琴言譚®︎[きんげんたん]

今、救世主なら語る

プライドはないのか

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 世界が驚いた。国連総会第1委員会(軍縮)で核兵器を法的に禁止する「核兵器禁止条約」について、日本がこれを議論することに反対したのだ。非核三原則を国是とし平和国家としての地歩を固めてきた日本。その日本が核兵器保有を認めたことで日本は完全に信頼を失った。核兵器の保有を否定しない「平和国家」など誰も相手にしない。プライドはどこにいった。

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●大切なのは米国の顔色だけ


 「米国の核抑止力(核の傘)に依存する安全保障政策と相いれない」。核兵器保有を擁護する側に回ったことについて日本政府はこうコメントした。悲しいではないか。「米国の核で守ってもらっているのだから、その核を否定するわけにはいかない」というのだ。いつから日本はこんな卑屈な国になったのか。
 「相いれない」というならむしろ非核三原則の方だ。核兵器を「製造せず」「持たず」「持込みませず」とする この国是と核兵器の保有は全く整合性がとれない。1967年 12月,佐藤栄作首相も国会答弁で正式に表明しているこの国是を真っ向から否定し、米国の顔色を伺うためだけに国連という最大の公の場でみせた日本の態度。もはや「醜態」としか表現のしようがない。

 

ヒロシマが泣いている


 いったい日本はこの核兵器で何万人の人が亡くなってしまったのか。無差別に人を殺す核という特殊な兵器の残酷さは日本人しかしらない。その日本人が核兵器を認めてどうするのだ。世界にあの悲劇を伝え続けるのが、日本の役割ではないか。日本だからこそ説得力を持つのではないか。ヒロシマナガサキが泣いている。

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●コケにされる日本


 その役割を放棄するということはプライドの放擲(ほうてき)である。プライドなき国はもはや米国の番犬でしかない。その証拠に最近、米バイデン副大統領が習近平氏にある発言をして物議をかもしている。「日本は一夜で核武装可能」だと。
 この国はチェック機能を喪失してしまったのだろうか。野党は死に体のTPP法案の成立に抵抗するポーズをどうとるかだけに腐心、第4の権力とまでマスコミは沈黙を続ける。いったいこの国の良心はどうなった。(了)

ソロスが間違えた

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 天才投資家ジョージ・ソロスアジア通貨危機を演出し、イングランド銀行を打ち負かしたその男が読み間違えた。米大統領選でだ。もちろん読み間違えたのはソロスだけではない。世界が間違えた。100%クリントン――。その予想が外れた瞬間は「富裕層富裕層による富裕層のための政治」に小さいが歴史的な穴があいた瞬間でもある。

 

ウォール街が負けた


一国の中央銀行との戦いにすら負けなかった投資家ソロス。249億円(約2兆5900億円)もの個人資産を持ち「ソロスがどこにはるか」で株価は乱高下し、世界のマネーの流れは決まった。そんな伝説の投資家が米大統領選で「はった」のがクリントンだ。今回の大統領選でもクリントン絡みのスーパーPACに700万ドル(約7億2900万円)を献金を行っていた。
 ウオール街や富裕層との蜜月ぶりをクリントンも隠すことはなかった。ソロスと同じ巨大ファンドを操る投資家であるウォーレン・バフェットは2015年12月、ネブラスカ州オマハで行われた集会でクリントン支持を表明、フェイスブックシェリル・サンドバーグCOOも「ヒラリー・クリントンが大統領になってほしい」と語った。大物シンガー、レディーガガも応援集会に駆けつけた。
 米国のトップ層の誰もがヒラリーを応援し、勝利を疑わなかった。あからさまにヒラリー側につき、そして負けた。これまで政治の舞台からこぼれ落ちてきた大衆が、特権階級の資本主義に「ノー」を突きつけたのだ。大衆が勝利した。これは英国のEU離脱に次ぐ「革命」と言っていい。
 さて、日本。トランプ勝利を受け、円が高騰、日本の市場(マーケット)は暴落し一時、1000円以上値を下げた。今後の世界経済が一気に不透明感を増したとの見方が日本を覆った。

 

●危機は「ヒラリ」とかわされた


 しかし、日本は救われた。トランプ勝利で危機はヒラリとかわされた。ウオール街のしたたかな世界戦略の魔の手はこれでいったん動きを封じられた。そのことを日本人は知るべきである。
 トランプは確かに保護主義であり米国の利益の露骨な代弁者である。そこに「世界の警察官」の品格はない。それでいい。それが現在の等身大の米国なのだ。「もっと金を出さないなら米軍を日本から撤退させる」。大いに結構。そこから日本はどうするか考えればいい。核の傘をちらつかされながら、ODAへの支出や米国債の購入など巧妙に形を変えて巨額のマネーをかすめ取られるよりずっといい。

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●日本よ、ここで変われ


 トランプ勝利は日本にとっては願ってもない僥倖(ぎょうこう)だ。ここで日本の立ち位置を考える。世界でどう振る舞うのか、もう一度白紙に戻して考えるチャンスを得たのだ。そこを見誤ると日本もソロスのように読み違える。 (了)

文殊読みの「もんじゅ」知らず

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高速増殖炉原型炉」――。これ戒名ではない。プルトニウムウランを混ぜ合わせたMOX燃料を使用した発電プラントのことだ。日本では福井県敦賀市で研究が進む。原発何基分もの威力を持つ増殖炉に、つけられた名前は「もんじゅ」。獅子を乗りこなす文殊菩薩もんじゅぼさつ)のように、原子力という巨獣を飼いならしたいという思いがこもるという。しかし、気をつけて欲しい。人は知恵を司る文殊菩薩ではない。


●荒唐無稽な夢


ノーベル賞受賞者のコメントを聞いて毎年、痛感させられるのが真摯さだ。2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典・東京工業大学栄誉教授も「生命の現象の数%を解明しただけ」と述べたが、本物の知恵者は決して傲らない。しかし、日本の原子力関係者の傲慢さと来たらどうだろう。福島第1発電所の事故で分かったように原子力発電ですらいったん「臨界」に突入すれば制御不能に陥るというのに、その何倍もの威力を持つ巨獣「もんじゅ」を飼いならそうというのだ。発電で消費した量以上の燃料を生み出すという荒唐無稽な「夢」は、人の分際を大きく踏み越えてしまっている。


