琴言譚[きんげんたん]

今、救世主なら語る

安倍首相はビスマルク

    この国は大丈夫か。先日の大手新聞にこんな記事が掲載された。「ビスマルク流」の安倍外交――。1971年生まれの慶応大学の教授が書いた記事で、安倍首相はドイツの、「鉄血宰相(独: Eiserner Kanzler)」ビスマルクだと賞賛しているのだ。ドイツ統一を成し遂げたヨーロッパを代表する政治家ビスマルクと、米国への従属外交一辺倒の安倍首相と、いったどこが似ているというのか。

 

●プライド捨てた知識人
 この大学教授の論旨はこうだ。「今、米国は自国第1主義に傾きつつある。このため世界での影響力は後退、アジアでは不安定性が増しつつある。そして、この空白を埋めようと秩序を形成しようとしているのが、日本の安倍首相だ。安倍首相は、いわば21世紀のビスマルクだ」。読んでいるだけで気恥ずかしくなる。赤面する。いったい知識人のプライドはどこにいったのか。
 氏によるとビスマルクの外交戦略には常に勢力均衡の観点があり、「世界が5大国の不安な均衡によって統御されている以上、3国のうちの1つになること」、これがビスマルクの外交戦略だったと結論づけている。いわば複数の馬のなかから「勝ち馬」を見分け、常にその勝ち馬に乗り、体制側につくことこそビスマルクの外交だったと分析している。
 今、安倍首相にそのような5つの国を複合的に見る力などない。ロシアが、北朝鮮が、そして中国が何を考え、どう動くか、それを予想し、考える力などない。ただ、ただ、米国の機嫌を伺っているだけだ。

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●「ビスマルク」がトランプの運転手
 考えてみて欲しい。いくら歓迎するといってもゴルフ場で米国大統領のカートの運転手までつとめて、接待する一国の宰相がどこにいる。ビスマルクが聞いてあきれる。
 そしてもっとあきれるのは、そんな腑抜けの宰相を「鉄血宰相」と持ち上げる大学教授、そしてその論文を載せる新聞社の見識の低さだ。しかもどうどう1面に。かつて新聞は太平洋戦争をあおり、終戦を迎えるその日まで日本は勝つといい、玉砕を賛美し続けた。その罪を忘れたか。あきれるというよりは、ややそら恐ろしさを感じる。「あの時」と似てきたのではないか……。 (了)

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ビスマルクWikipediaより)

実感なき「いざなぎ越え」のワケ

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    今景気は絶好調である――。そう言えば驚く人も多いだろう。内閣府は9月の景気動向指数(CI、2010年=100)の基調判断を「改善を示している」に据え置き、2012年12月から始まった景気回復期が58カ月間と高度成長期の「いざなぎ景気」を超え戦後2番目の長さになった。しかし、これほど実感を伴わない好景気があろうか。富裕層や企業は将来の不況にそなえ、現金を貯め込むばかり。庶民に全く回ってこないではないか。

 

●「外」頼みのアベノミクス
内閣府の発表を受け市場(マーケット)は反応、東京株式市場では日経平均株価が一時、1992年1月以来、25年10カ月ぶりとなる2万3000円台に乗せた。世界経済も堅調、日本経済もいい、企業業績も過去最高を更新と良いことづくめなのに、なぜこれほどまでに空々しく響くのか。

まず、この好景気の起点だが、これは第2次安倍政権の発足時。今回の好景気が「アベノミクス景気」と呼ばれる所以(ゆえん)で、堅調な世界経済を背景に緩やかながらも長期にわたり指標となる経済的データが上向いている。

特に大きいのは二つ、一つは企業の輸出、そしてももう一つは訪日外国人と富裕層がけん引した消費だ。結局は「外部」の力頼みなのである。


これこそがアベノミクスの正体であり真骨頂である。要は「円安」の恩恵を被ったものだけが、得をするのである。つまりそれは自動車や家電製品の輸出で稼ぐグローバル企業と呼ばれる大企業、そして外国人に商品を買ってもらって潤う商売人たちだけ。庶民は全くの蚊帳の外に置かれるのだ。

 

●「円安」を庶民の金で買うな
ただ、庶民にお金が回ってこないというだけならまだいい。庶民は何も贅沢をしたいわけではない。問題なのは大企業や商売人たちがきっちり稼ぎやすいよう円安の状態をつくるために、庶民の金がまるであぶく銭のように使われていることだ。

円安の状態は日本の長期金利を0%程度に誘導することで保たれている。この状況を維持するために日銀は日々国債の購入量を調整、長期国債を購入し続けており、今やその額は「年間で80兆円程度」。もちろん上限はあるが、この天文学的な資金を使って円安の状態を維持しており、このお金は結局、巡り巡って庶民につけ回されるのだ。

庶民に実感のない「アベノミクス景気」を演出するために、庶民の金があぶく銭のように使われる――。そんなバカな道理はないではないか。これは経済政策でもなんでもない。庶民の金を大企業と商売人にこっそり付け替えているだけのことなのだ。
まず、そこを見抜かなければならない。「安倍政権が維持されれば景気は上向く」。これはまやかしだ。

しかし、もっと知っておかなければならないのは、まやかしの好景気の先に何があるかだ。今の好景気が人為的につくらていることなど、経済人なら誰も知っている。それを誰も言わないのは安倍政権を長期化させ、そこで稼いだ時間を使って憲法9条を改正させことを狙っているためだ。今、経済界は戦争をしたくて仕方がない。戦争は金になる。その魂胆を庶民はきちんと捕捉しておく必要がある。(了)

ルールはこちらが決める

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天皇陛下の御所だろうが例外はない」――。これが対等の国に対する態度か。米国の警備責任者は米トランプ大統領天皇、皇后両陛下と会見するにあたり「大統領が行くところは事前にすべて我々がチェックするのがルールだ」と主張、御所への事前の立ち入りを要求してきたのだ。これでは日本はまるっきり植民地扱いである。ここまで侮辱され黙っているならもはや独立国ではない。安倍首相が「断固として立ち向かう」のは北朝鮮ではなく米国のこうした非礼な態度だろう。

 

●当日までもめた陛下との会見

米国のこの無礼な申し出は10月、トランプ大統領の訪日が固まった段階で打診があった。当然、日本はすぐさま受け入れられないと突っぱねたが、米国側は執拗に要求を繰り返してきたという。結局、やり取りは天皇陛下とトランプとの会見が予定されていた6日の前日まで続き、日本の外務省幹部が「日本は独立国だ。このままでは(天皇陛下との)会見は成立しない。流れても仕方ない」とトランプ氏の同行筋に通告し何とか、おさまった。米国側もようやく日本側が本気であることを理解し会見の当日の朝、「今回は例外として認める」として折れたのだった。
それにしても「例外」「認める」とは随分、高いところからの物言いではないか。しかも、それだけではもの足りないらしく「今回は例外として認めるが、日本側の態度は残念だ」とつけ加えた。
いったい米国は何様のつもりか。天皇陛下がいらっしゃる御所に米国の警備担当者レベルが土足で入り込めるはずがないではないか。国事行為はもちろん国守りの御祭事も執り行う神聖な御所に「自分たちの国のトップが行くから」との理由で勝手に入り込み、チェックするなど許されると本気で考えたのだろうか。しかもご丁寧に「それが我々のルールだ」とは……。日本が米国のルールを無理強いされる覚えはない。


