琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

東京五輪どころじゃない

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これが世界の現実だ。韓国による福島など8県産の水産物輸入禁止は不当として日本が提訴していた問題で、世界貿易機関WTO)は2019年4月11日、韓国の措置を妥当とする最終判決を下した。つまり「日本の食材は放射能に汚染されているから危険だ」という主張を「正当」と認めたのだ。日本側が被る打撃は尋常ではないが、たったひとかけらの核燃料デブリも回収できない状況はでは致し方ない。日本の原発事故は終わっていない。東京五輪など夢のまた夢なのだ。

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●「日本の魚は危ない」
そもそものことの発端は2018年2月。第一審にあたる紛争処理小委員会(パネル)が韓国側に対して日本の食材が危険だとして輸入を禁止するのは「不当な差別」だとして是正するよう勧告したことが始まりだ。
当然、韓国は収まらない。「日本はまだ東京電力福島第1原子力発電所事故の処理が何も終わっていない」とし判決の2カ月後、「判決は不当」として上訴した。汚染水処理や廃炉など原発の事故処理がなお続く状況の日本から食材を輸入しないのは当たり前だというわけだが、WTOは今回、その韓国の主張を認めた。日本は放射能汚染国との烙印(らくいん)を世界から押された。
WTOが「日本の食材が危ない」ことを正式に認めたとなると、今後、「日本外(はず)し」の動きが世界に広がる可能性が出てくる。すでに韓国の流通・外食業界は原発事故後、日本から調達していたサンマやサケをノルウェー産、タラはロシア産、ホヤは国産にそれぞれ変更しているが、これが他のアジア諸国にも広がっていけば、日本の経済的な打撃は計り知れない。
 ただ、日本が今からやるべきはWTOで韓国と争うことではない。原発事故と真摯に向き合うことだ。日本はこの瞬間にも放射能が混じった汚染水を海に垂れ流している。その日本の海で獲れた水産物を韓国が怖がるのは当然なのだ。いくら日本がWTOで韓国に勝訴したとしても、海に流れ出る放射能汚染水が止まりはしない。
実際、韓国の流通関係者は「仮に日本が上級委員会でも勝っていたとしても『販売を再開する計画はなかった』」と証言する。WTOがどう判断しようが日本の魚など世界の誰も好きこのんで買ってはくれない。重要なのは韓国の消費者の不安をどうすれば払拭できるのかなのだ。

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●「アンダーコントロール」って何? 
 韓国をとがめ立てする暇があるくらいなら、日本は原発事故の処理を真剣に考えなければならない。安倍首相は「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません。……」。こう言ってはばからないが、世界から見ればとんだ笑いもの。何の科学的な根拠も数字も示さず、ただ強弁しているだけ。安倍氏にはこの手の発言が実に多いが、「原発はアンダーコントロール」の認識から改めていただきたい。
 東京五輪で使うはずのお金を事故処理の研究費に回したっていい。本来なら原発がこのような状況で何が東京五輪だ。被災地でまだまだ泣いている人はたくさんいるのにお祭りどころではない。今回の出来事はそれを思い起こさせてくれた。日本には良い薬だ。(了)