カネゴン化するもんじゅ


日本はこの「もんじゅ」に過去20年の間に1・2兆円もの資金を投じ、カネゴンのようにモンスター化させてしまった。冷却のためのナトリウム漏れ事故やそのトラブルの隠蔽、1万カ所もの点検漏れなどトラブルを次々と引き起こすだけで、ほとんどまともに動かぬままの巨獣なのだが、飼っておくだけで年間200億円のお金がかかるという。本気で飼いならすなら今後10年で耐震補強などで6000億円が必要だ。

では、もんじゅ廃炉にすればすべて終わるのか。これまた簡単ではない。30年の時間と3000億円のお金がかかる。通常の原発なら850億円の廃炉費用も、モンスターになるとその3倍以上に膨れあがる。引くもお金、進むもお金――。実に原発にはお金がかかる。
しかしつくってしまったものは仕方がない。「存続か」「廃炉か」。政府はようやく「もんじゅ」をどうするか、年内に決着をつける方針で、原子力規制委員会の頑張りもあって年内に廃炉が決定、早ければ2020年にも廃炉を開始する計画だ。途方もない授業料を払ったが、日本が原発の手ごわさを学んだのなら仕方のない支出でもある。


●終わらない悪夢


ところが終わらないのである。確かに政府は原子力関係閣僚会議で高速増殖炉原型もんじゅ廃炉の方針は決めた。官房長官菅義偉氏も「もんじゅは今年中に廃炉を含めて抜本的な見直しを行う」ことは宣言した。ただ、高速炉の開発は別の方向で続けるというのだ。フランスが現在、研究を進めている「ASTRID(アストリッド)」を高速炉時代の先駆けと位置づけ、共同研究などの方式で再び開発を進めるという。
おかしいではないか。もんじゅでこれだけの代償を払っておきながらまだ懲りない。ずるずると「夢」に引きずられ巨費を垂れ流ししていく。フランスの原発技術に限界があることなど福島第1原発の事故処理でフランスにお金だけとられて何もできなかったことで確認済みではないか。

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●漂うプルトニウム


しかもこの高速炉で万が一にも「消費した以上の燃料を生み出す」発電が現実のものとなったとすると、日本は解決不能な新たな課題を背負いこむことになる。増え続けるプルトニウムを消費するためにさらに猛烈ないきおいで原発にのめり込んでいくしかない。
なぜなら国際的な取り決めで「原子力発電により発生する使用済み核燃料から取り出したプルトニウムは、自国で使い切らなければならない」という一種「国際協約」があるからだ。ただでさえ日本は現在、国内外に48トンのプルトニウムを抱え立ち往生している。例え国内の原発16~18基でプルサーマル発電でプルトニウムを消費したとしても年間5・5~6・5トンでしかない。すでに消費しきれないほどのプルトニウムを抱えているにもかかわらずさらに高速炉でプルトニウムを増やしていくなら、「日本も核武装を検討しているのではないか」との嫌疑がかかっても仕方がないだろう。

 

●フランスは「罠」


ここはいったん原発から手をひくべきだ。少なくとも高速炉はリスクが大きすぎる。とりわけ海外、フランスとの共同開発など体よく巨額な資金をくすねとられるだけである。海外との連携に落とし込めば、何か高尚なプロジェクトに昇華させた気になるのは日本の霞が関の官僚の癖であり、陥りやすい罠でもある。

空想を空想でつなぐ新技術への野望は無意味であるだけでなく、膨大なコストを伴う。時の権力者たちが目の前の帳尻を合わせるために、非現実な絵を描いているうちに、国民は戸惑い、国はやせ衰えていく。ことは急を要する。(了)

島は2つで歯車を回せ

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    北方領土問題が解決に向け動きだそうとしている。安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が今秋から年末にかけ会談するのを機に、日ロの政府が落としどころを探る動きを活発化させているからだ。ここは日本も分別をわきまえ歯舞、色丹の2島で合意し、両国の新しい時代を引き寄せるべきだ。日本のソケットの穴は2つ、4つのコンセントのピンは刺さらない。

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※読売新聞記事より

 

●米国の間隙(かんげき)をつけ


日ロ急接近の理由はプーチン氏と安倍氏の個人的な信頼関係。これまで両氏は14回の会談を行っており、気脈は通じてきている。実際、柔道家でもあるプーチン氏は親日家で知られ、安倍氏プーチン氏を「ウラジミール」とファーストネームで呼ぶほど。その2人が11月にペルー、そのわずか1カ月後の12月には安倍氏の地元である山口県で会談することが決まったわけだから、「両国の間で何か劇的な進展があるかもしれない」との期待が高まるのも当然だ。
確かにそのサインはある。23日にまでロシア大統領府が明かにしたところによると、ロシアのプーチン氏が日本との経済協力を担当するポストの新設を決め、10月15日までに人選と権限について提案するようメドベージェフ首相に指示したというのだ。これは日本政府が対ロ経済協力の担当相を新設したことに対応した措置ではあるが、両国がまず経済から歩み寄ろうという意思を明確にしたものといえよう。

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●整う環境


まずは経済、次に領土問題、そして平和条約締結と日ロの関係が進展することを期待したいところだが幸いその環境は整っている。最たるものが米国だ。米国はちょうどオバマ大統領の任期切れが迫り11月には大統領選もある。いわば外交の空白期間に入っており、日ロが急接近することに横やりを入れる余裕がない。一方、交渉相手のロシアも原油安と欧米の制裁により経済状況はかなり厳しく、日本との関係強化を急ぎたいところだ。
しかし、何よりも重要なのは日本である。アベノミクスの生命線である株価は伸び悩み、銀行の収益悪化などマイナス金利の副作用も顕在化し始めている。頼みの中国は不安材料満載で、とても日本の経済をけん引するどころではない。袋小路に差し掛かっていることは明白で、ここは一気に北に進路をとり、ロシアとの連携で苦境を脱したいところだ。

 

●御稜威(みいつ)※は北から


御稜威は北から下りる。ロシアとの交渉をまとめ平和条約締結によりロシアという巨大なニューマーケットが本格的に開かれるとともに、北方領土周辺の石油をはじめとした資源開発にも目鼻がつく。単なる心理的効果ではなく、構造的なプラスの材料が北にはいくつも埋まっているのだ。
その北の御稜威を手中に収めるため、日本は正々堂々、4島返還の主張を放棄すべきだ。1956年の日ソ共同宣言にそって歯舞、色丹の2島を返還してもらい、択捉、国後の2島は譲る。これが正解だ。ロシアも2島なら「ダー」※となる。