●日本の国柄を理解せよ。
米国側には、神を中心として成り立つ日本の国柄と、現人神(あらひとがみ)である天皇陛下という存在に対する敬意と理解が根本的にかけている。学ぶ気配もない。ただ、一方的に自分たちのルールを押しつけてくるだけだ。よく覚えておいて欲しい。これこそが米国の正体である。
日本もそろそろ目を覚ますべきだ。米国という傲慢な国が日本をどう見ているかということを理解すべきた。中国が脅威なら、北朝鮮が怖いなら、自分が強くなり自衛する力を養えばいいではないか。ぶざまに媚びへつらい、戦闘機を何機も買って米国に守ってもらう必要など何もない。
 安倍晋三首相とトランプ氏が蜜月関係にあることから、トランプ政権の中には「日本に強く要求すれば最終的にいいなりになる」(米ホワイトハウス関係者)と高をくくっている連中も多い。それを証拠に米国の警備当局はクレムリンの大統領の居住スペースへの事前検査を要求するようなことはしてない。日本だから無理を承知で要求してくる。要は日本はバカにされているのだ。その事実を正確に理解し、日本は米国との関係を見直すべき時である。  (了)

軽く1丁あがりのトランプ訪日  


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 「スコアは国家機密だ」――。トランプ米大統領とのゴルフを終えた安倍晋三首相は記者団にこう語り笑いを誘った。しかし、安倍首相が本当に国家機密にしておきたかったのは翌日の貿易不均衡を巡るトランプ大統領とのやり取りだっただろう。北朝鮮情勢が緊迫してきたことを理由に防衛力強化を迫られ、弾道ミサイルなどの購入を約束させられたのだ。弾道ミサイルなど日本の防衛上、何の意味も持たない。ゴルフをおつき合い頂いた見返りに何千億円もの無用の長物の購入とは……。ゴルフがやりたければ国家予算を使わずに自分の金でやって欲しい。

 6日、トランプ米大統領安倍晋三首相の共同記者会見では、対日貿易赤字を巡る立場の違いが鮮明になった。トランプ氏は「日本の貿易赤字を減らしていかなければならない」と日米の貿易不均衡問題に言及、さらに日米自由貿易協定(FTA)の直接的な言及は避けたものの「公平で自由で互恵的な貿易関係を築いていきたい。平等で信頼できるアクセスが米国の輸出品に対して必要だ」と強調した。要は「今後、日本に対して貿易不均衡を是正するための具体的な措置を要求していく」ということだ。「こんなことなら、昨日のゴルフは何だったのか」。安倍首相はそう言いたかったに違いない。
 
●完敗の日本
 しかも、話はここで終わらなかった。さすがトランプ米大統領は役者が何枚も上手だ。一気に「安倍首相は様々な防衛装備を米国からこれから購入することになるだろう」と畳みかけ、「そうすれば上空でミサイルを打ち落とすことができる」と言及、安倍首相を追い詰めたのだった。渋々、安倍首相も「北朝鮮情勢が厳しくなるなかで、日本の防衛力を質的に量的に拡充していかないといけない。(弾道ミサイルやF35戦闘機を)米国からさらに購入することになる」と応じざるを得なかった。
 米国にしてみれば「毎度あり」。日本側とすれば完敗なのである。米国がたてつけた北朝鮮情勢の緊迫を理由に、まんまとはめられ、必要もない高額な武器を買わされたのだった。だいたい日本の「上空でミサイルを打ち落とす」必要がどこにあるのか。そのまま通過させればいいではないか。打ち落として欲しいのはむしろ米国の方だろう。日本に金を出させ、防衛力を強化させたうえで、米国を狙って発射された北朝鮮のミサイルを打ち落として欲しいだけのことだ。
 そもそもだ。米国と北朝鮮の小競り合いに日本が入っていく必要は全くない。北朝鮮は日本など相手にしてもいない。わざわざ米国の尻馬に乗り騒ぎ立て、大国気取りで北朝鮮を非難する。その実、欲しくもない武器を「いらない」とすらいえない弱虫の日本など、北朝鮮の敵ですらないのだ。
 この後、トランプ米大統領は、1強体制を盤石にした中国の習近平氏との対決が控える。今回の訪日は、その前にまずは軽く日本を平らげただけのこと。「1丁上がり」。そんな声が聞こえてくるようだ。(了)

外交は死んだのか

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 もはやこれは外交とは呼べない。11月5日午前10時40分すぎ、トランプ大統領がメラニア夫人とともに着陸したのは成田空港でも羽田空港でもない。米軍横田基地だった。しかも午前11時すぎから始まった歓迎式典とスピーチも基地の格納庫。いったい人様の家を正式に訪問する時にいきなり勝手口から入ってくるバカがいるだろうか。ジャージ姿で台所で演説する常識知らずいるだろうか。なのにそれを国賓級の扱いで迎え、髪振り乱して孫まで接待する。そんな国が世界から尊敬されるはずはない。

 
●陛下の前に米兵
「間もなく着陸する。偉大なる兵士たちに会うのを待ち切れない」。着陸の約1時間前、トランプ大統領が専用機「エアフォースワン」の中でツイッターでつぶやいたのはこの言葉だった。横田基地では米兵と自衛隊トランプ大統領を迎えたが、ツイッターでつぶやいたトランプのこの「兵士」とは米軍兵士であることは間違いない。今回、日本ではトランプと天皇陛下の会談も会見も用意されているにもかかわらず、自国の兵士に会うことを最大の楽しみとして掲げるとは無礼千万である。
 しかも、到着後、最初のスピーチ時に羽織っていたのは兵士たちから贈られたジャンパー。横田基地には早朝から軍関係者や報道陣が集まり、トランプ氏の到着前からすでに生バンドの演奏が行われるなどパーティーのような盛り上がりだったが、そこに得意満面のトランプが、いきなりジェット機で乗り付け、我が物側でスピーチするとはいったいどういうことか。日本を訪問したならまず日本の首相に挨拶をしてからもの申すのが筋というものであろう。いったいいつから日本は米国の植民地になったのだろうか。

 

●アラベラちゃんに「アッポーペン」
 さらに情けないのは安倍首相だ。トランプ大統領につきっきりでゴルフだお食事だと必死でお相手。しかも、トランプ氏の娘のイバンカ氏まで日本食材を使ったフランス料理でもてなし、孫娘アラベラちゃんにも粗相があっては大変とばかりに、アラベラちゃんお気に入りのタレントのピコ太郎を呼び、相手させた。
 いったいこの国の誇りはどこにいってしまったのか。このような「媚びへつらい」をもはや外交とは呼ぶことは難しい。ぶざまなまでに米国にかしづき、必死で機嫌をとりながら、その米国の威光で北朝鮮に「圧力」をかけるという。笑止千万。滑稽としかいいようがない。(了)

北朝鮮との戦争、始めました

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    分かってはいた。しかし、言われてみればやはり衝撃だ。9月19日、小野寺五典(いつのり)防衛相の記者会見での発言。北朝鮮を巡る有事対応について「緊急の場合の事後承認制度がある」と語ったのだ。その言葉の意味は、つまりこういうことだ。「北朝鮮の中距離弾道ミサイルが飛んできたので、国民を守るために撃ち落としておきました。戦争?ああ、それももう政府の判断で始めてます。これも国民を守るためです。国民のみなさんは、ご承認だけお願いします」
 
