琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

猫に小判、下戸に10万円のボルドーワイン

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この日の赤ワインは1996年ボルドー産のシャトー・ラフィット・ロートシルト。5月27日、即位後初の国賓となるトランプ米大統領夫妻を歓迎する宮中晩餐会で、アルコールを口にしないトランプ大統領に出されたワインは1本市価10万円を超えるものだった。宮内庁ができるだけ通訳を介するよう依頼していたにもかかわらず、陛下は英語で直接やり取りされる場面も多く、皇后さまは終始、英語で話されたという。

    陛下は1974年にオーストラリアでホームステイし、1983~1985年に英オックスフォード大に留学された。皇后さまは20代前半までの一時期を米国で過ごし、ハーバード大を卒業した後、1987年から外務省で外交官を務められていた。お二人とも英語はご堪能でいらっしゃる。
だからこそだろうか。宮内庁はお二人に依頼していたのだという。「通訳を介されますように」。宮内庁の依頼の理由を「意味が正しく伝わりますよう」としているが、「外国賓客の接遇は他国との友好関係を深める目的で行われ、相手国の大小にかかわらず平等にもてなすことが、重要な公務の一つである」とされていることから考えると、宮内庁がなぜ、そのような依頼をしたのかが見えてくる。 

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⚫︎千秋楽は大騒動
大相撲夏場所千秋楽の観戦も大騒動だった。正面最前列、16人分の升席を潰し、椅子に腰掛けての観戦。正面最前列の升席は席を仕切る鉄枠が取り外され、ソファが据えられた。一見すると、客で埋まった正面に、大統領と首相の両夫妻が着席しているように見えるが、実はその周囲は広く確保され、シークレットサービスや日本のSPらが固めていた。大相撲は、江戸時代から庶民の娯楽だが、江戸時代とて庶民を押しのけて最上等の席から観戦した将軍は、記録にない。令和の相撲観戦は「将軍様もびっくり」の庶民そっちのけの大観戦だった。

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 それにしても日本は、言葉でも譲り、国技でも譲り――。そして最後は金でも譲った。いつものことではあるが、実にみっともない。象徴的なのが5月28日、トランプ大統領は「日本は(米ステルス戦闘機の)F35を105機買う。日米両国の危機への対応力は増すだろう」と発言したのだ。何と一方的な話なのか。
実はこれ、米政府の提示額や納期を日本側が受け入れる「対外有償軍事援助(FMS)」に基づくもので、2018年12月に公表された取り決めだ。つまり日本は「援助」という理由で、米国の言いなりにものを買わされる決まりなのだ。2019年度のFMSによる調達額は予算ベースで7013億円と18年度から7割増える見通しだという。気を遣い、1本10万円のワインまで出してもてなした日本に対する見返りがこれ。あまりにバカバカしくはないか。

   仮に海外調達を増やしても日本企業がライセンス生産するなら問題無い。しかしFMSでは米国製を買うわけだから、日本企業の出番は無い。日本がお金を使うのに、そのお金は日本の企業には回らないのだ。
トランプ大統領は満面の笑みで帰国の途に就いた。今回も残ったのは日米の「蜜月」という言葉と、日本から米国に対する多額の支払いの約束だけだ。いったいいつまで続けるつもりなのか。(了)