 

●ソケットの穴は2つ


よく考えて欲しい。日本のソケットの穴は2つ。これで証明しているではないか。4島にこだわることは、交渉をまとめないための方便だ。2つに絞る。ここにこそロシアとの交渉のツボがある。肝心なのは領土を増やすことではない。電源を入れること。ソケットの穴2つにピンを差し、金龍国ニッポンにスイッチを入れることだ。そうすれば、歯車が回りだす。 (了)

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※御稜威(みいつ)…「厳 (いつ) 」を敬っていう語。天皇や神などの威光。「―津々浦々に及ぶ」

※ダー【Да】(ロシア語)…日本語で「はい 」の意。

○関連記事『北北北に進路をとれ』

http://mitsu369.hatenablog.com/entry/2016/05/02/%E5%8C%97%E5%8C%97%E5%8C%97%E3%81%AB%E9%80%B2%E8%B7%AF%E3%82%92%E3%81%A8%E3%82%8C

 

築地問題、解は『2つ』


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    築地市場(東京・中央)からの移転が延期された豊洲市場(東京・江東)。建物の下にポッカリと空洞が空き、水がたまっていることが判明、建設工事の談合の疑いも出てきた。迷走ぶりが際立つなかで、小池百合子知事はいったいどう決着をつけるのか。正解は「築地も豊洲も両方生かす」だ。

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●建物の下に空洞

 

築地の移転先として整備が進む豊洲市場の用地はもともと東京ガスの工場跡地。当然、土壌は汚染されており、有害物質であるベンゼンが環境基準の4万3000倍という高いレベルで検出された。この対策として東京都は表土を削りとり、新たに奇麗な土地を盛ることで安全を担保する手はずだった。
ところが、違った。確かに厚さ2メートル近くの表土はけずりとられていたものの、その後に盛られるはずの土壌が、建物の下の部分にはなかったのだ。結果的に建物の下には深さ4・5メートル近くの穴があき、そこに不審な汚水がたまってしまっていた。

 

●わざと穴はつくられた

 

いったいなぜこのような事態となったのか。実はこの建物の下の穴は、決して「うっかり埋め忘れた」わけではない。それはそうだろう。これだけ反対者の多い豊洲移転である。工事を担当するゼネコンは1㍉の狂いもないよう工事を進めたはすだ。
となるとなぜ建物の下に穴があるのか。調査を重ねて判明したのだが、「周到に、そしてあえて空洞にした」(工事関係者)という事実だ。表面は削り取ったとはいえ、汚染が残っている可能性のある土壌と、食べ物を扱う市場の床が直接、触れ合うことを避けたのだ。このことは誰にも知られず、極秘のまま闇に葬られるはずだった。
しかし、その計画は小池氏の登場で狂ってしまう。工事関係者から都議の一部に「秘密の穴」の存在が漏れ、マスコミを通じて世間の知るところとなってしまった。
庶民の食べ物が有害物質を懸命に遮断した建物の中で取り扱われること自体、無理がある。極めてセンスのない移転計画だったわけで、建物の下にあいた穴は、如実にこの計画がいかに「無理筋」だったかを象徴する1つの証左でもある。

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●築地を生かせば豊洲も生きる

 

ただ、事ここ至っては、豊洲市場がいかに問題であるかをあげつらっていても問題は解決はしない。5000億円を投じた世界最大の市場は出来上がってしまったのである。都民の血税を投じたこの施設をどう生かすかを検討するのが筋だ。
そして、そこで出てくるのが「豊洲」も生かし、「築地」も残す選択肢だ。両市場を機能分担し、連携させながら両方、使うのだ。例えば築地市場は国内消費者向け、そして豊洲市場は海外への輸出品、または海外からの輸入品をさばく市場として利用する。豊洲には築地になかった船着き場も整備されている。ここを使って生鮮品を出し入れすればいい。

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●食の輸出大国へ

 

農林水産省がまとめた2015年の農林水産物・食品の輸出額は7452億円。前年比で21・8%増、3年連続で過去最高を更新している。世界的な和食ブームを追い風に安倍政権も「2020年には1兆円にまで引き上げる」との目標を掲げており、場合によっては「前倒しで実現させたい」(政府関係者)という。
 日本の食が世界に開かれていくとするなら、築地だけでは足りない。オリンピックロードは迂回させ、築地は残すべきだ。老朽化の問題はリニューアルでなんとでもなる。そのうえでブランドが失墜した豊洲と連携、豊洲は海外との取引の拠点として使えばいい。
 1つつくれば、1つ壊さねばならない。そう考えるのは人間の頭のかたいところである。 (了)  

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どう(銅)でもよくない、オリンピック

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 夏季五輪リオデジャネイロ大会が閉幕した。日本のメダル総数は41個で前回(2012年)のロンドン大会の38個を上回り史上最多。メダルラッシュと国は沸くが、内訳を見ると銅メダルが21個と半分以上を占め、金メダルは12個と全体の3割だ。つまりリオで日本国の国歌「君が代」が鳴り響いたのはわずか12回でしかない。あえて言おう。銅では意味がない。
 
●思い出づくりもいいけれど……。


「楽しみました」「いい思い出ができました」。最近の五輪選手に多い試合後の言葉だ。確かにそうだろう。あれだけの大舞台で世界の注目のなかでプレーできたのである。良い経験になったであろう。これからの人生に生かして欲しいのはもちろんのことだ。
 ただ、それで終わってはならないのがオリンピックである。もともとギリシャで始まった古代オリンピックギリシャ全土から競技者や観客が参加したが、いくらポリス同士で戦争をしていても、いったん中断してオリンピックに参加しなければならなかった。つまりオリンピックは戦争の代わりだったのである。日本選手にその覚悟が見えない。