北朝鮮のミサイル迎撃、事後承認で
恐ろしいことだが空想ではない。小野寺防衛相の発言は安全保障関連法で可能となった新任務を行う場合の国会承認について、「事後承認制度があるから大丈夫」との見解を示した。何が大丈夫なのか? 要するに北朝鮮が米国のグアムに向け中距離弾道ミサイルを発射した場合、米国と同盟関係にある日本が国会の事前承認がなくても北朝鮮のミサイルを米国に代わって撃ち落とすことは法的に問題はないというだけのことだ。国民には後から知らせ、承認させるだけで法的には済む。
 通常なら中距離弾道ミサイルを撃ち落とすような高度に政治的な判断は国会での承認を原則とする。ところが実際は非現実的だ。ミサイルが飛んでくるような緊急事態時に、えっちらおっちら国会議員を召集して議論し、最終的に「そういうことなら、ミサイルは撃ち落としますか」。そんな悠長なことをしている余裕はない。何せ、日本の上空をミサイルが飛ぶ時間は数秒なのだ。
 従ってミサイルを撃ち落とす時は何時だって緊急事態なのである。「事後承認」のロジックは常に成立する。国会に諮らず政府のほうで勝手に撃ち落としても「緊急事態だったから」と、後から承認を求めれば法的には問われることはないのだ。だから小野寺防衛相は「大丈夫」と述べた。たまたま今回は9月28日招集の臨時国会冒頭に衆院を解散、選挙に突入するという事態が想定され「こんな時に……。もし、北朝鮮からミサイルが飛んできたらどうするのか?」という質問が投げかけられたから明白になった。

 

●撃ち落とせば北朝鮮は黙っていない
 ただ、日本として法的に問題がなくても「ではそれで安全か」となれば答えは違ってくる。なぜならミサイルを撃ち落とされた北朝鮮にとっては大問題だからだ。北朝鮮が米国をめがけ本気で撃ち込んだミサイルを日本が米国の代わりに途中で撃ち落とすのである。ただで済むはずはない。北朝鮮にとって日本の行為は脅威であり戦闘行為と映る。
何せ朝鮮にとって米国は敵なのだ。「日本など単なる米国の番犬だ」と見ていたとしても、米国に命じられ誰よりも先に北朝鮮に噛みついたとしたら、もはや放ってはおけない。それを政府は分かっているのだろうか。
 日本政府もバカではない。理解はしている。問題は断れるかだ。米国が正式に「次に北朝鮮からミサイルが飛んできた時は撃ち落とせ」と要請してきた時にはねつけられるかだ。「集団的自衛権」を日本政府が認めてしまった今、論理的にはかなり難しい。米国に対し「同盟国だからそうしたいのは山々だが、自国の防衛しか認められていないので無理だ」とは言えない。日本と密接な関係、つまり同盟関係にある米国が攻撃されることは、日本の存立が脅かされることと同じであるとする「存立危機事態」という考え方に立てば、米国を守ることは日本を守ること、「集団的」に「自衛する」ためのミサイル迎撃要請は断れない。
 こうなれば「集団的自衛権」は、「米国に日本を守ってもらう」という都合のいい話だけでは済まなくなる。こと北朝鮮との問題においては極めて日本が不利だ。米国の盾になることを常に求められる。そして、それこそが米国の思惑であった。最初から北朝鮮問題解決のため日本の「集団的自衛権」を認めさせ、米国の身代わりにする作戦だったのだ。安倍政権は、まんまとその罠に引きずり込まれてしまった。

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日本海では使い走り
 今、日本海自衛隊が米国に何をさせられているか。それを紹介すれば、いかに日本が屈辱的な立場におかれているのか、ご理解頂けるかもしれない。海上自衛隊北朝鮮の弾道ミサイル防衛(BMD)を担う米イージス艦に給油をさせられているのである。しかもその事実を国民に明かにすることも許されない。なぜなら「米国の行動に関わる」(河野克俊統合幕僚長)からだ。ささいなことでもそれを公表することで米国の行動を北朝鮮に気取られてしまっては大変、だから明かせないのだ。
 しかし考えてみて欲しい。米イージス艦に日本がせっせと給油すれば、北朝鮮から「米軍と自衛隊は一体」と見なされても仕方がないではないか。しかもそれほど日本がリスクを冒して米国に尽くしても、トランプ大統領は決して感謝はしない。問題は「米国民は大丈夫」かどうかだからだ。
 米国に気に入られたい、それだけ日本国民を危険にさらす、今の安倍政権に本物のプライドはあるのか。使い走りさせられ、揚げ句に北朝鮮からは敵とみなされ攻撃される可能性はないのか、それすら考えようとしない。
はっきり言っておく。日本が攻撃されたからといって米国は決して北朝鮮を攻撃することはない。仮に米国が北朝鮮を攻撃すれば、日本と同じように今度は米国が攻撃されてしまうからだ。その現実を見つめなければならない。(了)

 

 

聖子が便器の水を飲む日

 

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 第3次安倍内閣内閣改造で最大のサプライズの1つは野田聖子の入閣であることに異論はないだろう。ポスト安倍への意欲を隠さない異分子を身内に取り込み、「安倍下ろし」の芽を摘む安倍側の作戦に、あえて乗った格好の野田。手をこまぬいていれば安倍から岸田文雄への禅譲(ぜんじょう)※の流れは止められないとの読みが働いたことは間違いない。ならば、国務大臣の名に恥じぬ仕事をすることだ。帝国ホテルの便器の水を飲み干したあの日を思い出せ。

 
●家の掃除もせぬお嬢様
1983年、上智大学を卒業、得意の英語を生かそうと帝国ホテルに入った野田は新人教育係の先輩の行動に度肝を抜かれた。新人研修で客室清掃の指導を受けた時のこと、便器の清掃を終えた先輩が便器の水をコップにくんで飲んでみせたのだった。
野田と言えば、大蔵次官から参院議員を経て衆院当選9回の故野田卯一元建設相を祖父に持つ生粋のお嬢様である。それまで家の掃除すらしたことがなかったシンデレラだ。なのに、それがいきなり便所掃除となれば大変だ。素手でつかんだスポンジを便器に入れた瞬間、思わず吐いてしまった。
 しかし、さすがである。野田聖子はくじけなかった。数カ月後、自分であらった便器の水を先輩の前で飲んだ。その後は国際営業の仕事にも抜てきされとんとん拍子。まだ女性がビジネスの世界で受け入れられない時代に若くして頭角を現していった。
 その気骨は政界に転じても発揮される。最たるものが2005年、小泉政権が進めた郵政民営化への反対だ。野田は閣僚史上最年少の37歳で郵政相として入閣した経験もあって日本の郵便事業への造詣はなかなか深い。「日本の郵便の仕事は民間に任せず国で守るべき」との主張を貫き、自民党を離党した。その後、自民党に復党を果たすが信念を曲げない性格は変わらず、安倍に対してもはっきりとものを言ってきた。
 その野田聖子の入閣なのだ。見ものである。安倍から入閣の打診があった際、総務相を自ら指定したというから、その仕事ぶりには期待したい。

