琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

そして軍隊が動き出す

f:id:mitsu369:20191202091002p:image
最近こんなニュースがあった。兵庫県宝塚市が「就職氷河期世代」を対象に職員を募集したところ倍率が600倍を超えたのだという。

合格した4人には賛辞を送りたいが、それにしても不思議だ。世間は働き手不足の「売り手市場」ではなかったか。調べてみると実はそうでもない。職は溢れているが、では「納得できる賃金がもらえる職は」と探るとほとんどない。宝塚市の職員のように賃金水準がある程度高く、しかも安定感のある仕事はまず見当たらないのだ。

そんななか密かに注目されつつある職がある。

自衛官だ。


自衛官、家賃、光熱費はタダ
興味深いサイトを見つけた。北海道帯広地方協力本部のサイトだ。民間企業に就職した場合と自衛官になった場合で月給がどれくらい違うか、比較している。これをみると民間企業が初任給が20万3400円(大卒)なのに対して自衛官は22万2000円(幹部候補生)。かなり条件がいい。しかも家賃、水道・光熱費、食費はタダ。仕事用の衣類、靴代もかからず、給料の大半の部分が残るのである。訓練の厳しさや万が一の場合、命の危険にさらされることを考えれば当然といえば当然だが、待遇面だけみると特別職の国家公務員にあたる自衛官は民間企業よりも相当に恵まれている。


しかし政府がこの水準をさらに引き上げようと検討している。世間では10月から消費税が増税となり庶民の生活は厳しさを増しているというのにだ。そもそも自衛官増税の対象となる水道・光熱費、食費はただなのだから、痛税感はうすい。その上さらに給料が高くなるのだとしたら、自衛官はそのうち人気職種になる可能性すらある。

f:id:mitsu369:20191202091703p:image
●戦争の空気が漂い始めた
もちろん国の防衛に携わる人間の待遇が良いのは当然で、それを批判するわけではない。不気味なのはそうやってじわじわと自衛官のなり手を増やそうとしている政権の動きである。

安倍政権は2019年11月20日で在職日数が憲政史上最長となり、さらに記録は延びそうな勢い。この政権は憲法改正を宿願としており、経済界もこれを支持、安倍政権を延命させようと守りを固めている。確かに第2次安倍政権発足後、直近の半年までの指標をみると企業の経常利益は1・7倍、日経平均は2・3倍になっているのだから、経済界としては景気をうまく回してくれる安倍政権は大歓迎なのだろうが、戦争の準備に向け大きな歯車が動きだしたような気がしてならない。


安倍氏の盟友である麻生太郎氏は、安倍政権の政治遺産(レガシー)について、「歴史に残る政治遺産は4字で語呂がいいものが多い。岸政権の『安保改定』、佐藤政権の『沖縄返還』もそうだ。『憲法改正』はまさに4字だ」と語ったという。知的レベルの極めて低い軽薄な言葉で、この程度の政治家を副総理としなければならない日本国の人材不足はかなり深刻だが、もはやそれを嘆いていられるほどの状況にはない。


無批判に戦争になだれ込んでいった第2次世界大戦の前の空気感が、今ふたたび漂い始めたことを庶民は意識しなければならない。(了)