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●国費はどうする


そもそも選手1人にどれだけの国費を投じているのか、考えて欲しい。今回のリオには300人を超える選手団を日本は派遣したが、その一人ひとりに国費が投じられているのである。それだけ選手には国の威信を託しているのだ。
それには金メダルをとってもらうことが肝心だ。日の丸を1番高いところにあげ、日本国の国歌を鳴り響かせなければ、国の威信は示せない。
銅も結構。銀ならなおいい。個人の良い思い出になるだろう。しかし、国の威信ということになれば話は別だ。金でなければなんの意味もない。銀でも銅でも1度は試合に負けたという事実は揺らがない。
日本は今、最も負けてはならない時期だ。尖閣諸島沖に中国の船団が押し寄せる領海を侵犯され続けているのである。いわば国難。寸分も国の弱みは見せられない。それほど国が危うい時期に個人の思い出づくりに国が付き合っている余裕はない。金龍国ニッポンには金メダルこそよく似合うのだ。(了)

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タラちゃんが危ない

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政府の税制調査会が9月から所得税改革の議論を始める。最大の目玉は配偶者控除。専業主婦や年収が一定額以下の配偶者がいる世帯を抱える大黒柱の税金を軽くする制度で、安倍政権はこれを見直す方針。専業主婦がいる世帯だけを税制面で優遇する制度をやめ、主婦が働く世帯と平等に課税するという。一見、正論。しかし、サザエさんはタラちゃんを家に残し、働きにでなければならなくなる。

 

●狙われた配偶者控除


8日に開かれた政府の経済財政諮問会議では第3次安倍再改造内閣の重点課題について、議論がなされた。議題は「高額医薬品の価格算定手法の見直し」や「労働力人口の減少など経済構造の変化を見据えた成長力強化」などもっともらしいものが並んだが、このなかに混ぜ込まれたのが、配偶者控除の見直しだ。
経済財政諮問会議という、厳めしい名前の会議の目的は煎じ詰めれば国の歳出のカット。この会議で配偶者控除の「見直し」を議論するということは、国の支出を減らす方向で検討を進めることを意味する。すなわち配偶者控除の事実上の撤廃だ。実現すれば、専業主婦を抱えるサラリーンマン世帯への支援を打ち切るわけだから、そのままでは家計は苦しくなる。主婦は家事に専業していることは許されず、労働市場に追い立てられてしまう。

サザエさんは怠け者?


安倍政権ではこれを「女性活用」という。このまま専業主婦がいる世帯を税制面で優遇し続けることは社会の女性活用に反し、「女性の働く意欲を損なうことにつながる」と主張する。
しかしだ。サザエさんは「働く意欲がない」から家庭にいるのだろうか。マスオさんが国に支払う税額を圧縮するためにあえて家にいるのだろうか。それはけしからん、「1億総活躍社会なんだから、サザエさんも外に出て働け」というのか。ならば、タラちゃんはどうなる、タマのごはんは……。


●子供は2年は自分で育てろ 


こう考えると増税を盾に専業主婦を労働の場に駆り立てるのには無理がある。「いや、託児所がある。幼稚園がある」という見方もあるだろう。確かに今はゼロ歳から子供を預かる施設が都心にもある。しかし、簡単に考えてはいけない。子供はやはり少なくとも2年は母親が育てなければいけない。成人してからの人間性に欠損が生じる。人間性が固まる前に安易に外に放り出してはならない。たかだか1時間800円~900円を得るために、主婦が家や子供を犠牲にしてはならないのだ。
大切なのは庶民が一家の大黒柱をきちんと立てられることだ。中流階級であっても暖かい家庭生活を享受できる社会をつくるべきだ。もちろん高額所得者なら税制面の支援は不要だ。しかし、そうでない中流階級には、きちんと政府が税制面で生活を支援し、家を立てられるように応援してやらねばならない。

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●家が壊れる、国が壊れる


DODAのデータをみると20歳代の平均年収は349万円、30歳代で456万円。40歳代になってようやく572万円だ。どの世代も東京なら食べていくのがやっとだろう。妻が専業主婦で配偶者控除を撤廃されたなら、とても生活は成り立たず、子供をおいてパートに出るしかない。それを「1億総活躍」というなら、何とも浅薄な「活躍」だ。
安倍政権はいったい何を目指しているのか。このままだと家が壊れ、国が壊れる。(了)

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散るぞ悲しき 


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東京都知事選が大詰めに差し掛かっている。核武装もやむなしと公言する小池百合子氏が頭一つ抜けだし、これを元建設省官僚で岩手県知事時代は借金を2倍にした増田寛也氏が追う展開。つくづくこの国は「人がいない」と思うのだが、それにしても残念なのはジャーナリストの鳥越俊太郎氏。最大の「売り」が聞く耳を持っていることとは……。都民は話を聞いて欲しいのではない。聞かせて欲しいのだ。あなたの見識を。

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[※平成28年7月27日 産経新聞より]


●鳥越さん、あなたはジャーナリストですか?
 今、世はジャーナリス流行りである。とりあえず「ジャーナリスト」と言っておけばなんとか格好がつく。「こういう条件がジャーナリストには必要」といった確たるものがないせいかもしれないが、猫も杓子も自称、ジャーナリストである。ただ、この人は本物だと確信していた。都知事選が始まる前までは……。
 鳥越氏は1940年、福岡県に生まれる。1965年、京大文卒後は毎日新聞社に入社、週刊誌「サンデー毎日」の編集長も務めた。宇野宗佑首相の愛人問題を追及、退陣に追い込んだ敏腕ぶりは当時、確かに異彩を放っていた。権力と決然と対峙、間違いなくジャーナリストとして生きてきた人物であったはずだ。
 ところがだ。権力と戦う立場から一転、権力を追う立場に変わったとたん、口をつぐんでしまった。自分のポリシーを隠してしまった。驚くべき、そして悲しき変節である。
小池氏も増田氏もある意味、この程度の人物である。もともと差しある見識も持ち合わせていないのは分かっているし、その分期待もない。しかし、鳥越氏は違う。参院選で大勝、改憲を手中におさめた与党に対して、きちんとものを言い、牽制する役割を担っている。だから、民進、共産、社民、生活が団結しおした。その役割を果たさなければならない。口をつくんではならないのだ。


●ポリシーをなぜ隠す
本来、鳥越氏は反原発であったし、護憲、そして反アベノミクスであったはずだ。なぜ、それを声高に主張しない。野党の微妙な政策の違いを気にして、自分の主張を引っ込めたのか。神輿は軽いほうがいいと割り切ったのか。
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●散り際の美学を知れ
ジャーナリストなら主張して欲しい。なぜ原発なのか。護憲なのか、アベノミクスのどこに欠陥があるのか、論陣を張って欲しい。それで負けたっていいでないか。権力と正々堂々戦って敗れたならそれはそれでジャーナリストらしい。権力を牽制し、都民を啓蒙し、そして散るならよいではないか。
 勝つことに汲々として、言うべきことも言わない。それは鳥越氏の役割ではない。鳥越氏に対する都民の期待は「勝つ」ことではなく「有意義に負ける」ことである。状況に応じて自分に何が託されているのか、その役回りをきちんと察し、全力を尽くす。それが大人というものだ。鳥越さん、今のあなたは子供です。(了)

