琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

築地問題、解は『2つ』


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    築地市場(東京・中央)からの移転が延期された豊洲市場(東京・江東)。建物の下にポッカリと空洞が空き、水がたまっていることが判明、建設工事の談合の疑いも出てきた。迷走ぶりが際立つなかで、小池百合子知事はいったいどう決着をつけるのか。正解は「築地も豊洲も両方生かす」だ。

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●建物の下に空洞

 

築地の移転先として整備が進む豊洲市場の用地はもともと東京ガスの工場跡地。当然、土壌は汚染されており、有害物質であるベンゼンが環境基準の4万3000倍という高いレベルで検出された。この対策として東京都は表土を削りとり、新たに奇麗な土地を盛ることで安全を担保する手はずだった。
ところが、違った。確かに厚さ2メートル近くの表土はけずりとられていたものの、その後に盛られるはずの土壌が、建物の下の部分にはなかったのだ。結果的に建物の下には深さ4・5メートル近くの穴があき、そこに不審な汚水がたまってしまっていた。

 

●わざと穴はつくられた

 

いったいなぜこのような事態となったのか。実はこの建物の下の穴は、決して「うっかり埋め忘れた」わけではない。それはそうだろう。これだけ反対者の多い豊洲移転である。工事を担当するゼネコンは1㍉の狂いもないよう工事を進めたはすだ。
となるとなぜ建物の下に穴があるのか。調査を重ねて判明したのだが、「周到に、そしてあえて空洞にした」(工事関係者)という事実だ。表面は削り取ったとはいえ、汚染が残っている可能性のある土壌と、食べ物を扱う市場の床が直接、触れ合うことを避けたのだ。このことは誰にも知られず、極秘のまま闇に葬られるはずだった。
しかし、その計画は小池氏の登場で狂ってしまう。工事関係者から都議の一部に「秘密の穴」の存在が漏れ、マスコミを通じて世間の知るところとなってしまった。
庶民の食べ物が有害物質を懸命に遮断した建物の中で取り扱われること自体、無理がある。極めてセンスのない移転計画だったわけで、建物の下にあいた穴は、如実にこの計画がいかに「無理筋」だったかを象徴する1つの証左でもある。

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●築地を生かせば豊洲も生きる

 

ただ、事ここ至っては、豊洲市場がいかに問題であるかをあげつらっていても問題は解決はしない。5000億円を投じた世界最大の市場は出来上がってしまったのである。都民の血税を投じたこの施設をどう生かすかを検討するのが筋だ。
そして、そこで出てくるのが「豊洲」も生かし、「築地」も残す選択肢だ。両市場を機能分担し、連携させながら両方、使うのだ。例えば築地市場は国内消費者向け、そして豊洲市場は海外への輸出品、または海外からの輸入品をさばく市場として利用する。豊洲には築地になかった船着き場も整備されている。ここを使って生鮮品を出し入れすればいい。

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●食の輸出大国へ

 

農林水産省がまとめた2015年の農林水産物・食品の輸出額は7452億円。前年比で21・8%増、3年連続で過去最高を更新している。世界的な和食ブームを追い風に安倍政権も「2020年には1兆円にまで引き上げる」との目標を掲げており、場合によっては「前倒しで実現させたい」(政府関係者)という。
 日本の食が世界に開かれていくとするなら、築地だけでは足りない。オリンピックロードは迂回させ、築地は残すべきだ。老朽化の問題はリニューアルでなんとでもなる。そのうえでブランドが失墜した豊洲と連携、豊洲は海外との取引の拠点として使えばいい。
 1つつくれば、1つ壊さねばならない。そう考えるのは人間の頭のかたいところである。 (了)  

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