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●国を忘れた仲間主義
ただ、入閣直後の野田の「卑怯(ひきょう)発言」にはやや違和感を感じる。その内容とは「非常に苦しんでいる時に、いたずらに今いる(安倍晋三自民党)総裁を仲間が批判して政権を弱くするのは卑怯(ひきょう)なことだ」というもの。
さっと聞くと野田らしい潔い発言のようにも響く。しかし、よく考えて欲しい。なんと実に身びいきで、身勝手な発言であることか。国政を預かるトップの人間、つまり安倍が順境にあろうと逆境にあろうと国民には関係のない話である。是は是、非は非だ。国を危うくする判断なら仲間であっても正々堂々、否というべきである。「仲間なんだから」という発想は、安物の学園ドラマでもあるまいし、さっさと捨ててもらいたい。
 野田氏の発言から見えてくるのは、政治家の完全な国家意識の欠如、緊張感の欠落である。国務大臣である以上、日本国の「国務」をゆだねられている身であることを肝に銘じてもらいたい。
 今、安倍政権にまつわる国民の最大の懸念は憲法改正の動きである。加計学園問題などで政権への支持率が危険水域とされる30%を割り込むようなことがなければ、安倍は今秋の臨時国会改憲原案を提出する予定だった。そして来年の通常国会で発議し、その秋には国民投票に持ち込み、悲願の憲法9条改正という運びだった。この改憲カレンダー通り進むべきか、進まざるべきか――。安倍は今、ハムレットの心境にあるのかもしれないが、それは国民も同じである。
 日本は戦争をしない国。その箍(たが)をいったん外してしまえば後は奈落だ。国民も憲法改正議論を固唾をのんで見守っている。野田も仮にも一国の宰相の座を狙うと公言するなら浅薄な雑音を一気に飲み干してもらいたい。かつて帝国ホテルの便器の水を飲み干した時のように。(敬称略)【了】

 

禅譲(ぜんじょう)→天子(ほとんどの場合、皇帝)が、その地位を血縁者でない有徳の人物に譲ることである。実際には、歴史上禅譲と称していても譲られる側が強制して行われていることが多い。また、天子に限らず、比喩的に地位を平和裏に譲ることを禅譲、無理やり奪うことを簒奪と呼ぶことがある。『ウィキペディアより』

東電よ、奇跡を知れ

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原子力規制委員会が6月28日、東京電力の福島第1原子力発電所を取り囲む地下の「凍土遮水壁」を全面凍結させることで大筋合意した。これまで凍結させずに残していた1カ所を凍結させ、福島第1原発を完全に「凍土遮水壁」で取り囲む。この「凍土遮水壁」のおかげで原発への地下水の流入は大きく抑制される。これで事故処理は1歩前に進むと専門家はいう。しかし果たしてそれは本当か?違う。逆だ。全く逆だ。

 

●この瞬間にも放射能水は漏れる
130トン――。たった1日で福島第1原発から排出される汚染水の量だ。2011年3月に起きた事故で、冷却不能となった核燃料(デブリ)が原子炉を突き破って落下。そこに地下水がどんどん流れ込み、結果として放射性物質を含んだ汚染水が1日130トン排出されているのだ。2トントラックで65台分、ドラム缶で換算すると650本もの汚染水がたった1日で増えていく。放射能を含んだ大量の汚染水が今、この瞬間にも流れ続けているわけだ。
この問題にどう対処すべきなのか。政府が出した答えが、「凍土遮水壁」。福島第1原発に地下水が流れ込まないようにするため、海側遮水壁で深さ30メートルの鋼管約600本を地下に打ち込み、この鋼管を凍らせることでその周辺の土も凍結、壁をつくってしまうやり方だ。日本ならではの高い建設技術なのだが、どこか幼稚な発想のようにも思える。

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●冷えなくなる核燃料(デブリ
もともと「凍土遮水壁」というのは、トンネルを掘削する際の技術だ。原発への応用については「効果は疑問」との見方は少なくない。ただ、いったん効果のほどは置くとして、仮にうまく地下水の流入をシャットアウトできたとしても、果たしてそれは良いことなのか。東京電力によると全面凍結により凍土遮水壁が完成すれば、地下水の流入は100トン以下に減らせるという。これが良いことなのか。これは疑わしい。
確かに地下水の流入がとまればその分、放射能を含んだ汚水の量は抑えられる。当然だ。しかし、今度は反対に核燃料(デブリ)の問題が浮上する。ここが分かっていない。せっかく大量の地下水で核燃料(デブリ)が冷やされ、小康状態を保ってはいるのに、地下水がとまれば再び息を吹き返す可能性があるのだ。
福島第1原発が核爆発を免れたのは全くの天恵だったと言っていい。電源装置の喪失で冷却装置が作動しなくなった場合、通常なら異常な高温状態となった核燃料(デブリ)が原子炉内で爆発しても仕方がない。菅直人首相(被災当時)が狂ったように東電の現場に要請したベント(空冷)くらいでは本来、とても追いつかない。
今回、核爆発を免れたのは奇跡なのだ。たまたま原子炉が爆発する寸前で底にヒビが入り、そこから核燃料(デブリ)が溶け落ちた。おそらく核燃料(デブリ)は地下に到達したところでとまり、そこに冷たい地下水が流れ込んでいるはずだ。福島第1原発の下にはもともと地下水の水脈があり、これが自然の冷却装置として機能しているのだ。恐ろしき偶然だと言える。
なのに政府は「凍土遮水壁」で、「天然の冷却装置」の作動をとめる。核燃料(デブリ)を冷却していた地下水をとめる。本当に大丈夫なのか。いったん落ち着いた核燃料(デブリ)が暴れ出しはしないか。
そもそも今、デブリがどこにあるのか、固まっているのか、飛散しているのか、どういう状態にあるのか、何1つ分からない。完全に人知は越えている。なのに小学生の思いつきのように「きたない水がでるからとめちゃう」と言って、せっかくの天恵である地下水を遮ってしまって大丈夫なのか。
人間の知恵などいかに限定的か。それを思い知るべきだ。おそらく深さ30メートル程度の壁で地下水の浸入が計画通り止まるとは思えないが、こうした思いつきの対処方法から試していかねばならないほど、原発の前に人間は無力なのである。
まず謙虚に考えることだ。そこから、すべては始まる。(了)

 

 

 

 

 

 

 

 

炭素減らして放射能漏れの愚

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バカにしてる――。そうでなければ国民を無視している。6月9日。経済産業省が国のエネルギー基本計画に将来の原子力発電所の新増設の必要性などを明記する方針であることが明かになった。その前々日、茨城県大洗町日本原子力研究開発機構で大量のプルトニウムが漏れ出す事故があったにもかかわらずだ。日本の最高峰の原子力技術を持つ原研で信じられないミスがあったその直後に、原発の増設を発表するとは、国民をバカにするにもほどがある。

 