 

バングラデシュ事件が暴いたJICAの闇


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 バングラデシュの首都ダッカでのテロ事件から1カ月がたとうとしている。外務省は国際協力機構(JICA)などと共同で、政府開発援助(ODA)事業に関する安全対策会議を開き、日本の海外援助を行う上での安全強化策を検討していくという。だが、どうもこの動き、腑に落ちない。表層的な動きのように思えてならない。まるでバングラデシュ事件を手じまう口実づくりのようだ。そう、JICAは外務省が隠してしまいたい巨大な闇を抱えていたのだ。
 

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●JICAの裏で金が動く


バングラデシュの飲食店襲撃事件で犠牲になった日本人は7人。すべて国際協力機構(JICA)が支援する交通インフラ事業に従事していた。バングラデシュの発展にために尽くそうとしていたにもかかわらず問答無用で惨殺するテロの非道さには改めて憤りを感じるが、ここで我々が学ばなければならないのは、「なぜ、犠牲者が国際協力機構(JICA)の関係者だったか」ということだ。よくよく突き詰めると、これは偶然ではない。日本の誤ったODAが引き起こした必然的な結末だったのだ。どういうことか見ていこう。
 テロ事件が勃発したのは7月1日。実はこの直前の6月29日に国際協力機構(JICA)はバングラデシュ政府との間である契約を結んでいる。それは日本の国際協力機構(JICA)がバングラデシュに対しての巨額の円借款を貸し付けるというものだ。金額にして1735億3800万円。円借款の規模としては過去最大で、この巨額の資金を借り受けたバングラデシュ政府は、自国の都市の交通網の整備などインフラ投資に振り向ける計画だという。
 確かにバングラデシュは南アジアと東南アジアの結節点に位置する地政学的には極めて重要な国であることは間違いない。「世界の繊維工場」とも呼ばれ、繊維産業を中心に経済活動も活発になりつつあり、都市部の交通渋滞は激しさを増している。それを解消するために巨額の資金が必要で経済大国である日本が支援するということは自然なことのように思える。にもかかわらず「発展しつつある国を支援していた人を犠牲にするなんてテロはなんて卑劣なんだ」と言えば、片は付く。「テロに負けずに安全に気をつけ世界を助けよう」と言えば聞こえもいい。

●7人の奇妙な共通点


 しかし、それで終わってしまえば本質を見逃してしまう。さらに検証を重ねてみよう。
まず、精査しなければならないのが、今回、テロ事件に巻き込まれた7人がどういう人たちだったかということだ。いずれも交通インフラ事業の支援に従事していたことは先に述べた通りだが、実はこの7人には共通点がある。全員が建設会社の社員であるということだ。オリエンタルコンサルタンツグローバル(東京・渋谷=3人)、アルメックVPI(東京・新宿=3人)、そして片平エンジニアリング・インターナショナル(東京・中央=1人)で、3社はJV(共同事業体)を組み、共同で「ダッカの交通渋滞を解消する」という名目で、交通システム改善事業の実現可能性調査をしていたのだ。
 日本人の美徳として死者にむち打つことはしない。このため今回の事件でも「途上国の発展のためにだダッカに入った。なのに……」という美談仕立ての報道ばかりだった。その影響で一般国民はあたかも7人が無償で、途上国発展のために尽力していたかのような印象を受けたかもしれないが、実はそうではない。全員が社員として現地に入り、それぞれの会社のビジネスを担ったところで事件に巻き込まれたのだ。

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●ODAは誰のため


 さらに重要なのはこれからだ。そのビジネスの正体とは何なのかということだ。結局は日本のODA絡みの仕事なのである。6月末に日本がバングラデシュ政府に対し巨額の円借款契約を結んだがこれも狙いの一つ。こうしたODA絡みの契約が形になりバングラデシュ政府を経由し、交通インフラ整備事業として落ちてきたところをすくう仕事だったのだ。要はODAに群がる建設会社の先兵としてバングラデシュに派遣され、そこで犠牲になったというわけだ。
例えば3人の犠牲者を出したオリエンタルコンサルタンツグローバル(東京・渋谷)という会社を見てみよう。
このオリエンタルコンサルタンツグローバルという舌を噛みそうな長い名前の会社はいったいどういった会社なのか。実はこの会社、2014年10月1日に創業したばかりの建設コンサルタント会社に過ぎない。ただ、もともとは同じく東京・渋谷に本社を置くオリエンタルコンサルタンツという建設コンサルタント会社の海外部門で、こちらは歴史のある会社だ。これを切り離し、別動隊の会社の形態としたのが、異常なのはこの2年間の成長ぶりである。決算公告を拾ってみると2014年9月末時点での資産合計は4億8285万円。これが1年後には85億6818万円にまで急拡大している。この急成長の原動力が、国際協力機構(JICA)を軸としたODA案件だということは想像に難くない。これを見逃してはならない。

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バングラデシュはお腹いっぱい


ODAは経済大国、日本の責務として続けられ、武力を持たない日本の外交の要を担ってきた。しかし、そのお金の使われ方は極めてグレーで、行き先も合理性を欠く。
バングラデシュなども日本の国土の4割程度のところに、1億6000万人もの人が住む。わざわざ、日本がでていかなくても人的資源は事欠かない。それでも日本はこれまで1168人もの人を派遣し、経済協力を進めてきた。その数はフィリピン、マレーシアに次ぐ第3位の規模で、いったいなぜ、人的資源が潤沢なバングラデシュにこれほど日本人を派遣しなければならないのか、説明はつきにくい。
さらにそこにお金を注ぎ込み、バングラデシュ政府を経由する形で、無名の企業が甘い汁を吸ってきていたとするなら、どうだろう。美名に隠れた悪事はたちが悪い。今回のバングラデシュ事件が意味するところを日本人はもう一度、考え直すことが必要だ。(了)

