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琴言譚[きんげんたん]

今、救世主なら語る

散るぞ悲しき 


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東京都知事選が大詰めに差し掛かっている。核武装もやむなしと公言する小池百合子氏が頭一つ抜けだし、これを元建設省官僚で岩手県知事時代は借金を2倍にした増田寛也氏が追う展開。つくづくこの国は「人がいない」と思うのだが、それにしても残念なのはジャーナリストの鳥越俊太郎氏。最大の「売り」が聞く耳を持っていることとは……。都民は話を聞いて欲しいのではない。聞かせて欲しいのだ。あなたの見識を。

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[※平成28年7月27日 産経新聞より]


●鳥越さん、あなたはジャーナリストですか?
 今、世はジャーナリス流行りである。とりあえず「ジャーナリスト」と言っておけばなんとか格好がつく。「こういう条件がジャーナリストには必要」といった確たるものがないせいかもしれないが、猫も杓子も自称、ジャーナリストである。ただ、この人は本物だと確信していた。都知事選が始まる前までは……。
 鳥越氏は1940年、福岡県に生まれる。1965年、京大文卒後は毎日新聞社に入社、週刊誌「サンデー毎日」の編集長も務めた。宇野宗佑首相の愛人問題を追及、退陣に追い込んだ敏腕ぶりは当時、確かに異彩を放っていた。権力と決然と対峙、間違いなくジャーナリストとして生きてきた人物であったはずだ。
 ところがだ。権力と戦う立場から一転、権力を追う立場に変わったとたん、口をつぐんでしまった。自分のポリシーを隠してしまった。驚くべき、そして悲しき変節である。
小池氏も増田氏もある意味、この程度の人物である。もともと差しある見識も持ち合わせていないのは分かっているし、その分期待もない。しかし、鳥越氏は違う。参院選で大勝、改憲を手中におさめた与党に対して、きちんとものを言い、牽制する役割を担っている。だから、民進、共産、社民、生活が団結しおした。その役割を果たさなければならない。口をつくんではならないのだ。


●ポリシーをなぜ隠す
本来、鳥越氏は反原発であったし、護憲、そして反アベノミクスであったはずだ。なぜ、それを声高に主張しない。野党の微妙な政策の違いを気にして、自分の主張を引っ込めたのか。神輿は軽いほうがいいと割り切ったのか。
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●散り際の美学を知れ
ジャーナリストなら主張して欲しい。なぜ原発なのか。護憲なのか、アベノミクスのどこに欠陥があるのか、論陣を張って欲しい。それで負けたっていいでないか。権力と正々堂々戦って敗れたならそれはそれでジャーナリストらしい。権力を牽制し、都民を啓蒙し、そして散るならよいではないか。
 勝つことに汲々として、言うべきことも言わない。それは鳥越氏の役割ではない。鳥越氏に対する都民の期待は「勝つ」ことではなく「有意義に負ける」ことである。状況に応じて自分に何が託されているのか、その役回りをきちんと察し、全力を尽くす。それが大人というものだ。鳥越さん、今のあなたは子供です。(了)