●2万超ベクレルのプルトニウム
「真剣に反省し、手順を考え直すべきだ」。7日。原研の事故を受け原子力規制委員会の田中俊一委員長はこうコメントした。もっともだ。ウランプルトニウムが入った保管容器から放射性物質が漏れたのだ。5人の作業員の中で最も多い人の肺からは2万2000ベクレルのプルトニウムが検出された。国内最悪の内部被曝である。5人はそのまま医療機関に搬送されたが、これだけの被爆があれば健康に影響がないはずはない。「5年、10年すればそれが顕在化する可能性がある」というが、そんな生易しいものであるはずはないことくらい素人でも分かる。
 事故は初歩的なミスだった。保管容器の内部の状況を確認するため、蓋を留める6本のボルトのうち4本を外したところでなかのビニール袋が膨らみ、それでもなお残りの2本を外したため、ビニール袋が破裂した。異変を感じた段階で作業をストップしておけば、事故は防げた可能性が高い。残念なミスだ。
本来、このようなミスは起こりえない。しかし、起きた。つまり、事故は常に起きるのだ。「人間はミスを犯す動物」。これが基本だ。なのに本来起こるべきでない事故は、起こらないものと考え、原発を増設するなどもってのほかだ。

 

●米国抜きのパリ協定に拘泥(こうでい)
経産省の理屈は原発増設の理由を「地球温暖化対策の新枠組みである『パリ協定』を受けた計画」と説明、温暖化ガスを2050年までに80%削減するには原発の増設が不可避だと主張するが、これもおかしい。パリ協定など6月1日にトランプ大統領が、ホワイトハウスで声明を読み上げ、離脱すると表明したばかりではないか。米国抜きのパリ協定などなんの拘束力もない。わざわざ形骸化したパリ協定を引き合いに持ち出し、そのために原発を増やすなど、これまたセンスがない。
そもそもトランプ氏が指摘するように温暖化ガスと地球温暖化の因果関係は不透明な部分も多い。仮に温暖化がガスのせいだとしても、それを抑えるために放射能漏れを定期的に起こす原発を回すのは本末転倒だ。温暖化ガスと放射能のどちらが地球環境に悪影響を与えているのか、少し考えれば分かりそうなものだ。
今、政府は国民の声を聞く耳を失っている。これだけ原発リスクが赤裸々になるなかで、あえてそれに挑戦するように原発推進路線を打ち立てる。国民不在の国づくりなどあるはずはない。このタイミングで原発推進とはあまりに惚(ぼ)けた阿呆(あほう)ではないか。     (了)

 

今度は野村不動産ですか

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話が違うではないか。日本郵政だ。「経営の効率化が遅い」「グローバル化が進んでいない」。だから、プロが稼げる体質に転換するのではなかったのか。なのに儲けるどころか、2017年3月期の連結最終損益は400億円の赤字に転落した。2007年の郵政民営化以来、初の赤字だというが、事は国民の財産の話である。「こんなこともあるさ」ではすまされない。


●ドブに捨てた4000億円
「過去のレガシーコスト(負の遺産)を一気に断ち切る」――。4月25日の日本郵政の記者会見。長門正貢社長の言葉は何だか勇ましいが、こんな言葉を田舎の老人たちが理解できるだろうか。いいことなのか、悪いことなのか。それすら分からない。結論を先に言おう。とんでもないことだ。国民の資産を4000億円もドブに捨てたのだ。まず国民に詫びろ。
ことの発端は2015年、日本郵便を通じてオーストラリアの物流子会社トール・ホールディングスを6200億円で買収したこと。当時の社長は東芝出身の西室泰三氏で時価総額の1・5倍の価格で買収した。「少し高かった」と長門氏は言うが、その出所はゆうちょ銀行とかんぽ生命の含み益だ。いわば庶民が託したお金を回して蓄えたお金を「まんまと外資にさらわれた」のだ。「少し高かった」どころの話ではない。
今回はそのとんでもない割高な買い物のツケを一気に払った。本来なら20年かけて償却するはずだったトールのブランド価値、つまり「のれん代」を一括で支払った。だから赤字になったのだ。ただ、それだけのことだ。20年ローンで買ったバカ高い買い物のツケを1回払いで支払った。それを「レガシーコストを断ち切る」と見栄を切ってみせた、それ以上の意味はない。
それにしても自分たちで作った借金を国民のお金で精算するとはいったいどういう了見か。長門氏は「責任をとって」6カ月間、20%の役員報酬を返上するというが、例え1カ月の給与が500万円としても、1カ月で100万円。その6カ月分で600万円。個人としては大きなお金だが、あれだけ「リスクが高い」とされたオーストラリアの物流会社を高値づかみし、4000億円をもの損を出しておきながら600万円の減給でカタがつけられるはずはない。ことは国民のお金の問題なのだ。

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●まだまだ買う
ところが、長門氏はまだまだ買うという。今、着手しているのは野村不動産ホールディングス(HD)の買収だ。いったいいくらになるのか、その詳細は明らかになっていないが、1000億円や2000億円の単位ではすまない買い物になることだけは間違いない。そもそも野村不動産HDなど株価は高いが会社にはみるべき資産など何もない。これといったオフィスビルも商業施設ももたない。あえていうなら東芝不動産だ。東芝の経営が厳しくなったおりに、取得したもので、これとてピカピカの資産を持っているわけではない。それなのに不動産に手を出してどうする。日本郵政の手に負える代物ではない。
長門社長は「マネーが不動産に向かっているリスクがこの業界にはある。その点を十分に勘案して分析しないと危ない」というが、この言葉の意味もまたよくわからない。「マイナス金利だからなかなか儲けられない。そう考えると不動産部門は比較的、儲けられる。他のみんなもお金を不動産に投資して儲けている。だから日本郵政も、不動産に投資して、そこできっちりと儲けないと、稼ぎ損なう。稼ぎ損なったら大変だから野村不動産を買う」とそういいたいのだろうか。それなら、そう言葉でいうべきだ。金融のプロのように振る舞いながら、難解な言葉で庶民をけむに巻くのは許されない。なぜなら、日本郵政は一般の民間企業とは違うからだ。日本郵政にかかわる庶民にきちんと分かる言葉、丁寧に説明する責任があるのだ。ステークホルダーは庶民だ。投資家ではない。
それはそれとして、このご時世で野村不動産の買収とは「筋の悪い投資」ではある。「プラウド」に代表されるマンション事業も表面はよくても内情は火の車。会社は認めないが、在庫はつみあがり、裏では値引き販売のラッシュを続けている。おそらく長門氏はそれも知らないはずだ。不勉強を難解な言葉で糊塗※(こと)し、庶民の金をドブに捨て続けることだけはご勘弁願いたい。(了)

※【糊塗】(こと)…一時しのぎにごまかすこと。その場をとりつくろうこと。 「うわべを-する」 

 

日本郵政が踏んだ東芝の轍(てつ)

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日本郵政が大変だ。2015年に買収したオーストラリアの物流会社の業績が振るわず17年3月期の連結決算で数千億円規模の損失を計上するという。場合によっては最終利益のかなりの部分が吹き飛びかねない。民間から人材を招聘(しょうへい)、その揚げ句の巨額赤字は単なる経営判断のミスでは済ませられない。ことは国家の問題なのである。
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毎日新聞日本郵政グループの業績推移」より
日本郵政が巨額損失
問題のオーストラリアの物流会社とは「トール・ホールディングス」。オーストリアでは最大の物流会社で2015年、6200億円もの巨費を投じて買収した。民営化していなければとても考えられない大型買収で、当時は利益率が低い国内の郵便事業を補完するための攻めのM&A(合併・買収)とされた。
 皮肉なことに当時の社長は西室泰三社長、東芝の元社長である。買収を発表した2015年2月の時点で「トール・ホールディングスは事業を補完できる最高のパートナー」と自画自賛、得意の絶頂にあったが、それがまるで噓のよう。わずか2年あまりで巨額損失の計上を迫られることになった。
 それにしても、「大枚はたいて買ったはいいが、蓋を開ければ経営を揺るがしかねない、とんだ金食い虫だった……」とは、どこかで聞いたような話ではないか。そう、西室氏の出身母体である東芝だ。世界の原発ビジネスを牛耳ろうと社運をかけて傘下に収めたウエスチング・ハウス(WH)に完全に経営をむしばまれてしまった東芝の二の舞を、日本郵便が演じてしまったのである。