あなたはコーランを唱えられますか

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       バングラデシュの首都ダッカで日本人7人が犠牲になった人質テロ事件。事件が起きて1週間以上が経過、伝えられる凄惨さには耳を覆いたくなる。亡くなった方には心から哀悼の意を表したいが、その死を無駄にしないためにもここで指摘しておきたい。日本人は狙われた。そして狙わせた。

 

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●日本人犠牲、シナリオ通り


イスラム教徒か。バングラデシュ人か」。実行犯はこう問いかけ、イスラム教徒の聖典コーランの一節について公用語であるベンガル語で尋ねたという。イスラム教徒だと分かれば、見逃し一部は開放したが、その逆であるとわかれば刃物や銃で殺害していった。そのやり口の卑劣さは狂気の沙汰としか思えないが、実はそうではない。計画は練りに練られ、外国人たちは計画通り殺されていった。実行犯たちは終始、クールだった。
ここで押さえておきたいのは、事件を実行したイスラム過激派のメンバーたちが、かなりの知識層だった点だ。有名大学な私立大学で学んでいた若者たちで、家庭も比較的、裕福なものたちだった。つまり、人質が日本人であることをきちんと理解し、日本人であるがために殺した。
 実際、現場にいた人の証言から亡くなった日本人の1人は「私は日本人だ」と叫んだことがわかっているが、その言葉に実行犯たちは耳も貸さずに刃物を振り下ろした。この現実をどう見るかだ。少なくとも10年前なら結果は違った。日本人だと言えば、命までとられることはなかった。ましてやバングラデシュの社会的インフラを整備するために、やってきた日本人たちである。救われたはずだ

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●日本は敵国


いったい何が変わったのか。日本は敵国になったのだ。IS(イスラム国)の敵として明確にリスト入りを果たしたのだ。その転機となったのが昨年の安保安全保障関連法案(安保法案)の可決。集団的自衛権を認め、世界のどこへでも自衛隊が出かけて戦争ができる体制を整えてしまったのだ。日本はISを脅かす国になった。だから狙われた。
安倍政権は日本をそういう国にした。テロと戦う国、テロに狙われる国にしたのだ。今回の選挙で与党が勝てばさらに日本の右傾化が進む。それを国民は望むのか。選択を見守りたい。(了)

5兆円がまた消えた

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    また5兆円が消えた。国民年金などの積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が今年4月からたった3カ月間で、5兆円もの運用損を出したのである。英国の欧州連合(EU)離脱で株価が急落したのが原因だ。GPIFは昨年度も5兆円の運用損を出したばかり。国内や国外の株式での運用比率を高めた安倍政権の政策が完全に裏目に出ている。

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●年金をジェットコースター運用


お金には二種類ある。損してなくなってもいいお金と、決して無くしてはならないお金である。お年寄りの老後を保障する年金は、我々庶民にとってはいわば命綱。決して、なくしてはいけないお金に属する。安倍政権はそれを知らない。
確かに安倍政権が主張するようにGPIFは損ばかりしているわけではない。おととしまでは利益の方が大きく、総額では38兆円のプラスである。ただ、だからといって問題がないとは言えない。ジェットコースターのように儲けたり、損したりするようなお金の運用は、年金のように決して損してはならない性格のお金にはそぐわないのだ。
なのにアベノミクスの効果を水増ししてみせたいがために、ルールを変更してまで年金をリスク市場に投入する。その無謀さ、思慮の浅さが問題なのである。

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●運用損、公表は選挙の後


不可思議なのは自民党が15年度の運用損の正式な公表を7月29日まで先延ばしにしていることだ。例年ならGPIFの運用結果は7月の上旬に公表している。「こんなに得をした」と吹聴して回っている。今回はわざわざ1カ月近くもずらし、参議院選挙の後に振り替えている。
おかしいではないか。仮に15年度もプラスがでていたら、公表は選挙の後だっただろうか。作為的に選挙の後にずらしたと考えるのが自然だ。
憲法改正にしても安保法案にしても、この政権、かなりおかしい。これほどまでに赤裸々に国民を愚弄した政権はかつてなかった。この政権を勝たしてしまったら、庶民はおろかだと認めることになる。 (了)f:id:mitsu369:20160706080824g:image

 

200円カレーと5兆円

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      新潟市に本社を置く「原価率研究所」。この会社の売りは税込み1皿200円のカレーライスだ。年初にオープンした東京1号店には行列ができるという。漠然とした将来への不安を拭いきれないビジネスマンは生活防衛にやっきだ。そんな庶民を尻目に「株で5兆円もスッてしまった人がいる」というから驚きだ。いったい誰?

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●年金5兆円が消失


 答えを明かしてしまおう。その人とはGPIF、すなわち年金積立金管理運用独立行政法人だ。6月30日の運用委員会で2015年度の公的年金積立金の運用成績を厚生労働省に報告したところ、5兆円を超える運用損が発生したという。
 「5兆円なんて随分、景気のいい話だ」と笑ってはいられない。なぜなら、このお金、国民年金と厚生年金の積立金だからだ。国民が老後に必要な、どうしてもなくてはならないお金が、5兆円も消失してしまったのだ。見過ごしていいはずはない。どうしてこうなった。
まず、抑えておかなければならないのがGPIFが運用する積立金の規模だ。ざっと140兆円。日本の一般会計税収(2016年度=57兆6000億円)の2倍強にあたる。これだけのお金をGPIFは株式のほか、国債、外国株などで運用しているが、運用しているお金が年金であることから、これまで政府は運用益よりも安定性を重視してきた。変動幅の大きい日本株や外国株ではなく、利回りは低くても安定している国債などに比重を置いてきたのだ。
ところがだ。安倍政権がこれを一気に切り替えた。利回りが低い代わりにリスクも低い国内債券の比率を60%から35%にまで引き下げ、その一方で、株式での運用の比率をこれまでの2倍の50%にまで引き上げたのだ。大量の年金マネーが株式市場になだれ込んだのである。
年金マネーは株式市場で「クジラ」と呼ばれ、その流入は大いに歓迎された。株価上昇を下支えどころかけん引役となり、それがアベノミクスの成果としてもてはやされた。しかし、それもつかの間。昨年8月の、人民元の切り下げを受けた世界同時株安「チャイナ・ショック」の影響で、巨額の損失を出してしまった。ここに今後、英国の欧州連合(EU)離脱問題が追い打ちをかけ、損失はさらに拡大していくことだろう。

