琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

国を富ます企業を国も応援する

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 463兆1308億円――。途方もない金額だ。実はこのお金、企業がため込んだ内部留保の金額(2018年度末)なのだ。7年連続での過去最高更新だが、とにかく今、企業は潤っている。にもかかわらず庶民の生活は楽とは言えない。むしろその逆。いったい何なんだ、これは。そのからくりを探ってみる。
 
●企業の儲けのたまり、過去最高
まず「内部留保」。これは企業の売上高から人件費や原材料費などの費用を差し引き、法人税や配当を支払った後の利益を積み上げたもの。つまり、純粋な儲けの貯まったものだ。
これが463兆1308億円。日本の税収(2019年度)が62兆4950億円だから、その7.4倍のお金が、企業の懐にとどまっているわけだ。
とりわけ儲けを独り占めしているのが大企業だ。資本金10億円以上の大企業の儲けっぷりは凄まじく2018年度末時点で1年前に比べ8.1%増の234兆903億円。これだけでも日本の税収の4倍近く。恐ろしい儲かり方なのである。
では、さぞかし勤め人の生活は潤っているだろうと思うのだが、さにあらず。企業は賃上げに積極的に応じる構えはなく、お金を外に出そうとはしない。労働分配率は改善しないままに推移している。「社会貢献に振り向けろ」とまではいわない。せめて身を粉にして働いた従業員に還元すれば、それが消費に回り、間接的に社会を潤す原動力となるだろうが、企業はがっちりお金を抱え込んだまま放そうとはしない。庶民はカラカラだ。
しかし、もっと問題なのは大企業の納税態度である。「米国や欧州のグローバル企業との激しい競合を勝ち抜かなければならない」として法人税を初めとして企業が納めるべき、お金をいっこうに納めようとしないのだ。企業に言わせれば自己防衛ということになるのだろうが、本当にこれでいいのか。

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法人税ゼロのソフトバンク
例えば最近、倒産説が喧伝(けんでん)されるソフトバンク。実に巧妙だ。10兆円という巨額の運用規模を誇る投資ファンドが大赤字を抱え、「会社経営がギリギリのところまで来ているのでは」とみる向きも多いのだが、そうではない。わざと赤字をつくっていのだ。2018年3月期の決算で売上高は約9兆1587億円、純利益は1兆390億円を計上していたが、日本国に納めた法人税はゼロ。「ビタ一文」たりとも国にお金を払っていないのだ。
そのトリックはこうだ。まず、ソフトバンクは2016年に英国の半導体大手、アーム社を3.3兆円で買収したが、これを使った。ソフトバンクはアーム社を買収した後、アーム社の株式の4分の3を配当という形で吸い上げてしまったのだ。これでアーム社の実質的な価値は大きく目減りしてしまう。もちろんそれは百も承知で、あえて、自分が勝ったアーム社の価値を傷つけ、評価を下げたのだ。そのうえで価値が下がったアーム社の株を自分のグループ内の会社に買い取らせる。アーム社の株を買い取る会社は、当初の価値より大幅に下がってしまった株を買うのだから、赤字となる。その会社こそが10兆円の投資ファンドの会社で、この会社があえて赤字になるように操作したわけだ。ここがミソだ。ソフトバンクは赤字会社を抱えこんだわけだから、大手を振って法人税の支払いを国から免除してもらえる。もちろん合法だ。
本来ならソフトバンクは1000億円単位の法人税を払ってもいいはず。それがゼロ。こんなムチャクチャがまかり通るのが日本。そしてアベノミクスなのだ。
 だいたい企業が健全に活動できるのは誰のおかげなのか。国という土台があってこその企業活動ではないのか。なのにその国を蔑ろにして、儲けるだけ儲けて、税金を払わないどころか、その国の民にサラリーとしてきちんと還元しようともしない。そんな企業はソフトバンクだけではないが、これでは国は枯れる。企業栄えて国、枯るる、ではあまりに悲し過ぎるではないか。企業の発展もない。国を富ます企業を国も応援する、この基本を抑え企業が常に国に奉仕し国民を大切にする姿勢を忘れてはならない。これが本当の企業の生き残り策である。(了)f:id:mitsu369:20200207205954p:image