 
※2017年3月14日 東芝の綱川 智(つなかわ さとし)社長【写真】

●ウエスチング・ハウスの二の舞
 そもそも最大手とはいえオーストラリアの物流会社に6200億円とは「あまりにも高い買い物」という声は当時からあった。鉄鉱石など資源安を背景としオーストラリア経済の低迷で、その高値づかみを修正せざるを得なくなったわけだが、これも全く東芝のWH買収と同じ構図である。
 ただ、東芝日本郵便が違うのは、東芝は倒産しても国民は悲しみはしても困りはしないが、日本郵便が揺らげば大変な痛手を被るということだ。つまり、国富が痛むのである。いくらインターネット時代だとはいえ、郵便事業は日本になくてはならない大切なサービス。都会に出た一人息子を心配する田舎の母親に、息災であることを知らせる唯一の手段なのだ。

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●国民はただ泣く
 この日本列島の動脈を痛めてはならない。泥船の原発企業に社運をかける巨大M&A(合併・買収)をしかけるようなセンスのない東芝程度が、手を触れてはならない国の宝なのだ。1民間企業の経営者の蛮勇に翻弄されてはならない。
 なのにこの国はそれを許した。推奨すらした。民間企業の出身者に経営をゆだねることこそ、グローバル化の流れにそった最善の方策だと言い続けた。それがこの結果だ。
いったい東芝の西室氏は責任をとってくれるのか。3000億円、場合によってはもっと膨らむ可能性がある損失を東芝や西室氏が補塡できはしない。結局、そのツケは国民に回る。そして、国民が泣くのである。(了)

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※(参考)西室泰三(にしむろ たいぞう)氏 経歴

誕生日:1935年12月19日
年齢:81歳
出身地:山梨県都留市
出身校:慶應義塾大学経済学部
職業:実業家

経歴
2000年6月東芝代表取締役 取締役会長
2005年6月相談役。
2005年6月株式会社東京証券取引所取締役会長
2010年6月東京証券取引所取締役会長を退任
2010年11月慶應義塾評議員会議長(任期:4年)
2013年6月日本郵政取締役兼代表執行役社長
2015年レジオン・ドヌール勲章オフィシエ受章
2015年4月ゆうちょ銀行取締役兼代表執行役社長
2015年7月東芝不正会計処理問題が発覚
2016年2月検査入院開始
2016年3月日本郵政代表執行役社長を退任。東芝相談役を退任し新設の名誉顧問に就任
2016年6月日本郵政取締役、日本郵便取締役、ゆうちょ銀行取締役、かんぽ生命取締役、各任期満了退任

 

サムライ・ジャパンが泣いている

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日本が跪(ひざまづ)いた。国連本部で始まった核兵器を法的に禁止する「核兵器禁止条約」の制定交渉への参加を見送ったのだ。核武装を強化する方針の米トランプ政権に配慮、核兵器廃絶に向けた活動を自ら放棄するこの判断は、日本が米国に追従するだけの主張なき国であることの証左にほかならない。
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核兵器禁止条約、交渉「不参加」
3月31日、核兵器の非人道性を訴え法的に使用を禁止する「核兵器禁止条約」制定に向けた国連本部での初交渉が3月31日、終了した。100カ国以上が核兵器の使用や備蓄、配備の禁止について議論し、次回の6~7月の交渉で条約文を採択するメドがたったというのに、この晴れがましい舞台に日本の姿はなかった。日本の被爆者や市民団体の関係者220人以上が参加し、核廃絶の必要性を主張したにもかかわらず、そこに肝心の日本の政府関係者がいない。不自然以外の何ものでもないではないか。

  

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核兵器禁止条約の国際会議…不参加の日本政府席に、 「あなたがここにいてくれたら いいのに」 と書かれた、平和の折鶴が置かれていた。

 

●重大な判断ミス
 世界で唯一の被爆国である日本が核兵器の廃絶を叫ぶのは当たり前の行為である。戦争を悔(く)い、核兵器の恐ろしさを世界に訴えるのは日本の権利であり義務ですらある。なのに日本は交渉に参加しなかった。これは重大な日本の政治判断の誤ちである。

核兵器国と非核兵器国の双方が参加する枠組みでなければ意味がない」。確かにそうかもしれない。いくら核兵器の廃絶を主張しても、そこに実際に核兵器を持っている国が参加しないなら、現実的な力は持ち得ないかもしれない。
しかし、だからと言って、日本が核廃絶への取り組みをやめていいということにはならない。誰かが平和への道を主張し続けなければ、その日を手繰り寄せることは決してできない。平和を主張し続ける役割を担うのは、世界で唯一の被爆国である日本が最適なのに、その役割を日本は放擲(ほうてき)してしまったのだ。世界は日本が核兵器を認めたと見なす。
北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を繰り返す現状にあっては「米国の核兵器に守ってもらっていながら、その核兵器を否定することはできない」。実はこれが日本の本音だ。米国から「核兵器が不要?ならば日本を守らなくてもいいのだな」。こう言われるのが怖いのだ。

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●他国に依存する防衛などない
本来、他国に依存した防衛など存在しない。「自分で自分を守れない。だから、米国に守ってもらっている」。知識層はこう反論するが、実はこの思考方法は独立国家としては論理破綻に陥っている。仮に米国が、日本を真剣に守るなら、それは日本が米国の一部、つまり米国に支配されているということの証明だ。つまり、日本は独立国家ではなく、米国の実質的な植民地であるということだ。それを今回、日本は内外に示した。「日本は米国の植民地である」と世界にそう宣言することで、実をとったのだ。「我々はアメリカのメーカーだ」とトランプ大統領に媚びを売り、制裁措置を免れたトヨタ自動車とそっくりの構図だ。
しかし、実際は米国は日本に実などとらせてくれない。米国のインフラ整備のために日本の老人の年金を使い、米国のエネルギー問題の尻ぬぐいをさせるために、東芝をつぶす。それでもまだ日本は、へつらうのか。グローバル化というなら世界の大国と堂々と渡り合ったらどうなのか。「現実主義」を言い訳に強きに屈し続ける日本。「サムライ・ジャパン」など失笑ものだ。
これでは野球1つ勝てはしない。(了)

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侍ジャパン WBC準決勝でアメリカに敗退

ローマは休日で滅んだ

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働き方改革が社会的な流れになりつつある。「1日の労働時間を8時間」と定める現行の労働基準法の順守を促すもので、大企業を中心に「休むことはいいことだ」といわんばかりに半ば強制的に社員を早く帰す会社が急増している。余暇を楽しみ、明日への英気をきちんと養う。もちろんいいことだ。しかし、思い出して欲しい。ローマは休日で滅んだ。休日は毒にも薬にも、そして劇薬にもなる。