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アベノミクスのウソを暴け


アベノミクスの正体とは、とどのつまりが「円安と株髙」。結局それは国民のお金を使って演出されたに過ぎない。日本の経済が世界と無縁であるはずもなく、お金を無理に注入して底上げされたニセモノ相場は、中国や英国、欧州連合(EU)などが揺らぐたびに、震え上がる。皮肉にもそれはアベノミクスが標榜するグローバル化が、進めば進むほど直接的になる。
この5兆円の巨額損失は、アベノミクスのウソを見破る入り口となる。人様のお金を拝借し、それを使って自分の成果を演出するなど、なんと姑息なことか。国民はこの事実を見逃してはならない。櫛名田姫がまたアベノミクスという大蛇(オロチ)に食われたのである。5兆円も。さあ、どうする。アベノミクスはこれを反省することはない。株式市場に刺激を与えるため、さらにニューマネーを投入する政策をとるだろう。それを許すのか。見逃せば、すべてを食わせてしまうことになる。(了)

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最後のサミット

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「日本はケチなソロバンをはじき、小細工をした」。5月27日、閉幕した伊勢志摩サミットに対する中国外務省の公式評論である。威信をかけたサミットで日本が「小細工」をしたとは「なんたる非礼」と言いたいところ。しかし、さにあらず。確かに小細工なのである。 
 
●首脳宣言で中国非難
 
中国が問題にしているのはサミットで首脳宣言だ。今回のサミットの首脳宣言の骨子は6つあったが、その骨子の1つに「中国の東シナ海南シナ海での行動を懸念する」との文言が盛り込まれたのだ。この「懸念」を盛り込むよう強力に働きかけたのが実は議長国である日本。これを中国は「小細工」と非難しているというわけだ。
 G7のような国際的なトップ会議で正式に批判されたとなれば中国とて面白くない。G7を「本来、経済政策を議論する場」としたうえで、それを日本が利用して中国を避難したのは「ケチなソロバン」であり「小細工」であると断じたのだ。
中国がいう通り、そもそもサミットの発端は世界経済への対応だった。1973年の第1次石油危機による世界経済の落ち込みを議論したのが始まりで当時、経常黒字国だった日本とドイツが、危機脱出のけん引役として期待され、その是非が議論された。
 
G7の場を私的流用
 
しかし、そのG7の場を今回、日本は私的な目的で利用した。中国にプレッシャーをかける場に流用したのだ。
それだけではない。今の世界経済が「リーマン・ショックの前に状況に似ている」と言う認識をG7共通のものにする場にも利用しようとした。これは消費税導入の延長の理由を探していたためだ。自民党が秘密裏に進めた調査によると、このまま消費税導入を強行すると夏の参院選挙での敗北は避けられず、そうなれば安倍政権の悲願である憲法改正も遠のく。正々堂々、消費税導入を先送りできる理由が必要で、その理由探しの場として国際的に権威のあるサミットを選び、米国もそれを黙認した。
こうなればサミットの価値は下がる。実のある議論がなくなってきた分だけ、価値はない。少なくとも中国が参加しないG7の意味は薄らぎつつある。
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G7のGDPは世界の5割未満に
 
実際、日米、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダのG7国内総生産(GDP)の合計は1980年代には世界全体の7割を占めていたが、今は5割を切る。影響力は日増しに弱まるばかり。一方、G7と異なり中国が加わったG20のGDPは世界全体の実に8割を占め、中国が主張する通り「G20はG7に代わるプライマリー(第1)のフォーラム」になりつつある。
 このG7からG20への軸の移動をG7各国の首脳は敏感に感じ取っている。だから影響力の弱まったG7は、その場を日本が私的に利用することを許したのだ。「あくまでも本番は中国が参加するG20。中国抜きで何をしても茶番」というわけだ。
 つまり結局は中国なのである。G7の首脳も中国しか見ていない。中国抜きのG7で何をやろうと、何を決めようと現実味は薄い。G7などあてにはならないのだ。
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東シナ海、自分で掘れ
 
日本も東シナ海の問題を解決したいなら、G7の権威にすがるのはやめ、自ら動くことだ。東シナ海のガス田を自ら掘るしか、解決策はないのだ。
 実際。中国は東シナ海でのガス田開発を中断するどころか、開発のスピードを日増しにあげている。日本は中国に対し排他的経済水域EEZ)でのガス田開発を一方的に進めないよう警告しているが、中国がこれに耳を傾ける気配はない。日本政府は2015年7月に東シナ海における中国によるガス田開発の現状を示す写真を公表したが、それから1年弱の間に、把握できた16基の構造物のうち7基で開発が進んでしまっている。
 これを避難している暇があったら、自分でさっさと掘ることだ。中国からすれば「何もしないから悪いのはそっちだ」ということになる。誰も助けてはくれない。その現実を日本は『最後のサミット』から学ばなければならない。(了)f:id:mitsu369:20160607094008j:image
※関連記事…
▼『中国の舌は米国の舌』
 
 
▼『日中ガス田、日本はこうやって掘れ』
 
▼『 日中共同ガス田開発ーー夢は獏に食わせてしまえーー』
 

北北北に進路をとれ

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    安倍晋三首相が1日から7日まで欧州とロシアを訪問する。狙いは今月26~27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の地ならしだ。議長国として日本がどのように主要7カ国(G7)をさばくか、世界経済が不安定な時期だけに安倍首相の采配が注目される。とりわけ大切なのはロシア。米国、欧州と一緒になってウクライナ危機を題材にロシアを非難する側にたってはならない。その意味でも今回のトップ会談は重要な意味を持つのだが……。

