琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

菅さん、宰相の資格はありません

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 ミスには2通りある。許されるミスと許されないミスだ。8月6日、菅義偉首相が犯したミスは後者、決して許されないミスである。原爆死没者慰霊式・平和祈念式の挨拶で「我が国は核兵器の非人道性をどの国よりもよく理解する唯一の戦争被爆国であり、『核兵器のない世界』の実現に向けた努力を着実に積み重ねていくことが重要です」という一文を読み飛ばした。しかも原爆が投下された広島で、である。日本国の宰相として「失格」の烙印(らくいん)を押されても仕方がない。

 

「唯一の戦争被爆国」を「忘れた」
 いったい何をするために菅氏はわざわざ広島に赴いたのだろうか。挨拶は肝心の「唯一の戦争被爆国」という一文を飛ばしたため全く意味が通じなかった。そんな挨拶をしておきながら直後の記者会見で述べたのはたった一言、「お詫び申し上げる」だけである。それで済む話ではない。日本国の宰相としての自覚が全くない。とりわけこの日は朝から緊張感に満ち満ちていなければならなかったはずだ。なのにあまりに軽い。
 今から76年前の1945年8月6日、晴れた日だったという。午前8時15分、米軍機は広島市上空から「リトルボーイ」を投下、広島市は火の海と化した。人類史上、初めての原爆の投下である。人口35万人の広島市の市民のうち9万~16万6000人が被爆から2~4カ月で死亡した。当時の国や軍部の幹部が暴走、決して行ってならない戦いに突入した結果として招いた悲惨な結末だったが、犠牲になった市民の霊に対し、為政者である菅氏は心から哀悼の念を表し、この国を再興していく決意を述べるべき立場にあった。

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 ■日本が果たすべき責務がある
 それなのに「忘れた」。どういうことだ。許されるべきことではない。この務めを果たさずして何が日本国の宰相だ。
このことが示しているのは、単に菅氏が集中力を欠き、歴史認識が極めて甘い人間だというだけではない。意識の欠如だ。唯一の被爆国としての意識と自覚がない。被爆国の宰相としてどう振る舞い、どう国の舵を切っていくのか、その意識がないのだ。
 一般の何の罪もない市民が暮らす街にある日突然、核兵器という無差別殺人兵器を落とされたのである。これほど惨いことがあるだろうか。体験したのは世界で唯一、日本だけである。ならば日本にしかできない主張があるはずだ。戦争の悲惨さを世界に示し、決して戦争を起こさない、戦争を放棄する、憲法9条を掲げるのはそのためだ、こう宣言しなければならない。そのことこそ世界のためになる。その責務を果たしてこそ日本国も世界から尊敬される国となる。
それなのに菅首相はその責務を果たすことを忘れた。これは重い。
「菅さん、あなたに日本国の宰相の資格はありません」 (了)f:id:mitsu369:20210807062112j:image