琴言譚[きんげんたん]

今、救世主なら語る

陰にいるのはコイツらだ(上)

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 米国の第45代大統領に共和党のドナルド・トランプ氏(70)が20日正午(日本時間21日午前2時)、就任した。「米国第1主義」を掲げ、これまでの世界の潮流を完全否定するトランプ氏。それにしてもいったい就任前にこれほど注目された大統領はいただろうか。その真意を確かめようとすっ飛んで行ったのが日本の安倍晋三首相だが、なぜあれほど早く会談が成立したのか。理由がある。カジノだ。

 

●解せない強行採決

実に不思議だった。誰も望んでいないカジノをなぜ日本につくらなければならなかったのか。日本経済新聞社が昨年末に実施した世論調査によると、カジノ解禁に対するは「反対」は63%なのに対して「賛成」はたったの26%。にもかかわらず日本でのカジノ運営を認める統合型リゾート(IR)整備推進法(カジノ法案)は昨年、強行採決された。
あまりにも強引、しかも稚拙である。安倍政権の本丸はあくまでも憲法改正であるはず。何も国民の6割もが反対するカジノ法案でリスクをとる必要はない。今後の政権運営を考えれば、ここで無理をせず安全策をとってもよかった。にもかかわらずカジノ法案は強行採決された。そう。強行採決せざるを得なかったのだ。
糸を引いたのがソフトバンク孫正義氏。この男、意外にもトランプ政権に強いパイプを持つ。しかもカジノ経由でだ。

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●カジノ王とトランプ氏
タネをあかそう。トランプ氏の大スポンサーこそ世界一のカジノ王なのだ。米ラスベガス・サンズ社のアデルソンという人物なのである。昨年末で316億ドル(約3・6兆円)の資産を持つアデルソンは米フォーブス誌の長者番付で世界14位。自ら所有する新聞でトランプ支持を打ち出し、1億ドル(約113億円)の寄付を申し出たほど。ウォール街をバックにつけ桁違いの資金力で選挙戦を戦ったヒラリー・クリントングループへの対抗軸として資金面から必死にトランプ氏を支えた。当然、トランプ氏には絶大な影響力を持つ。
そしてこのアデルソン氏と安倍首相との異常な緊急会見を取り持った人物がソフトバンクの孫氏なのだ。孫氏自身、昨年12月6日、米ニューヨークのトランプタワーでトランプ氏と会談しており、この時、間に入ったのがやはりアデルソン氏。トランプ氏は孫氏を「業界で最も素晴らしい男」と持ち上げており、メキシコでの工場建設を批判されたトヨタ自動車とは雲泥の差である。
 さて、ではトランプ氏と孫氏の間を取り持ったアデルソン氏と孫氏はどこでつながったのか。結局は金である。こういうことだ。1970年代後半、アデルソン氏はコンピューター関連の展示場「コムデックス」を設立したものの業績は伸び悩んでいた。これをちょうど米国での事業拡大のチャンスをうかがっていた孫氏が買い取ったのだ。金額にして970億円。1995年のことである。この資金を元手にアデルソン氏はカジノ王への階段を駆け上っていった。

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●カジノ法案は手土産 
「孫→アデルソン→トランプ→安倍」。この連関図を完結させるためには、カジノ法案の成立を手土産にするしかなかった。トランプ氏の盟友、カジノ王アデルソンが日本でもビジネスを展開する環境を整え、どうぞおいでくださいという「OMOTENASI」の証しをぶら下げていくしかなかったのだ。またしても国は安倍氏によって売られた。
 もともと推進派がカジノ解禁のメドとしてきたのは、東京オリンピックが開催される2020年。外国人観光客向けのアミューズメントが不足しているというものだったが、今となってはとても間に合わない。
 辻つまを合わせるかのように出てきたのが、経済効果だ。カジノ法案が国会に初めて提出された2013年、米投資銀行シティーグループは東京、大阪、沖縄の3カ所にカジノができた場合、約1・5兆円の年間収入が見込めるとのリポートを発表した。まるで外国人が1・5兆円を日本に落とすような錯覚をしてしまうが、リポートを読み込んでみればこのうち8割のお金は日本人が落とす。
ただ仮に全額を外国人が全額を落としてくれるにしても、たかだか1・5兆円である。日本が抱える債務1000兆円と比べてみれば焼け石に水だろう。もう一度、日本のもの作りの力を復活させ、地道に財政再建に取り組むべき時に、裏の世界とのつながりを持つ遊興施設を呼び込むことは警備費などのコストを考えてみても割に合わない。そればかりか、最も肝心な日本人のもの作りの精神を腐らせる。
100害あって1利なしのカジノを「朝見外交」の道具につかった安倍政権の浅薄な政治感覚は万死に値する。「アメリカンファースト」を声高に叫ぶトランプ氏に国を売り、こびへつらってみても意味はない。それが分からない安倍政権に未来は託せない。(了)