●殴らないロシア人

「ロシア人はまず相手をなぐってから交渉する」――。ロシアとの外交の難しさは昔からよく言われるところ。交渉の初期段階でまずグッと詰め寄り、相手の様子を見ながら少しずつ、譲歩を重ねる。落としどころが見いだしにくくなかなか結論まで到達しにくいのがロシアとの交渉なのだ。
ところが、最近は様子が違う。特にこと日本との関係においてはこの「まず殴る」の前段がない。最初から譲ってきているのだ。
その最たるものが北方領土問題だ。プーチン大統領は今年4月に北方領土の返還問題に関して「妥協はいつか見いだされる可能性があり、見いだされると思う」と述べている。外交交渉においてまず有利にものごとを進めたいなら「問題など存在しない」と突っぱねるのが常道。北方領土においても実質的に4島ともロシアが支配しているわけだから「日本との間に領土問題など存在しない」と言えばロシアは北方4島を現状のまま維持できる。
にもかかわらず、ロシア側は領土問題の存在を認めるばかりか、「妥協が見いだされると思う」という。つまり「一定のラインまで譲る」と明言しているのだ。実はこれは外交交渉のイロハからすれば、驚くべき譲歩だ。
ところが日本はこのロシアが差し伸べた手を振り払い続けている。プーチン大統領も「日本がある段階で我々との接触を制限するのを決定した」という。ウクライナ問題で日本が欧米とともに制裁を決定したことを示唆しているわけだが、ロシアが日本に熱心にラブコールを送り続けているのに日本はそれを袖にしてばかりだ。
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●米国の圧力に屈する日本

北方領土が返還されるなら日本にとっては願ってもない吉事。資源問題に悩まされることもなくなる。にもかからわず、日本がこの問題に取り組めずにいるのは背景に米国のプレッシャーがあるからだ。日本がロシアと接近することに対して米国は一貫して否定的であり、そのために日本もロシアとの領土問題に本腰を入れずにいる。
ロシアもここは見抜いていてプーチン大統領が「米国などパートナーの圧力にもかかわらず、日本の友人は(ロシアとの)関係の維持に努めている」と発言、日本の弱腰をやんわりと牽制している。
さて、※「前門の虎、後門の狼」。ここで日本はどう動くべきなのか。断然、北に進路をとることだ。米国との関係悪化を必要以上に恐れていてはならない。「御稜威(みいつ)は北から降りる」。ここはその法則に従い、北に御稜威をとりに行くことだ。ロシアには天然ガスや石油などの資源はもちろん日本がもたない広い領土と潤沢なマーケット(市場)を持つ。日本が敵対する中国への牽制力もロシアとの提携で強化することが可能になる。
安倍首相は欧州各国を回った後、ロシア南部の保養地ソチでプーチン大統領と非公式に会談する予定。このチャンスを無駄にすることがあってはならない。間違っても「米国の同盟国として」などと虚勢をはってウクライナ問題などで啖呵を切らないことを切望する。せっかくプーチン大統領と会ったのに「成果なし」では困る。「ゴールデンウイーク(GW)だったから成果もお休みでした」では笑えないブラックジョークだ。(了)  f:id:mitsu369:20160502190045j:image 
※【 前門の虎、後門の狼 (ぜんもんのとら、こうもんのおおかみ)】…一つの災難を逃れてほっとする間もなく、またすぐに他の災難に見舞われることのたとえ。

鳴かぬなら殺してしまえ、原子力規制委

   権勢を誇った秦の始皇帝が最後に求めたのが不老不死の妙薬だった。その薬を探すよう命を受けた徐福(じょふく)は「薬を探す」と偽り、命からがら日本にたどり着いたとされる。傲(おご)るものの滑稽さは本人には分からない。「時間を克服することなど人には出来ない」という当たり前の道理さえ見失う。だが、もっと怖いのはその無謀な挑戦を止める者がいない社会だ。
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原子力規制委、40年超運転を認可

4月20日。原子力規制委員会関西電力の老朽原発、高浜原発1、2号機(福井県)が新基準を満たすとの判断を示した。これにより高浜原発の運転延長が認可される可能性が高まった。実現すれば、運転から40年を超えた老朽原発に火がともり続けることになる。
原発の寿命は原則40年。これが原則だ。その原則を曲げるには原子力規制委員会の認可が必要だが、関電は今回そのお墨付きを得たことになる。稼働までに後いくつかの認可手続きを経ることになっているが「大きな課題は残っていない」とみられ、このまま何もなければ後20年の稼働が可能になる。
これまで40年原則を超えて運転した原発はない。高浜の運転期間延長が認められれば「原発寿命40年」の原則は有名無実化、周辺の住民の命が危険にさらされる。同時に「高浜モデル」が電力業界全体に広がり、老朽原発の長期運転に道が開かれてしまう。
もちろん原則には例外がつきものだ。しかし、まず例外からスタートする原則など聞いたことがない。ところが、原子力規制委員会の今回の動きはかなり不自然だった。関電の老朽化原発の長期運転を認めようという意思がありありなのだ。
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原子力規制委員会 田中委員長〉

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関西電力高浜原発を巡る経緯〉

●熊本地震のまっただ中の暴挙

それは今回の判断のタイミングを見ればよく分かるだろう。原子力規制委員会が認可を与えた4月20日はまだ九州の熊本で激しい余震が続いていた時期。川内原発鹿児島県)の周辺住民が福島第1原発の様子を思い出しながら恐怖に怯えていた時期である。
その時期にあえて老朽原発の運転期間延長を表明するなど、日本中を敵に回すようなもの。しかし、原子力規制委員会はそれをやらざるを得なかった。なぜなら、期間延長の判断の「期限」が7月に迫っていたからだ。これを過ぎれば高浜原発は「廃炉」となってしまう。この後、安全対策の認可、詳しい設計の認可、運転延長の認可を得なければならないことを考えれば、1日でも早く原子力規制委員会が認可を下ろす必要があった。
そしてその通り原子力規制委員会は認可を下ろした。期限から逆算し、高浜原発が時間切れで「廃炉」になることを避けた。
こうなれば原子力「規制委員会」とはいったい何を規制しているのかという疑問がわいてくるのも当然だろう。先の川内原発でも絶対的に必要な重要免震棟すらない原発を「安全」として再稼働を認めた。今、この時点で川内原発地震に耐えられず水蒸気爆発を起こしたならどうするつもりか。丸裸の原発でいったいどんな対応がとれるというのか。
今回の高浜の件もそうだ。原発40年というのは長期運転による原子炉の壁の摩耗の度合いからみて科学的に「限界」とされる時間である。それをこえ運転させてもよいという。しかもかなり焦ってそう判断した。本当に大丈夫か。責任はとれるのか。福島第1原発ですらメルトダウンを防ぐことはできなかった。「ありえない」とされてきたことが現実になった。にもかかわらず「原発稼働ありき」でお墨付きを振りまき、国民の命を危険にさらす原子力規制委員会。何も審査せず、ただ現状を黙認するだけの機関なら必要はない。(了)