経済に対しても不安が広がり、海外投資家などが売りに動き、これが株価の押し下げ要因となった。
ただ、そのこと自体は問題ではない。経済は生き物だ。株価だって上がりもすれば下がりもする。株価下落の責任を政権に押しつける気はない。しかし、国や庶民のお金の問題はどうする。株価が上がる前提で株式市場に突っ込んできた国や庶民のお金の目減りはどうするのだ。
●株式市場に6兆5000億円
ETF(上場投資信託)はその典型だ。ETFは複数の大企業の株式を組み合わせ、東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価に連動する商品が代表的だが、日銀は金融緩和の一環としてこのETFの買い入れを積極的に行ってきた。株価が下がればその分、日銀が「買い」を入れ株価をテコ入れしてきたが、その買い入れ額が2018年は合計6兆5040億円。過去最高だ。政府は年間の買い入れ額のメドを6兆円としていたのに、それを大きく上回ってしまった。
結局は国や庶民のお金で株を買いまくっていたのだ。アベノミクスに伴いETFの買い入れを積極化した5年前の2013年はせいぜい1兆円超。これが6倍以上に達しているのがその証拠。事情通によれば午前中に株価が0・5%前後下がれば午後に日銀が自動的に買うというのだから随分、無茶な話だが、安倍政権はその無茶を6年もまかり通してきた。アベノミクスだ、何だと言ってみても何の中身もない。ただ自分で株を買っていただけのこと。
とはいえ、これから大変だ。ETFで6兆5000億円もの大金を投じながらそれでも株価が上がらないのだ。年明け以降、市場は大荒れに荒れる。どうする。安倍政権。上がるまで国民のお金で株を買い増していくなど、悪い冗談ですぞ。(了)
サンタが2島をしょってくる
歯舞、色丹の2島が日本に返ってくる――。絵空事ではない。事実だ。日本の安倍晋三首相は来年1月にロシアのプーチン大統領を訪問、日露平和条約締結交渉を加速させる予定だが今回は単なるパフォーマンスではない。本気でやるつもりだ。恐らく成功するだろう。ついに時節が来た。北のサンタクロースが島を背負って日本にやってくる。それはすなわち日本国、立ち上がりの時でもある。
「ハボマイ」、「シコタン」そして「エトロフ、クナシリ」。音を聞けば前者のグループと後者のグループが、明らかに違うことがお分かりになるはずだ。前者はアイヌ語の響きにそのもの、つまり日本的。一方で後者はロシア語の音とピタリ重なる。歯舞、色丹は日本の領土、択捉、国後はロシアの領土。この整理の仕方で問題はないことが音からも分かる。つまり2島返還こそ北方領土交渉の正解なのである。
歯舞、色丹の広さは4島全体のわずか7%。「たったそれだけでいいのか」。「9割を放棄し、その代わりに日本は何を得るのか」。4島返還論者は必ずそういう。しかし、それだけでいいのである。この本来、日本の領土である7%を返してもらうことこそ、日本立国の秘儀だからだ。歯舞、色丹は二股コンセントであり、日本がそのコンセントを得ることが極めて重要なのだ。
●北方領土、今やらずしていつやる
もしそれがかなえば日本は北の世界と正式につながる。日本に電流が流れ、経済は活性化、政治は力を取り戻す。北からの御稜威が流れ込むのだ。3島でも4島でもいけない。日本のコンセントの足の数である2、2島でなければコンセントは北の世界に刺さらない。
それをなぜ今、やらなければならないのか。経済学者や政治学者は訝(いぶか)るが、「今」でなければ、次はいつなのか。安倍政権もプーチン政権も今が権力の絶頂。領土問題は、どう解決したとしても多くの反対派が出てくる。これを押さえ込むには相当の腕力が必要だ。それを考えた時、今はチャンスだ。良い悪いはさておき、日露両国にこれだけの高支持率で、しかも、領土問題解決に向け方向性を同じくするトップが並び立つ確率というのは、「天文学的」と言っても良いほど低い。その恐ろしく低い確率で訪れる、世紀の瞬間がまさに「今」。あと100年待ってもこれだけのタイミングは巡ってこないだろう。今やらずしていつやるというのだ。
政治家は口を開けば「国を開け」と言う。ならば今、北に向かって開くべきだ。縦に開くのだ。これまで日本は横(西)に向かって国を開きその結果、いったい何が起こったのか。日本の頭脳は流出し、技術は盗まれ、中国の台頭を招いた。食物はもちろん繊維、鉄鋼、電機、通信・ネットとドミノ式に日本は駆逐され、経済戦争は日本の完敗。2014年には中国の国内総生産(GDP)は日本の2倍となり、2018年には3倍となる見通しだ。中国の経済成長のスピードは減速しつつもそれでも2018年は6・6%で、日本が太刀打ちできる状況にはない。ベトナムを退け南シナ海を制圧したように、いずれ今度は経済力を背景に、日本の尖閣諸島周辺を侵略してくるだろう。
●ロシアと組んで中国に備えよ
日本はこの中国侵略に備えなければならない。ロシアとの提携は中国への有効な牽制となる。米国と異なり領土を接するロシアにとって中国問題の重要度は極めて高い。パワーバランス上、日本と組み中国を押さえこみたいはず。「敵の敵は友」――。友敵関係の活用は政治の鉄則だ。日本はロシアの力を活用、中国封じに力を入れるべきだ。
日本は今後、ますますロシアに向かう。すなわち北。御稜威は上から下、北から南へ下りる。とりわけロシアはムルマンスク(人口325,100人)など北極圏に大都市を抱え、北極とのつながりが強い。北極の共同開発に乗り出せば、資源開発はもちろん鉄道や道路のようなインフラ整備など今、日本がアジアや中東で無理無理やろうとしているビジネスが、すんなり落ちてくる。ロシアが持つ北極こそが日本飛躍のためのブルーオーシャンなのだ。
12月。街はそろそろクリスマスモード。あちこちに巨大なクリスマスツリーが登場、華やぎを増す。ところで、いったいサンタクロースの着物はなぜ赤なのか。実は赤とは地の熱、地熱の色。つまりサンタクロースは地の神様であることを意味する。北から地熱を運ぶ神様だ。
翻って日本。日本では北は子(ね)の国、大黒様の地とされる。大黒様は地の神、サンタクロースも地の神様……。お分かりだろう。サンタクロースは大黒様なのだ。北からサンタクロースがやってくる12月に、北の2島返還の交渉が進む。これはすなわち日本が大黒経済につながっていくことを示す証左である。今、サンタクロースが2島をしょってやってこようとしている。(了)