 

長時間労働こそ美徳?
 財務省が大蔵省と呼ばれていたころ、深夜になると中庭にバスが停車するのが慣例になっていた。午前1時便、2時便、3時便……。終電を逃した役人たちを宿舎にまで運ぶバスで、バスの中で出発を待つ役人たちは座席に座ったまま眠り込んでいた。疲れ切りぐったりと首をうなだれながらも、国を動かす醍醐味と、仕事をやり切った達成感に満たされているようでもあった。
 ただ、役人の世界は陰険であり残酷でもある。中央官庁の採用には上級職とそれ以外に大きくわかれる。いわゆる「キャリア」と「ノンキャリ(キャリアにあらず)」という言葉に集約されるように1年ごとに出世していくキャリアに対して、ノンキャリはどんなに優秀でも課長より上にはなれない。ノンキャリは責任を持たされていないためにテレビ局や新聞社の取材に答えることすら許されない。コピーをとるだけ。しかも扱えるのは「極秘」ではない公開文書だ。
 ノンキャリをうまく働かし、その成果で出世が決まるキャリアは時としてすさまじい手をつかう。「背広かけ」。夕方6時にもなるとキャリアは宴席に出かけるが、その際、さりげなく背広を椅子にかけておく。そして何もいわずに消える。下にいるノンキャリたちは上司が帰宅したのか、中座しているだけなのか判断がつかない。ただ、背広がある以上は「また、帰ってくる」という意思表示だ。ノンキャリたちは家に帰れず、椅子にかかった背広を恨めしそうに眺めながら仕事を続けることになる。
 中央官庁の課長や課長補佐クラスになると省令1つで業界を動かす。例えば金融庁の課長であればまだ30歳代でも床の間を背負い、監督する銀行の頭取クラスと銀座の高級料亭で連日宴席というケースも少なくない。もちろん悪いわけではない。貴重な情報交換の場なのだから、まるっきり「悪」とも決めつけられない。意見を戦わせた末、優秀な頭脳を駆使し日本を健全な方向に導く省令や法律を作りあげてくれればそれで結構だ。宴席は法令に違反しない範囲でどんどんやってもらえればいい。
 災難なのはキャリアが宴席でくつろいでいる間、仕事をし続けるノンキャリたちだ。キャリアは宴席が終わるとまた銀行が用意した運転手付のハイヤーで送ってもらい役所に帰ってくることもしばしば。帰るに帰れないノンキャリを一瞥し、椅子にかけた背広を着て今度は役所からタクシーで本当に家に帰る。これで、ようやくノンキャリも帰れる。
 こんな悲惨なノンキャリの仕事はなくした方がいい。帰らないために見つけてやる仕事など、仕事とはいえない。キャリアがどこで何をしてようが、ノンキャリはノンキャリ。さっさと帰って英気を養ったほうがいい。働き方改革はどんどん進めるべきだ。

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●問われる労働の実質性
 ただ、すべてがそうかといえばそうも言えない。時間に拘束されてはならない仕事もある。寝食を忘れて没頭する仕事ぶりがあってこそ生まれる技術革新もあり、日の目を見る新商品開発もある。そこをお座なりにしての働き方改革なら、進めるのは危険だ。労働はその実質性こそ重要なのだ。時間ではない。
 「日本人は働き者で休まない。少し日本人も休んだほうがいい」。そう考えている方に衝撃的な事実をご紹介しよう。実は日本人の生産性は世界的に見て極めて低い。
 先進34カ国で構成されるOECD経済協力開発機構)加盟国の2012年の労働生産性を見ると日本の労働生産性は7万1619㌦で、OECD加盟国34カ国中で21位。GDP(国内総生産)では米国、中国について3位なのに、1人当たりの生産性となるとがくんと落ちてしまう。さらに就業1時間あたりで見た日本の労働生産性は40・1㌦(4250円)とOECD加盟34カ国中で第20位だ。
 「生産性が低いなら長時間労働で補うしかない」というつもりはない。ただ、労働時間を短縮するなら、この生産性の問題にメスをきちんと入れなければならない。そこを放置しながら、休みだけ増やしてしまえば経済大国ニッポンは1夜にして滅ぶ。「日本人は勤勉で優秀」はデータの上ではすでに幻想だ。その幻想を信じ、慢心しているといずれ日本人は手痛いしっぺ返しを食らう。いったん低下した競争力を取り戻すことは並大抵ではない。国の力を「働き方改革」のブームにのって弱めてしまってはならない。ここは思案のしどころなのである。
(了)

 

 

ゴルフプレー代 51兆円なり

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日本の安倍晋三首相がトランプ米大統領フロリダ州パームビーチで約5時間、ゴルフに興じた。ホワイトハウスで会談後、大統領の専用機でトランプ氏の別荘に移動、常の1・5倍の27ホールを回る盛り上がりぶりに政府関係者や経済界は「日米の絆が一段と深まった」と手放しの喜びようだが、このゴルフのプレーフィーが4500億㌦(約51兆円)だったとしたらどうだろう。しかも、それが年金など日本の国民のお金を横流ししたのだとしたら……。

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●トランプ「日本国民の感謝」
「首相と日本国民に、米軍を受け入れてくれていることに感謝を伝えたい」。日米首脳会談の共同記者会見でトランプ氏はこう述べた。しかも笑顔を交えながら。いったいこの豹変ぶりはどういうことだろう。選挙中は「米国はただで日本を守っている」「お金を払わないなら米軍は撤退すべきだ」とあれほど息巻いていたではないか。一転「米軍を受け入れてくれて感謝」とはあまりの変わりようだ。しかも、日米共同宣言では「沖縄県尖閣諸島日米安全保障条約の第5条が適用される」とも言及、日本のアキレス腱だった領土・領海問題に十分すぎる配慮を示した。政府高官が「安倍首相は100点以上のでき」と胸をなで下ろしたくなる気持ちは分からないでもない。
 しかし、なぜ、トランプ氏はここまで豹変したのか。「米軍の駐留経費を8割近く負担している日本の実態を安倍首相がきちんと説明でき、それを理解してくれたから」なのだろうか。「繰り返される暴言で孤立するトランプ氏が、日本という味方の心強さに気がついたから」か。いかに世界を知らない日本人でもさすがにこの説明には首をかしげるだろう。そしてこう思うだろう。「もし、そんなこと位で変わるトランプなら、とっくの昔に変わっていたはずだ」。

 

