琴言譚[きんげんたん]

今、救世主なら語る

炭素減らして放射能漏れの愚

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バカにしてる――。そうでなければ国民を無視している。6月9日。経済産業省が国のエネルギー基本計画に将来の原子力発電所の新増設の必要性などを明記する方針であることが明かになった。その前々日、茨城県大洗町日本原子力研究開発機構で大量のプルトニウムが漏れ出す事故があったにもかかわらずだ。日本の最高峰の原子力技術を持つ原研で信じられないミスがあったその直後に、原発の増設を発表するとは、国民をバカにするにもほどがある。

 

●2万超ベクレルのプルトニウム
「真剣に反省し、手順を考え直すべきだ」。7日。原研の事故を受け原子力規制委員会の田中俊一委員長はこうコメントした。もっともだ。ウランプルトニウムが入った保管容器から放射性物質が漏れたのだ。5人の作業員の中で最も多い人の肺からは2万2000ベクレルのプルトニウムが検出された。国内最悪の内部被曝である。5人はそのまま医療機関に搬送されたが、これだけの被爆があれば健康に影響がないはずはない。「5年、10年すればそれが顕在化する可能性がある」というが、そんな生易しいものであるはずはないことくらい素人でも分かる。
 事故は初歩的なミスだった。保管容器の内部の状況を確認するため、蓋を留める6本のボルトのうち4本を外したところでなかのビニール袋が膨らみ、それでもなお残りの2本を外したため、ビニール袋が破裂した。異変を感じた段階で作業をストップしておけば、事故は防げた可能性が高い。残念なミスだ。
本来、このようなミスは起こりえない。しかし、起きた。つまり、事故は常に起きるのだ。「人間はミスを犯す動物」。これが基本だ。なのに本来起こるべきでない事故は、起こらないものと考え、原発を増設するなどもってのほかだ。

 

●米国抜きのパリ協定に拘泥(こうでい)
経産省の理屈は原発増設の理由を「地球温暖化対策の新枠組みである『パリ協定』を受けた計画」と説明、温暖化ガスを2050年までに80%削減するには原発の増設が不可避だと主張するが、これもおかしい。パリ協定など6月1日にトランプ大統領が、ホワイトハウスで声明を読み上げ、離脱すると表明したばかりではないか。米国抜きのパリ協定などなんの拘束力もない。わざわざ形骸化したパリ協定を引き合いに持ち出し、そのために原発を増やすなど、これまたセンスがない。
そもそもトランプ氏が指摘するように温暖化ガスと地球温暖化の因果関係は不透明な部分も多い。仮に温暖化がガスのせいだとしても、それを抑えるために放射能漏れを定期的に起こす原発を回すのは本末転倒だ。温暖化ガスと放射能のどちらが地球環境に悪影響を与えているのか、少し考えれば分かりそうなものだ。
今、政府は国民の声を聞く耳を失っている。これだけ原発リスクが赤裸々になるなかで、あえてそれに挑戦するように原発推進路線を打ち立てる。国民不在の国づくりなどあるはずはない。このタイミングで原発推進とはあまりに惚(ぼ)けた阿呆(あほう)ではないか。     (了)