琴言譚[きんげんたん]

今、救世主なら語る

北北北に進路をとれ

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    安倍晋三首相が1日から7日まで欧州とロシアを訪問する。狙いは今月26~27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の地ならしだ。議長国として日本がどのように主要7カ国(G7)をさばくか、世界経済が不安定な時期だけに安倍首相の采配が注目される。とりわけ大切なのはロシア。米国、欧州と一緒になってウクライナ危機を題材にロシアを非難する側にたってはならない。その意味でも今回のトップ会談は重要な意味を持つのだが……。

●殴らないロシア人

「ロシア人はまず相手をなぐってから交渉する」――。ロシアとの外交の難しさは昔からよく言われるところ。交渉の初期段階でまずグッと詰め寄り、相手の様子を見ながら少しずつ、譲歩を重ねる。落としどころが見いだしにくくなかなか結論まで到達しにくいのがロシアとの交渉なのだ。
ところが、最近は様子が違う。特にこと日本との関係においてはこの「まず殴る」の前段がない。最初から譲ってきているのだ。
その最たるものが北方領土問題だ。プーチン大統領は今年4月に北方領土の返還問題に関して「妥協はいつか見いだされる可能性があり、見いだされると思う」と述べている。外交交渉においてまず有利にものごとを進めたいなら「問題など存在しない」と突っぱねるのが常道。北方領土においても実質的に4島ともロシアが支配しているわけだから「日本との間に領土問題など存在しない」と言えばロシアは北方4島を現状のまま維持できる。
にもかかわらず、ロシア側は領土問題の存在を認めるばかりか、「妥協が見いだされると思う」という。つまり「一定のラインまで譲る」と明言しているのだ。実はこれは外交交渉のイロハからすれば、驚くべき譲歩だ。
ところが日本はこのロシアが差し伸べた手を振り払い続けている。プーチン大統領も「日本がある段階で我々との接触を制限するのを決定した」という。ウクライナ問題で日本が欧米とともに制裁を決定したことを示唆しているわけだが、ロシアが日本に熱心にラブコールを送り続けているのに日本はそれを袖にしてばかりだ。
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●米国の圧力に屈する日本

北方領土が返還されるなら日本にとっては願ってもない吉事。資源問題に悩まされることもなくなる。にもかからわず、日本がこの問題に取り組めずにいるのは背景に米国のプレッシャーがあるからだ。日本がロシアと接近することに対して米国は一貫して否定的であり、そのために日本もロシアとの領土問題に本腰を入れずにいる。
ロシアもここは見抜いていてプーチン大統領が「米国などパートナーの圧力にもかかわらず、日本の友人は(ロシアとの)関係の維持に努めている」と発言、日本の弱腰をやんわりと牽制している。
さて、※「前門の虎、後門の狼」。ここで日本はどう動くべきなのか。断然、北に進路をとることだ。米国との関係悪化を必要以上に恐れていてはならない。「御稜威(みいつ)は北から降りる」。ここはその法則に従い、北に御稜威をとりに行くことだ。ロシアには天然ガスや石油などの資源はもちろん日本がもたない広い領土と潤沢なマーケット(市場)を持つ。日本が敵対する中国への牽制力もロシアとの提携で強化することが可能になる。
安倍首相は欧州各国を回った後、ロシア南部の保養地ソチでプーチン大統領と非公式に会談する予定。このチャンスを無駄にすることがあってはならない。間違っても「米国の同盟国として」などと虚勢をはってウクライナ問題などで啖呵を切らないことを切望する。せっかくプーチン大統領と会ったのに「成果なし」では困る。「ゴールデンウイーク(GW)だったから成果もお休みでした」では笑えないブラックジョークだ。(了)  f:id:mitsu369:20160502190045j:image 
※【 前門の虎、後門の狼 (ぜんもんのとら、こうもんのおおかみ)】…一つの災難を逃れてほっとする間もなく、またすぐに他の災難に見舞われることのたとえ。