●「米国に51兆円」を約束
 今回の記者会見で注意しなければならないのは、トランプ氏がメモを見ながらしゃべっていた点だ。欧米のトップの場合、メモを見ながらしゃべるケースはそれほど多くない。特にトランプ氏がメモに頼る割合は少ない。なのに今回の首脳会談でメモを多用したということは、それほど慎重にならざるを得ない状況にあったということだ。つまり決して逃してはならない魚をトランプ米国は手中におさめ、慎重に抱え込んだということなのだ。
 その魚こそ、日本のマネーだ。日本はトランプ政権の発足で震え上がり、暴言に翻弄され、「先んずれば敵を制す」と言わんばかりに、いの一番でありったけのお金を差し出してしまったのだ。トランプ米国はちゃっかり握りしめ、ご満悦だった。「首相と日本人に感謝」となるのも当然だといえる。
 では、その日本のマネーの正体とは……。タネをあかそう。それは「日米成長雇用イニシアチブ」なる経済協力のことだ。経済協力とは言葉だけのこと。要は霞が関の官僚が日米首脳会談を前に用意したトランプ氏への手土産で、トランプ氏はいたくこれが気に入った。
なにせ総額4500億㌦(約51兆円)である。10年間かけて高速鉄道や新規発電所に17兆円、ロボットと人工知能(AI)に6兆円、サイバー・宇宙開発などに6兆円など5分野に総額51兆円を投じるというのだ。しかもそのお金の出所は日本。わざわざ「日本のファイナンス(資金)力を最大限活用」すると明言している。「日米連携」「共同」と言葉は踊るが、結局は日本が用意する巨額のマネーを米国に流し込むだけのことだ。その成果は70万人の雇用創出につながるという。

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●お金の出所は国民の年金
 ここまできくと「おいおい」。というのが日本国民の本音だろう。いったいそんなお金がどこあるというのだ。国の借金は1000兆円超。財政破綻の危機に直面しているギリシャとならぶ借金大国、日本である。51兆円ものお金をどこから調達するのか。耳を疑いたくなるというのが本音だろう。
 しかし、お金は日本がつくるのだという。出所は………。驚くことなかれ、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、つまりお年寄りの年金なのである。政府系金融機関の融資や外国為替資金特別会計など日本国民のために使途がきまっているお金と合わせて米国に投じ、米国の雇用を底上げするというのだ。
 お金には2種類ある。使っていいお金と決して手をつけてはいけないお金。日本は今、後者、つまり決して手をつけてはいけないお金を取り崩そうとしている。しかも、日本のために、ではない。まるで米国のために。トランプという「ジャイアン」にいじめられないため、親の金にも手をつける「のび太」のようではないか。あまりにも悲しすぎる。意気地がなさ過ぎるではないか。大丈夫か、日本。大和魂はどこへ行った。(了)
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陰にいるのはコイツらだ(下)

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●カジノの裏に孫正義がいた

「シンゾウ」――。トランプ米大統領は安倍晋三首相のことをこうは呼ばない。先進国のトップの中で日本がいち早く米国詣(もう)でを果たし、日米の友好関係の大切さをいくら説いてもだ。しかし、ソフトバンクグループの孫正義社長のことはこう呼ぶ。「マサ」と。
 
●孫氏の米国で5兆円
ソフトバンクの株価が急騰している。27日には2014年1月10日以来、約3年ぶりに9000円台に乗せた。理由はトランプ大統領。トランプ政権の保護主義的政策は、トヨタ自動車など日本を代表する企業への激しい「逆風」となっているのに、ことソフトバンクにいたっては違う向きの風になっている。「追い風」だ。
 安倍首相がトランプ大統領との会談で「一番くじ」を引かせてもらう代わりに「IR整備推進法(カジノ法)」を手土産に携えた話は前回、指摘した通り。しかし、孫氏の手土産の場合、ちょっと安倍氏とはスケールが違う。昨年12月6日にトランプ氏と会談した際、孫氏が約束したのは「米国で500億ドル(5兆円強)の投資と5万人の雇用」。トランプ大統領も「マサ(正義)は素晴らしい男だ。感謝している」と手放しの褒(ほ)めようだ。
 もちろん孫氏ほどのビジネスマンがトランプ氏から賞賛を得るためだけに、これだけの投資と雇用を約束するはずはない。当然、その何倍もの見返りがあると判断したからこその5兆円投資であり、5万人雇用であることは間違いない。

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ソフトバンク代表の孫正義氏(左)とSprint代表のDaniel R. Hesse氏(右)

●狙いはスプリント救済
ではその見返りとは何か。端緒を捉えるため時計の針を2013年に戻してみよう。実はこの年、ソフトバンクが米携帯電話会社大手の「スプリント」と「TモバイルUS」を買収している。米国の通信大手2社をほぼ同時に傘下に収めるというソフトバンクの買収劇は当時、大型買収が相次ぐ米通信業界のなかでも大きな注目を浴びた。ソフトバンクの進行が米通信業界でも始まる、と世界は固唾を飲んだ。しかし、そうはいかなかった。
ソフトバンクが買収したスプリントは大手とはいえ業界で3位。もう1つのTモバイルUSは4位だ。そのうえにはベライゾン・コミュニケーションズとAT&Tという世界企業が君臨する。この上位2強に頭を押さえられ、ソフトバンクの2社の経営は次第に追い詰められてしまった。
 そこで孫氏が打ち出した巻き返し策が3位のスプリントと4位のTモバイルUSを合併させるというウルトラC。2社の力をひとまとめにして経営資源を集中し、ベライゾンとAT&Tを追い落とす作戦にでたのだ。
 
●米連邦通信委員委員長に再編派
ところが、この作戦も封じられる。オバマ政権下で米国の通信・放送行政をつかさどる米連邦通信委員会(FCC)の委員長であるトム・ウィラー氏(民主党)が待ったをかけたのだ。「大手4社による市場競争が大切」としてスプリントとTモバイルUSの合併を認めなかった。この裁定により孫氏の逆転劇はもろくも阻止されてしまった。
 しかし、舞台は回った。オバマ氏は去り、トランプ氏という異端が米国のトップについた。孫氏はこのチャンスを逃さなかった。すかさずトランプ氏に食い込み貢ぎ物を贈ったのだ。それが5兆円の投資と5万人の雇用というわけだ。そしてその結果が1月23日のFCCの人事だった。トランプ氏はFCCのトップにアジット・パイ氏を選んだ。
 この人事こそトランプ氏から孫氏への「返礼」の意味を持つ。何しろ、アジット・パイ氏は筋金入りの市場競争主義者なのだ。共和党側の代表として5年間、FCC委員を務めたが、ここでも自由競争が必要だとの論陣を張り、トム・ウィラー氏と対立した。そのアジット・パイ氏がFCC委員長に就任したのだから、トム・ウィラー氏とは反対の裁定を下す可能性は高い。
 そうなればトム・ウィラー氏のFCC委員長時代に却下されたスプリントとTモバイルUSの合併話はおそらく前に動き出す。少なくともマーケット(市場)はそう判断した。だからこそ、ソフトバンクの株価が異常に高騰しているのだ。

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●孫氏という男
 それにしても孫氏というビジネスマンは何としたたかな男なのだろう。身銭を切る5兆円投資でまずトランプ氏から通信ビジネスでの実利をとったうえで、トランプ氏を安倍首相を引き合わせる。安倍氏にはトランプ氏が最も欲しいものの1つであるカジノ法を手土産にもってこさせる。返す刀で安倍首相には「トランプ氏との会談をセットする」という恩を着せる。さすがとしかいいようがない。
 ただ、気をつけて欲しい。孫氏の米国での通信事業拡大のために、日本はカジノ誘致という代償を支払った。やがて日本はカジノから腐り始める。しかも、いくらソフトバンクのビジネスが米国で順調に進んでも、その見返りである税金は日本には落ちない。
 日本国は売られた。1ビジネスマンの「利」のために国が売られた。この事実は重い。そしてその片棒をかつぐ政治家の責任は重く、さらにそれを見逃す庶民の罪もまた限りなく重い。(了)