琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

ジャパンファーストとなぜ言えぬ(2)~トヨタが国を売る~

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おもねったかいがあったというもの。米トランプ大統領が1月30日(日本時間31日)に実施した一般教書演説でトヨタ自動車マツダの名前をあげ、米国の雇用拡大に貢献した企業として賞賛してくれたのだ。米国での新工場建設が評価された格好で、米政権との摩擦を避け、車を売りたいトヨタ自動車マツダはこれで一安心。しかし、問いたい。「おい。おまえたち。米国はいい、日本はどうする気だ」

 

●4000人雇用の工場、米より東北につくれ
トランプ大統領が評価した新工場は南東部のアラバマ州に建設する。20州近く手をあげた中で、精査に精査を重ねて決定した。北米ではトヨタにとって8つ目の完成車工場で、マツダにとってはメキシコに続く2つ目の拠点だ。
 工場はトヨタマツダの共同出資となるが、投資額は総額で約16億ドル(約1792億円)。2021年の稼働を目指すという。トヨタが小型車「カローラ」、マツダが中小型の多目的スポーツ車(SUV)の生産を計画しており、2本の生産ラインの年産能力は年30万台。そして新工場建設により新たに生まれる雇用は約4000人だ。
 何という大きな経済効果だろう。仮にこの工場が東日本大震災で被災した東北地方に建設されたと考えて欲しい。4000人もの雇用が生まれるのだ。流出した人たちが故郷に帰るきっかけとなり、どれほど復興に弾みがつくだろうか。海と陸を無残に分断するそびえ立つコンクリートの防波堤をつくるより、よほど地域を元気づける。

 

●「まずは米国」のウソ
 しかし、安倍政権はそうは考えない。「まずは米国」。こう考える。「米国のおかげで日本は守られ、平和を享受できている。その米国をまずは富まそう。日本はその次ぎ。米国が繁栄しなければ、日本の繁栄もないのだ」と。
 だから、日本のお金は米国に流れ続ける。今回のトヨタの新工場建設は単なるその前哨戦に過ぎない。これを契機にトヨタは米国にどんどんお金を振り向け、今後5年間で100億ドル(約1兆1000億円)を投資するのだという。
 しかし、それにしても悲しい話だ。トヨタが自動車を輸出しやすいよう、どれだけ日本国が米ドルを買っていることか。1000兆円を遙かに超える借金を抱える世界に冠たる貧乏国、日本が、である。「きっと国を豊かにしてくれるのだろう」と国債を発行し、そのお金でドルを買っているのである。国民に借金をしてまでドルを買い、「円安」を維持しているのだ。
 それもこれも日本の企業が海外でモノを売りやすいようにするため、トヨタが海外に自動車を輸出しやすいようにするため血税を為替市場に注ぎ込んでいるのだ。それでもひとたび、トランプに恫喝されれば、企業はさっさと日本を売る。米国になびく。血税を使い、日本国に稼がせてもらった利益を我が身かわいさに米国に流す。これを恩知らずと言わずして、何という。
 今、日本は貧しい。1%の富裕層はともかく、中間層は貧乏ぶるいをしている。その民を見捨て、仕事を与えず、米国におもねる企業など国が守る価値などない。まず、国は日本国民を守れ。企業も米国もその後だ。(了)

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